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第232話 魔王、先生になる

「続けるか?」


 これ以上、続けるのは無意味。

 それはこの戦いを見たすべての者が思っていることだろう。


「校長負けてんじゃん」

「S級ってあんなものなの?」

「いや、あの仮面がすごいんだよ。何者だよあれ?」


 周囲で観戦している生徒たちがざわつく。

 もはやこの場での勝者は明らかであった。


「わ、私は……」

「あんたの負けだ。約束通り彼女に土下座で謝罪しろ」

「う、うう……」


 俺の言葉におばさん校長は唸りながら退く。そして、


「うわあああっ!!!」


 背を見せて逃げ出す。


「あっ! 待てっ!」

「いいよ放って置けば」


 魔法で校長を捕まえようとする俺をアカネちゃんが止める。


「なかなかおもしろい動画になったしこれで十分。帰ろうか」

「えっ? あ、うん」



 まんだ:おいおい勝っちゃったよ


 ぬまっきー:何者だこの仮面?


 ナイトマン:校長逃げててダサw



 コメント欄も盛り上がり、動画の再生数もかなり伸びた

 土下座で謝罪はさせられなかったが、アカネちゃんは満足そうだしまあいいかと、校長を捕まえるのはやめた。


 ポカンとする生徒たちをその場に残して俺たちは闘技場から出て行く。

 そして校門までやって来ると、


「ま、待ってくれっ!」


 背後から呼び止める声が聞こえる。

 振り返ると、少なくとも生徒ではないだろうおっさんが息を切らせながら俺たちを追って来ていた。


「なにか?」


 校長を倒した件か、それとも巨乳美女であるアカネちゃんを連れている件で警察でも呼ぶ気だろうか? まあそうだとしても返り討ちにするだけだが。


「あの、私はこの学園の学園長なのですが」

「学園長?」


 なんとなく校長がここの責任者と思っていたが、どうやらこっちのほうがここで一番偉い人らしかった。


「なんだ? 今度はあんたが俺と戦うのか?」

「いえいえ滅相もございません! 私は単なるここの責任者で、魔法のほうは校長ほど使うことはできないものでして……」

「気に入らないから警察でも呼んで逮捕させようと?」

「とんでもないっ! そんなことをするつもりはありませんっ! 先ほどの戦いを生徒たちと一緒に見させていただきまして、あなたにお願いしたいことが……」

「お願い……?」

「あなたに私の学園で教鞭を取っていただきたいのですっ!」

「教鞭って……俺を教師に?」

「はいっ。S級魔法使いを圧倒したあなたの強さには感服いたしましたっ。ぜひ生徒たちにあなたの優れた魔法を教えていただきたいのですっ」

「教えていただきたいって……」


 俺は教師になんて興味は無い。


 当然、断ろうとするが、


「へーなんかおもしろそうじゃない」

「アカツキちゃん?」


 断りの言葉を口に出そうとした俺の隣で、アカネちゃんは楽しそうな表情をしていた。


「仮面の破天荒教師が問題児だらけのクラスを厳しく指導とかおもしろそう。動画にしたら絶対にバズるじゃん」

「いや俺は破天荒じゃ……」

「いや問題児だらけのクラスなんて無いんですが……」

「ただし条件があるからね」


 俺はまだやるとは言っていないのだが……。


 まあアカネちゃんに頼まれたら結局はやることになるから、いいんだけど。


「条件?」

「そう。まずはわたしを白面さんの受け持つクラスの副担任にすること」

「ふ、副担任? 生徒ではなくですか?」

「副担任のほうが動画配信もしやすいじゃない? あ、もちろん動画の配信はおっけーだよね? これは絶対条件だから」

「は、はあ……」

「あと俺からも条件がある」


 どうせやるのだ。俺からも条件をつけておこう。


「彼女のような素晴らしい外見の女性への差別をこの学園では禁止にしてもらいたい。そうでなければこの話はお断りだ」

「そ、それは……その、イレイア様が決めた世界の法でもありますし……」

「ならお断りだ」


 俺はアカネちゃんの肩を抱いて校門から出て行こうとする。


「ま、待ってください。わかりました。しかし学園内でだけならよいのですが、外部に知れれば取り締まりに国の者が訪れると思います。そうなった場合は……」

「俺が追い返す。それでいいか?」

「そうしていただけるなら……」

「話は決まったな。……けど俺、教員免許なんか持ってないけど?」


 根本的な問題に俺は気付く。


「魔法を教える教師は十分な魔法の腕があれば、どなたでもなれますのでご安心ください」

「あ、そう」

「では明日からお願いしますね。先生」

「はい」


 よかったのか悪かったのかわからないが、この世界での就職が決まった。

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