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第142話 魔人スキル『アバター』

 ……ジェイニーが建物の外へ出る。

 姿は人間で、魔人ではなかった。


 ジェイニーは建物から離れ、周囲を見回す。


「仮面の男と女は始末した。出てきていいよミレーラ」


 そう声を発すると、しばらくして何者かが月明かりの下に姿を見せる。


「始末した?」


 ミレーラだ。

 現れたミレーラは気弱そうな表情でジェイニーへ近づく。


「本当ですか? どうやって?」

「簡単さ」


 と、目の前にいるミレーラの首をジェイニーは掴む。


「な、なにをっ!?」

「かかったな」

「なっ!?」


 ジェイニーの姿が変化し、俺は正体を現す。


「なっ!? は、白面っ! どうなって……」

「姿を変えることくらい造作も無い」


 変化魔法。

 そんなに難しい魔法ではない。


「お前もジェイニーと同じ場所に送ってやる」


 掴んでいる首を絞める。

 ……しかしミレーラはまったく苦しむ表情をしない。


「かかかっ……」


 ミレーラの姿が角3本の魔人へと変わっていく。


「どうしました? 私を殺すのでは?」

「……なにかあるな」


 これは勘だが、このまま首を絞めてもこいつは殺せない。


「かか、私を攻撃しても無駄だ。身代わりがいる」

「身代わり? ……形代か」


 子供の中に形代という血文字を首に書かれている子がいた。本体であるミレーラに攻撃を加えれば、あの子にダメージがいくということか。


「どうやってジェイニーを倒したかは知りませんが、あなたに私を倒すことはできませんよ。形代は再生特化の魔人。どんな傷も一瞬で修復できます」

「……」


 周囲に3つの気配。

 目の前にいるミレーラとほぼ同じ姿の魔人が周囲に3人現れる。


 鉄壁。岩のような身体をした魔人。

 賢明。頭の大きな魔人。

 鋭利。全身に刃物のような突起物を生やした魔人。


 形代の魔人はいない。

 戦闘要員では無いので出てくる必要が無いということか。


「かか、私を含めて魔人は4人。これは圧倒的ですねぇ。そして」


 3人の魔人は身体を光らせ、肉体を倍ほどに巨大化させる。


「『アバター・ドーピング』私の分身は素体となる人間の生命エネルギーを利用して身体能力を向上させることができるのです。そして『アバター・サクリファイス』により、我らの受ける攻撃はすべて形代が受けます。どうです? 最高に絶望的な状況でしょう? かかかかかっ!」


 すでに勝利を確信しているのか、ミレーラは楽しそうに笑う。

 だがもちろん俺に絶望感など無い。こうしてミレーラの首を掴んでいる時点で、すでに戦いは決しているのだ。


「楽に死にたければ子供たちをお前のスキルから解放しろ」

「状況がわかっていないのですか? 死ぬのはあなたですけど? かかっ」

「わかっていないのはお前だ」


 掴んでいる首から魔力を吸収する。


「な……ち、力が……これはさっきのっ?」

「魔力吸収だ。じきにお前はなにもできなくなる」

「くっ……や、やれっ!」


 周囲の魔人が俺へ襲い掛かる。

 それをかわして跳躍した俺は離れた場所へと降り立つ。


「子供たちを解放しないならそれでもいい。お前をコピーするだけだ」

「コ、コピー?」


 俺はジェイニーに使った魔法、変化を使う。


「なっ……!?」


 魔法により俺の姿はミレーラとなる。


 この魔法はただ見た目を変えるだけではない。

 触れている相手の能力ごと外見をコピーできる魔法だ。


「……なるほど。こういうスキルか」


 ミレーラの使うスキルは完全に理解した。あとは……。


 こちらへとふたたび襲い来る3人の魔人。

 しかし動きは目前で止まり、その肉体は縮んでいく。


 やがて子供の姿に戻り、その場に倒れた。


「も、元に戻った? 一体なにを……?」

「お前の能力だ。お前の知っている方法で能力から解放しただけだ」

「馬鹿なっ! それは私しか知らないことだっ!」

「言ったはずだ。お前をコピーすると。お前自身になった俺はお前しか知らないお前の能力で子供たちを解放した」

「そ、そんなことあり得るはずが……」

「あり得るからこうなっている」


 俺は元の姿へと戻り、ふたたびミレーラの首を絞めつける。


「すでに形代の子供も解放されている。攻撃を受けて死ぬのはお前だ」

「ぐうう……」


 すでに諦めているのか、ミレーラの顔は憔悴していた。


「お前を魔人にした奴の名前を言え。そいつはどこにいる?」

「い、言えない……」


 こいつもか。

 やはり口止めの魔法がかかっているのかもしれない。


「だったら頷いて答えるだけでいい」


 俺は質問を変えることにする。


「お前ら魔人とデュカスには関わりがあるのか?」


 小田原とジェイニーが関わっている慈善団体。

 もしかすればあの団体に、魔人の秘密が隠されているのではないか?


 俺はそれを疑った。


「ぐ、う……」

「答えろ。お前を苦しませる方法など俺はいくらでも知っているんだぞ」

「う、うう……」


 ただ呻き続けるだけのミレーラ。


 答えないか。だったら無理にでも……。


 そう思ったとき、


「なにっ!?」


 首を掴んでいたはずのミレーラの姿が無い。


 消えた? どういうことだ?


 能力を隠しているような様子じゃなかった。

 ならばどういう理由で消えたというのか……?


「――ミレーラはすでにお前が殺した」


 どこからか男の声。

 見上げると、建物の上に背の高い何者かが立っていた。

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