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第217話 ラスボスのほうから来る

 空中に浮かぶ教会の入り口に到達する。


 この奥にメルモダーガがいるはず。奴には聞きたいこともあるが、その前に世界中で暴れている魔人を止めさせなければならない。


「世界が混乱してると物価も上がるしな。それは困る」


 物価が上がっても給料は据え置き。薄給サラリーマンの悲しい現実だ。


「よし」


 ライブ配信も始まったし行くかと教会の扉を開いて中に入る。


「おおっと」


 中では多くの魔人が俺を待ち構えるように立っていた。



 マンダ:うおー魔人がいっぱい。白面ピンチ!


 めたどん:ピンチ(魔人が)


 ぬまっきー:たまにはハラハラドキドキさせてくれよなー



 世界中が魔人の侵略を受けているというのにコメント欄はいつも通りだ。

 どこに住んでいるのかは知らないが呑気で平和な人たちである。


「来やがったぜ。カッカッカッ」

「馬鹿な奴め。ここには魔人が100はいるぜ。3本角を何人か倒したからと言って、これだけの数に勝てるはずは……ぎゃあっ!?」

「邪魔だ。通してもらうぞ」


 なにやらしゃべっていた魔人を消し炭にして俺は奥へ向かって歩く。


「ま、待てこのっ! うぎゃあっ!?」


 攻撃してきた魔人も燃やして焼失させる。


「お前らの相手なんかするつもりは無い。死にたくなければそこから動かずにおとなしくしていることだな」

「う、ぐ……」


 俺が睨むと、魔人どもは固まったように動きを止める。


 メルモダーガに忠誠を誓っているわけではない単なる悪党どもだ。決死の覚悟で挑んできたりはしないだろう。


「ぐあ……」

「あぐ……」

「うん?」


 周囲の魔人たちがバタバタと倒れて消滅していく。


「なんだ?」


 なにかが起こっている。


 やがてすべての魔人が消滅すると、通路の奥から何者かが歩いて来た。


「いよぉーひさしぶりだなクソ野郎」


 3本角の魔人。人間の姿から変化はしているが、面影は十分にあった。


「お前は……」


 小田原。なんでこいつがここに……?


「あっ!」


 そこで俺は思い出す。


「そういやいたなお前」

「な、なんだと?」


 デュカスに関わり始めたのはそもそもはこいつが発端だ。こいつとデュカスの関連を調べるためにイギリスまで行ったのだったと今さら思い出す。


「完全に忘れたわー。お前魔人になってたんだなー。へー」

「相変わらずムカつく野郎だなてめえはっ!」


 不機嫌な表情で俺を睨む小田原を前に俺は頭を掻く。


 こいつのことなんか完全に忘れていた。

 しかし魔人になっているとは。まあこいつの邪悪な性格を考えれば当然か。



 タイガー:こいつってレイカーズとか寺平の事件のときにいたザコ?


 おやつ:魔人になっとったんかいわれー!


 そらー:白面さんと戦うのは3回目か。もう準レギュラーやね



 登場は3回目なのでチャンネルの古参ファンにはお馴染みとなっている。俺としてはあまり見たい顔ではないのだが。


「カッカッ……まあいいぜ。今日でお前ともお別れだからな」

「悔い改めて自殺でもするのか?」

「つまらねー冗談だ。死ぬのはお前だぜ。俺の最強スキルでな」

「最強スキル?」


 まあ魔人ならばなにかしらスキルはあるのだろう。


「あっさり殺しまっちゃーつまらねーからな。お前には自分が確実に死ぬっていう恐怖をしばらく味わってもらうぜ」

「お前に俺が殺せるか?」

「殺せるぜ。俺のスキルは『デッドエンド』。相手を即死させるスキルだぜっ!」

「……」

「どうだ怖いか? 怖いだろ。てめえの死はもう確定したんだ。俺が殺そうと思えば、今すぐにでも死ぬんだぜ。ギャカカカカカっ!」

「ふーん。なら、やってみろよ」

「なんだと?」


 俺の言葉に小田原はきょとんとマヌケ面を見せ、それからニヤリと笑う。


「ははーん。もしかして即死無効のアイテムでも持ってるのか? ダンジョンの深層には確率で即死攻撃をしてくる魔物もいるからなぁ。けど無駄だぜ。俺の即死スキルは即死無効を無効にして確実に確定で相手の命を奪うからな」

「……」

「そして2つ目のスキルが『デッドエンド・パーツ』だ。これは身体の一部だけを即死させるスキルだぜ。例えばてめえの右手や内臓だけを殺して苦しめることもできるってことだ。どうだ? 怖いだろ? カカカカカカッ!」

「だからやってみろって」

「……てめえもしかして俺が嘘を言ってると思ってんじゃねーか?」

「思ってないよ。だからやってみろ」

「そうかよ。だったらまずはその右手を殺してやるぜっ! そらっ!」


 そう言って小田原が俺の右手を指差す。

 ……しかしなにも起こらない。証拠に俺は右腕をぐるりと回して見せる。


「な、なにっ!? なんで効かねぇんだっ!」

「俺に即死の類は効かない」

「即死無効は無効にできるはず……っ」

「テレビゲームのラスボスに即死攻撃は効かないだろ? あんな感じ」

「意味わかんねぇっ!」


 俺もよくわからない。たぶん世界の理かなにかだろう。



 ランラン:本当に即死スキルが効いてないのか?


 ナイトマン:即死スキルがハッタリじゃね?


 イグナス:魔人に死ねって言われた人が急に倒れて死んだってことがどっかであったらしいから本当かもね。白面さんには効かないみたいだけど



「だったらこれはどうだっ! 『デッドエンド・メンタル』っ! これは精神を即死させるスキルで……」

「効かん」


 肉体にも心にも即死攻撃は効かない。魔王とはそういうものだ。


「ひっ……ば、バケモンかよてめえっ!」

「鏡を見ろ。お前のほうがバケモノだ」


 こんな奴に構ってはいられない。


 一撃で葬ってやろうと俺が魔法を放とうとした。……そのとき、


「む」


 背後から大量の瓦礫が俺へ向かって降り注いだ。

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