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第130話 外泊に不安なおじさん

 ナイトマン:なんかケビン君、めっちゃ怯えてなかった?


 ランラン:なーんか怪しい感じ


 イグナス:シスタージェイニーってイギリスでは有名な慈善活動家だよ。現代のマザーテレサとか言われてるくらいだし


 ぬまっきー:テレビで見たことあるかも。親のいない子供を引き取って施設で育ててるとかやってた


 おやつ:俺もその番組見たことあるけど、どんな施設で子供を養ってるとかはあんまり詳しくやってなかったよね。シスタージェイニー偉大ですげーって紹介されるばっかの変な番組だった記憶


 そらー:奇跡で病気も治すとかやってたな。


 めたどん:オカルトやん



 コメントに依ればシスタージェイニーは有名人らしい。

 しかしそんな有名な慈善活動家なら子供には優しい人なのだろうし、なぜケビン君があんなにも怯えていたのかますます謎である。


「なんかケビン君、怯えていたよね? 白面さんも気づいてた?」

「うん」

「わたしもなんか変だと思ったんだよね。ケビン君、やたらシスターに怯えていたしさ」

「うん。良い人そうだったけど、もしかしたら厳しく叱りつけたりするのかな?」

「そうかも。あ、そうだ、あの子に光の玉をつけてあげたら? なにかあっても守れるように」

「あれはすごく敏感なんだ。軽く叩いたりするだけでも強い反撃をする可能性があるから、安易につけるのはあぶないかも」

「けどこのまま放っておくのも心配じゃない? わたし、あのシスタージェイニーって人について少し調べてみようかな」


 俺もケビン君のあの様子は気掛かりだ。

 しかし現時点ではあのシスタージェイニーという人が、ケビン君になにかしらの危害を加えているかはわからないので、なんともしようがなかった。


「っと、じゃあ配信はここで終わりにしようかな。また明日ねー☆ばいばーい☆」

「ば、ばいばい」


 配信が終わって俺は一息つく。


「今日はちょっと……盛り上がりにかけた配信になっちゃったかな?」


 今回は戦いもなく、見栄えのしない配信になってしまった。魔人の正体を突き止める手がかりになるものも、ケビン君から聞いた目撃情報くらいで多くは得られなかったし、なんともおもしろみの少ない配信だったと思う。


「魔人の調査は始めたばかりだし、まずはこんなものでしょ? 誰も初回から魔人の正体に迫れるような展開なんて期待してないよ」


 まあそれもそうだが。


「けどいつまでも進展が無いんじゃ飽きられちゃうからね。早くなにか見つけないと」

「うん」


 とはいえ、今のところなにか魔人の正体に迫れるようなものが見つかる様子は無い。

 前途は多難である。


「今日はもう帰る? 帰るなら転移ゲート開くけど?」


 配信は終わったし、暗くもなってきた。

 今日はもう帰るものだと俺は考えたが……。


「なに言ってるの? せっかくイギリスに来たんだし、今日はホテルに泊っていくに決ってるじゃない」

「ええっ? い、いやでも俺たち不法入国だし、パスポートが無いと外国のホテルには泊まれないんじゃない?」


 海外旅行未経験のにわか知識だが、そんなことを聞いたような気がする。


「だいじょーぶ。ここから歩いて行けるホテルのオーナーがパパの友達で、家族で旅行に来たときはいつも泊めてもらってるの。行く前に連絡しといたし、パスポートの件もまあなんとかなるでしょ」

「そ、そうかなぁ?」


 アカネちゃんがそう言うならとりあえず行ってみるか。

 しかし海外のホテルを経営している友達がいるとは。貧乏な俺からすると異次元の話である。


「で、でも外泊なんてして大丈夫かな?」

「ママに言って来たから大丈夫だよ。ゴムまでもらっちゃった」

「はは……」


 外泊と聞いて止めるのではなく、ゴムを渡す親なんて楓さんくらいかな?


「いやその、アカネちゃんのママはいいのかもしれないけど……」

「パパのほうはママの言いなりだから心配しなくても大丈夫」

「そうじゃなくて、その……うちのほうのママがね」

「えっ? 小太郎のママって……雪華ちゃん?」

「うん。ちっちゃく見えても俺の母親だからさ。いろいろ心配してくれてうるさく言うんだ。外泊なんて許可してくれないかも。厳しいんだうちのほうのママは」

「33歳のおっさんがなに言ってんのっ! ほら行くよっ!」


 グイと腕を引かれて連行されていく。


「せ、せめて連絡を……」

「あとでいいでしょっ」

「はい……」


 16歳の女子高生にホテルへ連れて行かれる33歳のおっさん。

 客観的に見て、実に稀な光景であった。


 アカツキと白面から、アカネちゃんと小太郎に戻った俺たちは、魔人の被害に遭った地を少し離れてホテルへとやって来たのだが……。


「えっ? ここ?」


 目の前に現れたのは、煌びやかな高級ホテル。

 貧乏な俺は入口に立っただけで眩しくてくらくらしてしまうほど、大きくて宿泊費の高そうなホテルだった。


「そう。入るよ」

「うん」


 先に入ったアカネちゃんに、俺はビクビクしながらついて行く。

 フロントの人にアカネちゃんが話すと、しばらくしてオーナーという男性が出てきて、なんやかんや話して泊めてもらうことができた。


「ね、なんとかなったでしょ?」

「う、うん」


 なんかオーナーさんが事情を察してくれたらしく、パスポートの件はうまくやってくれるとのことで宿泊はできた。それはよかったのだが……。


「へ、部屋はひとつしかとれなかったの?」


 泊まる部屋はひとつだけ。

 つまり俺とアカネちゃんは一晩を共に過ごすことになってしまった。

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