第139話 ジェイニーの屋敷へ
俺たちはミランダと共に建物の外へ出る。
外へ出て気付いたが、中がボロボロだったのに建物の外観は綺麗だ。きっとまともな施設に見せかけるための偽装なのだろう。
「ここに子供は何人くらいいるの?」
中はボロいが建物は大きい。
たぶん100人くらいはいるんじゃないかと思った。
「先ほど部屋にいたので全員です」
「えっ?」
さっきあの場にいたのは十数人だ。
建物の大きさに対してずいぶんと少ない。
「もっと大勢いるのかと思ったよ」
「……」
俺がそう言うと、ミランダは表情を暗くする。
「稀にシスタージェイニーが子供をどこかへ連れて行くんです。それで……」
「それは……里親に出すとかで?」
「いいえ。詳しくはわかりませんが、きっと違うと思います。お金にならないことをあの人がするとは思えませんし」
「……」
さっきの様子からして、ジェイニーが里親探しをするような人間とは思えない。
別に理由があるのではと俺も思った。
……ミランダに連れられ、やがて別の建物にやってくる。
「ここです」
「ここ……」
外観はさっきの建物とそれほど遜色は無いが。
「けど簡単に中へは入れません。鍵がかかっていますので」
「ああ、それは大丈夫」
俺は転移ゲートを開く。
「そ、それ、この中に通じてるんですか? 便利ですね」
「まあね。じゃあ俺たちは行くから」
ミランダに手を振り、俺たちはゲートに入る。
……中に入ってわかったのは外観からは想像できない豪奢さだ。
子供たちがいた建物のと違ってこちらは豪華絢爛。
高そうな絵や骨董品がそこら中に飾ってあり、部屋の掃除も綺麗にされているようだった。
まさに豪邸。
子供はあんな廃墟寸前の建物に住ませて自分は豪奢な屋敷で生活。
これが世間で聖人などと呼ばれている者の本性であろう。
「たいした聖人だな」
「うん。たぶんあのシスタージェイニーって人、子供を利用して寄付金を集めたり国から助成金をもらって私腹を肥やしてるんだよ。ひどくて許せないけど、これって動画的にはめっちゃバズりそう。もっとなんかないかな」
「あ、アカツキちゃん」
部屋を出て行くアカネちゃんについて行く。
コタツが一緒なので大丈夫ではあるが、ここは魔人の住処なのだ。
警戒して進むべきだろう。
俺たちは暗い廊下を歩きながら、部屋を見つけては中を確認していく。
「あ、ここ……」
中を覗いたアカネちゃんが声を上げる。
俺もうしろから中を窺うと、奥に1台のパソコンが見えた。
「なにか重要な情報が入ってるかも」
そう言ってアカネちゃんはパソコンに近づく。
「けどこういうのってパスワードが無いと見れないんじゃない?」
「パソコンは得意なの」
イスに座ったアカネちゃんはパソコンを起動し、キーボードをカタカタとリズミカルに叩く。
「っと、これでログイン完了」
「えっ? どうやったの?」
うしろで眺めていてもさっぱりだった。
「説明してもいいけど、専門的な知識とか用語を理解してないと言ってもわからないと思うよ」
「じゃ、じゃあいいかな」
パソコンの知識なんて、ほとんど無いので。
「……うん? えっ? これって……」
「どうしたの?」
アカネちゃんが見つめる画面を覗くと、そこにはなにか値段のようなものが表示されていた。




