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第213話 終わるデュカスの計画(メルモダーガ視点)

 ……それから2週間後、魔人の精鋭を集めたデュカスの月例会合が行われる。その場にはもちろんメルモダーガがおり、佐野も黒服の部下を3人ほど連れて出席をしていた。


 佐野の様子は明らかにおかしい。動揺しているのか、目をキョロキョロと泳がせている上、部下を連れて来るのも珍しかった。


(あの部下にやらせる気か)


 しかしすでにドルアンを始めとした魔人の3人は佐野の思惑を知っている。奴が妙な動きをするか、自分が命令をすればいつでも始末できる状況だ。


「さて……では月例の会合を始めようか。なにかあるかドルアン?」

「いえ、私からは特に」

「智君は?」

「ねーな」

「ミーシャは?」

「と、とくにありません」

「そうか。ミーシャ、君は目が悪かったのか?」


 いつも裸眼のミーシャが今日は眼鏡をかけていた。


「は、はい。普段はコンタクトですけど、踏んでしまって……」

「そうなのか」


 まあどうでもいいことだ。


 なにも無いという3人の声を聞いたメルモダーガは目を瞑る。


「世界の征服計画は順調に進んでいる。このまま行けばそう遠くないうちにデュカスは世界のすべてを掌握できるだろう」

「ま、魔人のボスとして世界に君臨なさるのはメルモダーガ様ですか?」

「もちろんだ。他に誰がいる?」

「そ、そうですよね? 変なこと聞いてすいません、はは……」


 妙な質問だ。

 そういえば会合に出るのはいつもルシーラだった。ミーシャが出るのは珍しい。


「世界を征服する前に始末する野郎がいるんだよな」


 智がそう言うと、佐野がビクリと身体を震わす。


「ああ。白面を始末する必要がある。奴を討伐する作戦は順調かドルアン?」

「はい。幸い、アカツキの始めたゲームとやらで白面の居場所が捕捉しやすくなりました。ゲーム終了後を我ら3人で奇襲すれば仕留められるかと」

「うむ」


 こちらにはミーシャがいる。ミーシャのスキル『グットラック・グラント』でドルアンと智に幸福が付与されれば失敗することは無いだろう。

 ……さて白面はドルアンらに任せておけば問題無い。残る小さな問題を片付ければ、しばらくは心を安寧にして過ごせるだろう。


「佐野さんは……なにかありますかな?」


 開いた目で佐野をねめつける。

 ふたたび身体を震わせた佐野がメルモダーガへと視線を返す。


「わ、私は……」

「はい?」

「その……ち、違うのですっ! これはアカツキと白面を魔人のボスとして引き立てるためにしたことで、あなたに逆らうつもりなど……」

「ふん。取ってつけたような言い訳は結構ですよ」

「魔人を……ミーシャを勝手に動かしたことは謝罪しますっ!」

「動かしたのはミーシャだけですかな?」

「えっ?」

「あなたが私に反旗を翻すために魔人を束ねていることはすでに知れています。残念ですよ。あなたは良い友人であったのに」

「そ、それは誤解ですっ! あなたに反旗を翻すつもりなど私には……」

「もう遅いですよ。智君」

「ああ」


 返事をした智が立ち上がる。


「くっ……。しかたないやれっ!」


 佐野の叫びと同時に周囲の黒服が懐から銃を抜く。しかし、


「残念、おせーんだ」

「が……はっ」


 銃弾が発射されることはなく、佐野と黒服らは前のめりに倒れた。


「ふん。馬鹿な男だ」


 このまま黙ってデュカスに従っていれば、日本の支配くらいは任せてやったものを、過ぎた野心など見せるからこうなるのだとメルモダーガは嘲笑う。


「さて、これで月例会合は終了だな」

「じゃ、じゃあ僕はこれで……」


 早々にイスから立ち上がったミーシャが部屋の出口から出て行こうとする。


「……待てミーシャ」


 それをなぜかドルアンが止めた。


「は、はい?」

「ここへ来るときはいつもルシーラだったろう? なぜ今日はミーシャ、お前が表に出てきているんだ?」

「ル、ルシーラは眠っていて……」

「眠っているだと?」


 ドルアンの目が鋭くミーシャを睨む。


「本当か?」

「は、はい……」

「起こせ。奴と話がある」

「そ、それは……」


 ばつの悪そうな表情でミーシャは後ずさって行く。


「貴様……なにを隠している? うん? その眼鏡……はっ!? まさかっ!」

「これはあの……えっ?」


 ミーシャのかけていた眼鏡が彼の顔から消え、ドルアンの手に渡る。


「……やはりか」

「なんだ? その眼鏡がどうしたと言うんだ?」


 ドルアンからミーシャのかけていた眼鏡を手渡される。


「小型のカメラが仕込まれております。恐らくマイクも奴の身体どこかに仕込まれているでしょう」

「カメラとマイク……だと? まさか……っ。おいっ!」


 隣に立っている少年からスマホを受け取り、アカツキのチャンネルを確認する。そしてそこに見えた動画内容にメルモダーガは目を剥いた。


「こ、これは……っ」


 アカツキのライブ配信動画にこの場所が映っている。それは録画されたものではなく、今この瞬間のものであった。



 ぬまっきー:魔人のボスがメルモダーガだったなんてマジかよ


 ランラン:メルモダーガめっちゃ焦ってるしw


 おやつ:これ誰が撮ってるん? アカツキちゃんでも白面でも無いよね


 そらー:会話の感じからしてミーシャって人かな? 裏切り?


 めたどん:毎陽の佐野がグルだったとかヤベー。デュカス持ち上げて白面叩いてたマスゴミどうすんのこれw


 ナイトマン:白面叩いてデュカスへの入信を勧めてた政治家もヤバいだろw次の選挙はまとめて落選だな。いやもう辞職しろ


 マンダ:世界中が大混乱やこれ


 タイガー:俺は最初からアカツキちゃんと白面さんを信じてたぜ


 イグナス:僕は追い詰められたデュカスがなにをするかが怖いねぇ。さてさてどうなることやら



「す、すべて配信されているのか? 今までのすべてが……っ」


 今までデュカスが隠してきた真実のすべてが世界へ明かされた。それは魔人を使って世界を裏から支配するという計画の破綻を意味していた。


「この映像は……お前かっ!」

「ひいっ!」


 メルモダーガが手に持っている眼鏡を握り潰すと、血相を変えたミーシャが扉から走り出て行く。


「追えっ! 奴を殺せっ!」

「メルモダーガ様、奴のスキルをお考え下さい。追うだけ無駄でしょう」

「白面と通じて私を謀った裏切者をこのまま見逃せというのかっ!」

「今はご辛抱を。奴の動向は常に探ります。いずれ油断をして魔人の姿を解いたところを必ず私が始末しますので。それよりも今は……」

「くっ……そうだな」


 こうなればもう取る手はひとつしかない。


「ドルアン、世界中にいる魔人へ通達を出せ。表からの支配へ計画を変更すると」

「かしこまりました」


 表からの支配。それは野蛮で品が無いもの。しかし裏からの支配が不可能になった以上、取る手段はこれしかなかった。

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