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第116話 小田原智が失踪?

 なぜ自殺を? ……いや、理由はわからないでもない。


「く、首吊りとかですか?」

「ああ。どっかの山奥で首吊りの死体が見つかったそうだ」

「あの専務が自殺ですか……。なんかあんまり実感ないですね」


 寺平重助があのように死んだのち、心神喪失状態で家に引き込もっていたらしいが、自殺をするようなタイプの人間とは思えなかった。


「自分もいずれ寺平重助のような殺されるのではと、だいぶ怯えていたみたいだからね。恐怖に勝てなかったのだろう」


 だとすれば、間接的に俺が殺したということになるだろうか。

 あの男は寺平重助と組んで、アカネちゃんに危害を加えようとしていた極悪人だ。死ぬのは当然と思うが……。


「けれどなぜ山奥で首を吊ったんでしょうね? 外に出るのを怖がっていたそうですし、やるなら家で首を吊りそうですけど」


 俺がそう疑問を口にすると、社長は表情を引き締めて俺の目を見た。


「あまり深くは考えないことだ。世の中、知らなくていいことはたくさんある」

「えっ? あ……はい」


 言われた通り、この件に関して俺は深く考えないことにした。


「それよりも小田原智のことだ。奴がこのまま行方をくらませて自由になるのはおもしろくない。そこで君に奴の捜索をお願いしようと思ってね」

「はあ、それは構いませんけど、奴を見つけて連れ戻せばいいですか?」

「いや、君に任せるよ」

「任せるとは……?」

「言葉通りだよ。奴のことは君に任せる」


 社長の冷たい表情から、俺は言葉の意味を察する。


 任せるとは、つまりそういうことだろう。


「社長、あの、自分は善良な一般市民なのですが……」

「はははっ。そうだろうさ。そういうことにしておくからしっかり頼むよ」

「は、はあ……」


 寺平親子を殺した犯人が俺だって、完全にバレてるなこれは。


 奴のことは社長に任せていたが、俺の手でやっていいのならば、そうさせてもらっても構わない。奴はレイカーズ最後の生き残りだ。奴を仕留めるのは、俺の役目なような気もしていた。


「あ、じゃあ、話はこれで終わりになりますか? でしたら自分は仕事に戻ろうかと……」


 話が終わったと思った俺はそう言うが、


「うん。ああ、呼び出した理由の用件は終わりなんだが……小太郎君。さっき紅葉がどうとか言ってたね?」

「えっ? いやあのその……」

「まさかとは思うけど、紅葉に関して私に呼び出しを受けるようなことをしたんじゃ……ないだろうね?」


 強面社長の目がだんだんと険しくなっていく。


 さっき余計なことさえ言わなければこれで話は終わって、部屋を出れていたのにと俺は心の中で過去の自分をなじった。


「アカネとのことは……まあいいとしてだ。中学生の紅葉に手を出していたとしたら、それは君、私も冷静じゃいられなくなるよ。どうなんだ?」

「て、手を出していませんよっ! 素敵なおっぱいの谷間を拝見させていただいただけで……あ、やべっ」


 慌てて口を噤むももう遅い。

 顔を俯かせた社長は、フルフルと肩を震わせていた。


「き、君は中学生の紅葉に、む、胸を見せるように言ったのかっ!」

「違いますっ! 違いますっ! じっくりと拝見して立派な谷間だと感心しましたが、見せろなんて言ってませんっ」

「でも見てるじゃないかっ!」

「だって大きいんですもんっ! 見せられたら見ますよそりゃあっ!」

「くっ……開き直って……。この巨乳好きの変態めっ!」

「しゃ、社長だってそうなんでしょうっ! 奥様に聞きましたよっ!」

「あ、あいつなんてことを教えてるんだっ。わ、私はなぁ……」


 と、そこで机に置いてある電話が鳴る。

 内線のコール音だ。


「うん? ……ちょっと待っていたまえ」


 ソファーから立ち上がった社長が電話を取る。


「私だ。……な、なに? いやその、私はいないと伝えてくれ。えっ? いるのはわかってるからと言ってもう社長室へ向かった? 走って? 階段でっ!? あわわ……」

「?」


 どうしたのだろう?


 社長は慌てた様子で電話を切り、その状態で固まってしまう。


「い、いや、大丈夫だっ! こういうときのためにあれを作ったんじゃないかっ!」


 そう声を上げた社長は部屋にある本棚へ向かう。

 そして本棚へ向かい、中段あたりにある本を掴んで引くと……。


「あっ!?」


 本棚が右へスライドし、奥に人がひとり入れるくらいの空間が現れる。

 逃げ込むようにそこへ入っていく社長。それを見ながら、俺はなにがあったのだろうと困惑していた。


「ここへ誰か入って来たら私はいないと言ってくれ。いいな?」

「えっ? あのその……」


 俺が答える前に本棚は左にスライドして元の位置に戻る。

 それから間もなくして、社長室の扉が勢いよく開かれた。

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