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第185話 施設にいた魔人はあの男

「な、なんだお前らはっ!? どこから……ぐはっ」


 銃を向けてきた男へ小さな魔力の塊を額へぶつけて昏倒させる。


「始末するなんて言って、ずいぶんとやさしいじゃないか」

「なにか情報を持ってるかもしれないだろ。あとで締め上げて聞き出すために生かしてやっただけだよ」

「たいしたもんだ」


 にこやかに笑って肩をすくめた戸塚から視線をはずして、俺はあたりを見回す。


「厨房か」


 外観とは違ってずいぶんと綺麗だ。

 この様子からして、何者かがここに住んでいるのは確実に思えた。


「やるじゃん。さすがは我琉真様が認めた男だね。わたしはまだ認めてないけど」

「そ、そっか」


 この男と同じ理由で認められても困るのだが。


 ともかくと俺たちは厨房を出る。

 厨房の外も外観からは想像できないほど綺麗だ。


「お」


 廊下を歩いていると、こちらに背を向けて立っている男を見つける。


 さっきの男は気絶させてしまったが、あいつにはボスの居場所を聞くか。


 と、足音を忍ばせて男へ近づく。


「がっ!?」


 男の後頭部を掴んで力を込める。


「い、いだ……っ」

「声を上げればこのまま頭を握り潰す。質問にだけ答えろ」

「……わ、わかった」

「魔人はどこにいる?」

「ま、魔人? そんなのここには……いいいっ!?」

「いるのはわかっている。どこにいるかだけ答えろ。頭を潰れたトマトにしたいか?」

「に、2階だっ。2階にある奥の部屋だっ」

「ありがとう。ついでにもうひとつ質問だ。魔人とはなんだ? デュカスとは関係があるのか?」

「デュ、デュカス? デュカスってあの慈善団体か? なんでそんなのと魔人が関係あるんだ?」

「お前はデュカスに雇われてここにいるんじゃないのか?」

「お、俺はここに住んでる魔人に雇われただけだ。奴がどこと関係しているかなんて知らねーよ」

「……そうか」


 やはりデュカスとの関係は魔人本人に聞かなければダメなようだ。


「もういいだろ? 離してくれよ」

「ああ」


 そう言って俺は男の首を絞めて気絶させる。


「まるで1流のスパイみたいだ。そういうのどこで習ったんだい?」

「動画サイトかな」


 暇なときにぼんやり見ていた格闘技の動画で得た知識が役に立つときがくるとは思ってなかったが。


「わたしたちすること無いですね」

「いずれ世界を支配する男だ。彼がいれば僕らなんておまけみたいなものだからね。やれることがなくて当然さ」

「ぬうう。さすがは我琉真様が認めた世界を支配する男。わたしもいよいよ認めざるを得ないかもしれませんね……」


 もう彼らの中で俺はいずれ世界を支配する男らしい。

 いずれテロリストのボスとして名前を出されるんじゃないかとひやひやする。


 それから俺たちは階段を見つけて2階へ上がる。

 奥に扉を見つけ、わずかに開けて中を覗く。


「……なんか声が聞こえるな」


 男と女の声がする。

 しかし会話というより、これは……。


「なんか変な声が聞こえますね? なんでしょう我琉真様?」

「これは喘ぎ声だね」


 直球で言った戸塚の言葉に俺は心の中で同意する。


 これは女の喘ぎ声だ。

 ということは、中で行為が行われているのだろうか?


「わわっ、なんかエッチなことしてるってことですか? じゃ、じゃあ邪魔しちゃ悪いですし、終わるまで待つ感じですか?」

「お客ならそうするけど、そうじゃないからね。ねえ?」

「ああ」


 中でなにをしていようが、待ってやる必要は無い。


 俺は扉を開き、中へと入る。


「ああ?」


 配慮などすることなく、音を立てて扉を開いて入ったため、中にいる者はすぐに気付いてこちらを睨む。


 入ってすぐになにがあるかと思えば、そこにあったのは巨大なベッドだ。その上に裸の男がひとりと、裸の若い女が十数人ほど乗っていた。


「なんだ女か。女の補充なんて頼んでねーんだけどなぁ」


 そう男は気だるそうに言う。


 若い男だ。

 顔は整っており、世間的にはイケメンと言われる部類……うん?


 あの男、どこかで見たことがある。

 どこだったか……。


「まあいい。若い女はいくらいてもいいからな。こっちへ来いよ。イケメンの俺様がやさしく抱いてやるからよ。けっけっけっ」


 顔は整っているのに、歪んだ表情は悪辣で醜い。

 十中八九、こいつが魔人だろう。


「な、なんかすごい状況ですよ我琉真様。裸の男と女の人がいっぱいで、なんかもう頭が沸騰しそうですよぉ」

「落ち着いて。まあすぐに終わるさ」


 少女のシェンには刺激が強い光景だろう。

 戸塚の言う通り、すぐに終わらせてやるかと思った。


「なにを突っ立って話してるんだよ? 早く来いって。この大人気VTuberの桜ノーマン様に抱かれるなんて光栄だろ?」

「桜ノーマン?」


 その名前はどこかで聞いた。

 確か……あれは。


「……あっ! お、お前はっ!」


 桜ノーマン。

 それは以前、アカネちゃんを襲おうとしたクズ野郎であった。

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