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第216話 戸塚、思い出の地へ(総理、ハンター視点)

 ―――名もなき総理視点―――


 ……デュカスの出した号令により、全世界で魔人による破壊活動が始まる。その破壊活動による甚大な被害に国々は追われ、日本政府も対応に苦慮していた。


「総理、魔人が全国で破壊活動をして各地で甚大な被害が出ております。被害を抑えるための判断をするべきではありませんか?」

「他国の動きを注視して、冷静に判断しております」


 野党議員の言う判断とはデュカスに恭順するということだ。デュカスに恭順を示せば破壊活動は止まる。国会ではデュカスに恭順を示すかどうかの議論が行われていた。


「すでに主要な先進国は恭順を示しております。国連もデュカスによる支配を支持しており、我が国も大国に倣って早急に判断すべきです」

「状況を見て粛々と判断を致します」

「今このときも被害が出ているのです! 今この瞬間に判断をしてくださいっ! 総理、今すぐデュカスに恭順を示すべきです! デュカスこそ世界の救世主! すべての国がデュカスに従えば永久の平和が訪れるのですよっ! 総理っ! 今すぐにご判断をっ!」

「う、ううん……」


 デュカスに恭順すれば魔人による破壊活動は収まる。しかし国家が一組織に恭順するのはどう考えても異常だ。先進国などほとんどの国々が恭順を示しているとはいえ、その異常な判断を今すぐにするのは困難であった。


「魔人に勝つことはできませんっ! 道はデュカスへの恭順しかないのですっ! 総理っ! ご決断をなさってくださいっ!」

「検討を……」

「検討をしている時間は1秒もありませんっ! 今すぐデュカスへの恭順をっ! メルモダーガ様への恭順をっ! 偉大な御方への恭順をっ!」

「そうだっ!」

「我が国もデュカスへ忠誠を誓うべきだっ!」


 議員には与野党問わずデュカスと昵懇な者も多い。

 判断を送らせてはきたが、もはや決断しなければならない状況か……。


「――君たちは成長しないねぇ」


 そこへ何者かの声が響く。

 声の主である白人の女は3人の警備員に掴まれながらも、平然とした顔で歩いて国会質疑の場へと歩いて来ていた。


「ここへ来るのは何年ぶりかな? あのときにずいぶん殺したからメンツもだいぶ変わったね」

「な、なんだお前はっ! おい警察を呼べっ!」

「ちょっとした忠告をしに来ただけさ。すぐに帰る」


 女はそのまま総理大臣の前に歩いて行く。


「あのときはまだ官房長官だったね。ひさしぶり」

「だ、誰だ一体!? 私はお前なんか知らないぞっ!」

「戸塚我琉真」


 女がその名を口にした瞬間、周囲がざわつく。


「と、戸塚我琉真?」

「そう。僕は戸塚我琉真だ。信じなくてもいい。ただ、これから言う忠告は信じたほうがいい。日本の未来を左右することだからね」

「日本の未来だと? 一体……」

「デュカスへの恭順についてだよ。デュカスは近いうちに壊滅する。恭順するべきじゃない」

「なんだって?」


 デュカスが近いうちに壊滅? この女はなんの根拠があってそんなことをこんなことを言っているのだろうか?」


「なにを言っているんだっ! デュカスの魔人は最強だっ! 魔人を束ねるデュカスが壊滅などありえないっ! いいかげんなことを言うなこの犯罪者めっ! おい早くこいつを摘まみ……がはっ!?」


 叫ぶ野党議員の額を銃弾が貫く。

 撃った女は、ニヤリと笑って拳銃を投げ捨てる。


「僕もやさしくなった。昔なら君たち全員を殺していたよ」

「お、お前は……っ」

「忠告はした。もしも誤った判断をするならば、惨劇はふたたび起こる。戸塚我琉真の手によってね」


 そう言い残して女は去って行った。




 ―――名もなきハンター視点―――




「な、なんて強さだ……」


 ダンジョンの外では大勢のハンターが倒れている。

 その中心には角一本の魔人がひとり立っており、ニヤついた表情で周囲を眺め回していた。


「カーッカッカッカっ! こんだけハンターが集まって俺に傷ひとつつけられないのかよ? 弱いねぇ。カッカッカー」

「こ、これが魔人……っ」


 倒れているハンターの中にはブラック級もいる。だというのにたったひとりの魔人にかすり傷もつけられずに全員が倒れた。

 あの魔人は角がひとつであり、魔人の中では弱い部類だ。しかしそれでもブラック級を圧倒する強さを持っている。


 強過ぎる……。


 こんなのが世界中に何万と存在し、デュカスに恭順していない国の街を襲っていると聞く。


「おお、仲間が来たようだぜぇ」

「あ、ああ……」


 多くの魔人がこちらへ歩いて来るのが見える。


 ……もう終わりだ。

 日本は……いや、世界中はデュカスに支配される。それはもう決定的と思われた。


「カッカッカッカっ……がはっ!?」

「えっ?」


 笑っていたが魔人の身体が不意に燃え上がる。

 不死身である魔人の身体が、その炎によって消し炭となった。


「意識があるのは君だけか?」

「あ……あなたはっ!?」


 白面。白い仮面の男が自分の前に立っていた。


「お、お前は白面っ!」


 集まって来た魔人たちがどよめく。


「ずいぶん集まって来たな。少し片づけていくか」


 あれだけ強い魔人が、白面の歩みとともにうしろへ下がる。


「た、たったひとりだっ! 一斉にかかってやっちまえっ!」

「おおっ!」


 数十の魔人が一斉に白面へと襲い掛かる。


 あれだけの数だ。いかに白面が強いとはいえ……。


「えっ……?」


 瞬きして目を開くと、そこにはもう魔人はいない。

 白面だけがそこに立っていた。


「この馬鹿騒ぎはすぐに終わる。それまで耐えてくれ」


 そう言って白面は目の前に穴を出現させ、その中に入って消えた。

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