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第194話 愛あるキスの味

 転移ゲートを開いた俺はアカネちゃんの乗るクルーズ船の甲板へと移動する。


「すごいね。移動する船にまでどうやって転移ゲートを繋げられたんだい?」

「アカネちゃんには彼女を守るために俺の力がついてるんだ。彼女が宇宙の果てにいたって正確な居場所はわかる。そんなことより……」


 アカネちゃんが側にいない。

 どうやら慌てていたせいで、転移する場所がずれてしまったようだ。


 ゲートを開く直前、アカネちゃんに纏わせた光の玉が俺に危険を知らせていた。しかしその知らせはすぐに無くなり、不穏な様子に焦りが募る。


「ここにユンが……。我琉真様っ! 早く奴を探し出して始末しましょうっ!」

「ああ……むっ。シェンっ! 危ないよっ!」

「えっ? わあっ!?」


 遠くからこちらへ向かって駆けて来る魔獣。

 魔獣は戸塚とシェンを飛び越えると、俺を目掛けて大きく口を開く。


「ふん」」


 飛び掛かってきた魔獣の首を手刀で斬り落とす。


「もうすでに魔獣が放たれていたみたいだね。けどもう倒したし、あとはユンを探すだけかな」

「あれ1匹とは限りません。この船に乗っている人間を皆殺しにするつもりなら、もっと多くの魔獣を放っているかもしれませんよ」

「確かにそうか。さてじゃあどうしよう? 船に乗っている人たちを救うためにまずは魔獣を倒すか? それとも親玉のユンを先に仕留めるか……」

「まずはアカネちゃんだっ!」


 俺が叫ぶと、戸塚はキョトンと目を丸くする。


「彼女には地獄竜ゼルアブド……いや、コタツ君がついているんだろう? 後回しでもいいはずだけど?」

「アカネちゃんだっ!」


 理屈はどうでもいい。

 こんな危険な場所にアカネちゃんがいて、自分が側にいてあげていないことなどあってはならないという思いがもっとも強かった。


「わかったわかった。けど、助けに行く前に姿を元へ戻したほうがいい。そんな姿で行ったら君だってわからないよ」

「あ、お、おお、そうだった」


 今の俺は戸塚と同じ姿で、どこぞの巨乳美女になっているのをすっかり忘れていた。この姿では俺と認識されない。


 急いで姿を元へ戻した俺は、転移ゲートを開いて飛び込む。

 ……そこは船の中にあるどこかの部屋。視線の先にあるベッドの上ではアカネちゃんが眠っていた。


「アカネちゃんっ!」


 俺は側へ駆け寄ってアカネちゃんの名を呼ぶ。

 顔を覗き込む俺の目前で、アカネちゃんは薄っすらと目を覚ます。と、


「ん……っ」


 不意に首を抱かれて唇へキスをされる。


「ア、アカネちゃ……んんっ」


 離れたと思った唇が再び吸いつく。

 今度は濃厚に、ねぶるような熱いキスだった。


 初めてのキス。

 それをアカネちゃんからもらった俺は、ここへ来た目的も忘れて唇へ与えられる感触に陶酔していた。


「……ふぅ。ふふ、やっぱり来てくれた」


 微笑むアカネちゃんを俺はボーっと見下ろす。


 慌ててここへ来たはずなのに、頭が蕩けてしまってなにも考えられない。ただひとつ思えることは、瞳に映る女の子が愛しいということだけであった。


「コタロー?」

「あ……ご、ごめん。なんかその……びっくりしちゃってさ」

「うん。驚かせてごめんね。次にコタローを見たら、もうなにも言わないでキスしちゃおうって思ってたから」

「そ、そうなんだ」


 キスを唇へ受けたからか、身体が熱くなって興奮してくる。

 アカネちゃんも俺と同じ気持ちなのか、求めるような視線がこちらを見つめていた。……が。今はダメだと頭が身体へ冷静さを求める。


「コタロー大好き」


 三度みたびのキスを受け、俺はそのままアカネちゃんをお姫様抱っこで抱えあげる。


 本当ならばイギリスのホテルでできなかったことをここでしたい。だが今はそれをしていられる状況ではなかった。


「ここでするんじゃないの?」

「し、したいのもちろんなんだけど……」

「もう逃がさないから。コタローはわたしのことが好きなんだから、素直にわたしを抱けばいいの。わかった?」

「う、うん。いや、けど今は魔人がね……」

「魔人ならわたしが倒したし」

「倒した? 魔人をアカネちゃんが……はっ!?」


 バリンと大きな音を立てて魔獣が部屋へ飛び込む。と同時に俺は火の魔法を放って魔獣を焼失させた。


「えっ? さっきのって……?」

「アカネちゃんが倒したって言う魔人のことはわからないけど、今は船の中にあれがたくさんうろいついてるっぽいんだ。だから早く倒さないといけなくて」

「そ、そういうことは早く言ってよ。パパとママと紅葉、あとは他の人も早く助けなきゃでしょ」

「うん。急ごう。お父さんとお母さん、あと紅葉ちゃんの部屋は?」

「パパとママは隣。紅葉はその隣」

「わかった」


 ……というか、両親が隣で寝ているのに男女の営みを致そうとしていたのか。声とか聞こえたら社長が飛び込んできてややこしいことになりそう。


 それはともかくと俺は転移ゲートを開いて隣の部屋へ急ぐ。


「社長っ! 楓さんっ! って、うわあっ!?」


 ゲートから出ると、そこにはベッドの上で真っ白になって燃え尽きている社長と、シーツを身体に巻いた楓さんがいた。


「あれ小太郎君? 来れたんだね。よかったー。あらあらアカネをお姫様抱っこなんてしちゃって。もしかしてママたちと4Pしちゃいたいとか? けどそれはさすがにダメだよ。でもこの人、完全にダウンしちゃったし、未来の息子の息子をつまみ食いしちゃうのも……」

「なに言ってんのママっ! ここはあぶないから早く逃げるのっ!」

「確かに娘の恋人を食べちゃうのはあぶないね。でもあぶないからこそ興奮しちゃって……ああもう我慢できないっ! 小太郎君、脱ぎなさいっ! あなたがアカネを満足させれるような男かわたしが試してあげるからっ!」

「えっ? いやあの……」


 野獣のような眼光。

 魔人よりも恐ろしい目が俺に狙いを定めて見つめていた。


「ママそうじゃないのっ! もうっ! コタローは紅葉のところへ行ってっ! パパとママはわたしとコタツ君が守るからっ!」

「まあ小太郎君は3人も相手にできるの? すごい。うちの人より絶倫じゃない。わたしね、親子丼が夢だったの。こんなところで夢が叶うなんて……」

「コタローっ!」

「あ、はい」


 俺はアカネちゃんを下ろして転移ゲートでさらに隣の部屋へ行く。


「紅葉ちゃんっ!」

「……へ? えっ? あ、こ、小太郎さんっ! やだどうしようっ。これって夜這いだよね。けど小太郎さんはおねえの好きな人だし、紅葉が取っちゃったらおねえむっちゃ怒るだろうし……。まあ紅葉のほうがかわいいからしかたないよね。うん。来てください小太郎さん。紅葉は準備おっけーです」

「君はお母さんとお姉さんによく似てるね。よっと」


 紅葉ちゃんをお姫様抱っこで抱え上げる。


「わあっ。も、もしかして外でするんですか? 紅葉は初めてなので、できればノーマルにお願いしたいんですけど……」

「そうじゃなくて……」


 部屋の壁を破って3体の魔獣が飛び掛かってくる。

 瞬間、紅葉ちゃんの身体を軽く上空へ放り、魔獣3体の首を手刀で斬り落とす。それから落下してきた紅葉ちゃんをふたたび抱えた。


「こういう状況なんだ」

「わああ……」


 状況を理解できたのかできていないのか、紅葉ちゃんは輝くような目でただただじっと俺を見つめていた。

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