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第229話 魔法学校へ抗議に行く

「魔法学校と揉めてるって、どんな理由で?」

「うん。わたしがここへ来たときにはもう揉めてたんだけどね。なんかわたし、ミュンヘルっていう1流の魔法学校に通うってことになってたみたいなんだけど、見た目で入学を断られたんだって」

「見た目って……」

「わたしがかわいくて巨乳だからって」


 またか。


 この世界では当たり前のように巨乳美女が差別されている。こんな状態を許しておいていいのか? いいわけがない。巨乳美女の味方として。


「巨乳美女が差別されるなんて許せないな。そのミュンヘル魔法学校ってとこへ行って抗議してあげようか?」

「わたしは魔法なんか興味無いしどうでもいいよ。けど魔王が魔法学校へ抗議しに行くって、動画にしたらおもしろいかもね」

「ど、動画にしたらって……」

「世界が変わってもアカツキと白面は不滅でしょ? それになんかこっちでもアカツキとしてVTuber活動はしてたみたいだから準備はすぐできるし」

「そうなんだ」


 アカネちゃんはどこへ行ってもアカネちゃんということか。


「3日だけ待ってね。3日でカメラ付きの仮面とか作っちゃうから」

「君は逞しいなぁ」


 世界が変わっても困惑することなく配信活動を続けようとは。

 たいした女の子である。


「アカツキと白面with千年ですね」

「なんでお前もやる気なんだよ?」

「大抵のことは魔王様がやってしまって暇なので」

「お前は魔王の力を集合させる装置の試作品を探して来い」

「なるほど。その役目がありましたね。では」


 と、千年魔導士は転移ゲートを開いて消えた。


 装置の捜索はとりあえずあいつに任せるとして、俺は白面として魔法学校へアカネちゃんの件で文句を言いに行くか。

 それが終わったら、やっぱり無未ちゃんと雪華を……。


 記憶を戻すかどうかはともかく、2人がこの世界でどうしているかは知っておく必要があると思った。



 ……



 それから3日経ち、俺はアカネちゃんと一緒にミュンヘル魔法学校へ向かう。

 俺は白面を被っているが、アカネちゃんはカメラ付きの眼鏡をかけているだけだ。サングラスにマスクといういつものアカツキスタイルではない。


「今日はサングラスとマスクじゃなくていいの?」

「この世界ってかわいくて胸が大きいと迫害されるんでしょ? 隠したら迫害を恐れて屈してるみたいでムカつくじゃん。だから隠さないの」

「なるほど」


 アカネちゃんらしい行動である。


「と言うか、魔法って学校で習うんだね」

「そうみたいね」

「コタローは違うの?」

「魔法は魔王の力を借りて使うものだからね。魔王の力そのものを持ってる俺は借りる方法を学ぶ必要がないんだ」

「そうなんだ。魔王の力ってどうやって借りるの?」

「魔王への敬意を心へ宿して、必要な呪文を唱えるらしいよ」

「ふーん。わたしにも使えるのかな?」

「使えるけど、アカネちゃんは魔王眷属があるから魔法で戦う必要はないんじゃないかな?」


 相手の攻撃を無力化して、相手自身も無力化してしまうアカネちゃんの能力があれば戦いなど起こる前に終わる。


「そうだね。魔王への敬意どころかわたしたち愛し合ってるし」

「おおう……っ」


 抱きついてきたアカネちゃんの立派な双乳が俺の腕を挟む。


 この感触は何度、味わっても良い。身体が蕩けるほどの心地良さだ。


 アカネちゃんは素晴らしい女性で、やはり巨乳美女は偉大な存在だと再認識しつつ、俺は魔法学校へ向かった。


「……ここか」


 アカネちゃんの家から歩いて10分ほど。ミュンヘル魔法学校とやらへやって来る。


 普通の学校だ。特に魔法学校らしいというところもない。


「なんか動画映えしない普通の学校だねー。深い森の中にあるとか、湖の孤島に浮かんでるとかがよかったんだけどなー」

「ま、まあしかたないよ」


 異世界の魔法学校はそんな感じだったが、他の世界を吸収したことでこの形に変わってしまったようだ。


「じゃあ行こうか」

「うん。それじゃライブ配信開始ーっ。こんにちわー☆アカツキでーす☆」



 ぬまっきー:はじまた


 めたどん:魔法学校に喧嘩売ってみるってどんな配信だよw


 ナイトマン:迷惑系になったのかな?



 ……ファンの人らも変わっていないようであった。


 腕に抱きつくアカネちゃんとともに学校の門を通って中へ入る。


「校長室はどこかな?」


 勝手に入って探すわけにもいかず、まずは学校の受付へ向かう。


「すいません、校長に会いたいのですが」

「はい。どのようなご用件で……きゃあああっ!」

「えっ?」


 受付の女性が急に叫び出す。


 一瞬、仮面をつけているせいかと思ったが……。


「そんな女をここへ連れて来ないでください汚らわしいっ!」

「はあ?」

「そういう女は姿を隠して外出しなければいけないって知らないんですかっ? それとも偉大な大魔王であらせられるイレイア様への反逆行為ですかっ? ああどっちでも汚らわしいっ! 死ね死ね死ね死ね死ねっ!!!」

「うるさい」


 俺は指を鳴らす。と、受付の女は転移ゲートに飲まれて消えた。


「校長室は勝手に探そうか」

「そうだね☆」


 まあなんとなくわかるだろう。


 授業中なのか廊下に人気は無い。

 やがて校長室を見つけ、ノックして中へ入る。


「うん? な、なんですかあなたたちは? そんな女を連れて……」

「そういう話は聞きたくない」


 校長室のイスにふんぞり返ったおばさん校長を睨みつけて言う。


「彼女はここへの入学を断られた。そのことで抗議へ来たんだ」

「なんですって? はっ、ミュンヘル魔法学校は名門ですよ。そんな女が入学できるわけないでしょう。汚らわしい」

「名門?」

「そうです。ここはイレイア様にも目をかけていただいている超名門なのです。胸がでかくて顔の良い女を入学させるなんて反逆行為に等しい。わかったらとっとと帰りなさい。そんな女がいるだけでこの学校が汚れる」

「ほう」


 今すぐこの世から消し去ってやろうかこいつ。

 しかしそれではなにも解決しない。


「いいだろう。どうせこんな学校へ通ったところでたいした魔法使いにはなれない。校長からして雑魚じゃな」

「私が雑魚? あははっ! そんな女を隠さずに連れているような馬鹿はやっぱり物を知りませんねぇ。あたしは世界でも30人しかいないS級魔法使いのひとりです。あなたなんか一瞬で消し去れますよ」

「だったら俺と勝負するか?」

「勝負?」

「俺も魔法には自信があってね。あんたに勝ったら彼女へ土下座して謝罪しろ」

「ぷっ……ふはははははっ! あなたは度を越した身の程知らずの馬鹿みたいですね

ちなみにあなたは何級の魔法使いですか?」

「級など無い」

「級無し? 級無しの無能魔法使いがS級の私に戦いを挑んでいるのですか? ぶはははははっ! まあ別に構いませんけど、あなたが負けたらどうしてくれるのですかな?」

「あんたの奴隷にでもなってやるよ」

「おもしろい。その言葉、忘れないでくださいね」

「ああ」


 表情を歪めて笑う校長を前に、俺はふんと鼻を鳴らした。

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