第234話 白面先生の初出勤
翌日、俺は教師としてミュンヘル魔法学園へとやって来る。
「けど仮面つけたまま教師なんてしていいのかなぁ?」
昨日と同じく俺は仮面をつけたまま学校へ来ていた。
「学園長にそういう理由で雇わせたんだしいいに決まってるじゃん」
そう言うアカネちゃん眼鏡にスーツ姿だ。
副担任ということで、ビジネス風の格好で来たらしい。
……しかし。
ビジネススーツ姿のアカネちゃんもかわいいなぁ。硬そうなスーツでも押さえ切れないバインと大きいおっぱいも素晴らしい。ちっちゃい背丈にスーツというのも、なかなか味があって……。
「こういう恰好好きなの?」
「ふえっ!? い、いやその……」
「帰ったらこの格好でしちゃう?」
と、アカネちゃんが俺の身体に抱きついてくる。
「ちょ、ちょっとアカネちゃんっ。もう学校だからっ」
「そんなの関係無いし。結局わたしたちしてないじゃん。いつするの? わたしもう限界なんだけど?」
「そ、それは……」
いろいろあって先送りになっていた。
まだ状況は落ち着かないが、しかし愛し合う者同士やはりそろそろ致すべきでは……。
「白面先生……」
「えっ? あ……」
呼ばれて振り向くと、そこには学園長が立っていた。
「お2人の関係に口は出しませんけど、生徒の目もありますので……」
「す、すいません」
気付けば周囲には生徒たちがおり、俺たちに好奇の視線を向けていた。
「ははは……行こうかアカネちゃん」
「うん」
俺は気まずい心地になったが、アカネちゃんのほうはぜんぜん気にしていない様子だった。
それから俺たちは職員室へ行き、やがてホームルームの時間となる。教室の前まで歩いて行き、俺はそこで足を止めた。
「き、緊張するなぁ」
当然だが教師なんてやったことがない。魔法を教えてくれればいいと言われたが、はて授業なんてどうやったらいいのかさっぱりわからなかった。
「大丈夫。細かいところはわたしが代わりにやってあげるから、白面さんは魔法を教えることだけやってくれればいいから」
「そ、そう?」
アカネちゃんは頼もしい。
しかし魔法を教えるっていうのも……。
「ほら入るよ」
「あっ」
腕を引かれて教室へと入る。と、
「あっ」
「昨日の仮面……」
生徒たちの視線が一斉に向けられる。
俺は緊張しつつも教壇へと立ち、生徒たちを見回す。
「えーと……」
なに言えばいいんだろう? 自己紹介? とは言えライブ配信中なので本名を言うわけにもいかないし……。
「こんにちわー☆あたしは副担任のアカツキでーす☆んでこっちが担任の白面先生です☆はい拍手―☆」
アカネちゃんの呼びかけに生徒たちがパラパラと拍手をする。
「みんな学園長から聞いてると思うけど、新1年生の担任はこの白面さんになるからね☆ライブ配信もしていくからよろしくー☆」
……なんか軽いノリでアカネちゃんはあいさつをする。
俺もなんか言わなきゃなーと思いつつ考えていると、
「アカツキさんかわいいな……」
男子生徒の誰かがそんなことを呟く。
「ちょっ!? ああいう女を褒めたりするのは違法でしょっ! て言うか、副担任だかなんだか知らないけど、あんたみたいな女は姿を隠さないと……」
「世間ではどうだか知らないが、少なくともこの学校では巨乳美女の迫害を許さん」
「は?」
俺の言葉に生徒たちがざわつく。
「い、いやいやいやっ! 大魔王イレイア様が決めたことですよっ! 逆らうなんて世界に喧嘩を売る行為なんですけどっ!」
「巨乳美女はもっとも偉い存在だ。大魔王だかなんだか知らないが、巨乳美女が偉いという事実は変えられない。迫害など許さん」
「そんな勝手な考え……魔王軍が許しておきませんよっ!」
「ならば俺が魔王軍をぶっ潰してやる」
低い声でそう言ってやると、生徒たちはゾッとしたような表情となる。
イレイア率いる魔王軍は潰す。
巨乳美女の迫害を始めたあの女を許しておくわけにはいかない。
「おー白面先生、大きくでたねー☆それじゃホームルームはこんなところにして、このまま授業を始めちゃおっかー☆」
「えっ? あー……けどなにすればいいかな?」
授業の段取りとかは全部アカネちゃんが考えくれるというので、俺はなにも準備せずに来てしまったが……。
「1時間目は魔法実技だから昨日の闘技場へ移動だね☆ほらじゃあみんな移動してー☆早く早くー☆」
アカネちゃんに声をかけられ、しぶしぶな様子で生徒たちは教室を出て行く。
「なんであんな女の言うことを聞かないといけないの?」
「けどあの仮面は怖いし」
ぶつぶつ言いながら生徒たちは教室から出ていなくなった。
迫害は許さんと言ったが、イレイアの作った決まりごとのせいで生徒たちはアカネちゃんに悪い感情を持ってしまっているようだ。
これはまず生徒たちのアカネちゃんに対する良くする必要がある。
巨乳美女は偉い。アカネちゃんは偉い。
巨乳美女を称えよ。崇め奉れ。
魔法よりもまずはそれを生徒たちに教える使命が俺にはあった。巨乳美女をこよなく愛する男として。




