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第100話 鍵を奪い合う2人

 俺は上着を脱いで雪華の身体をくるんでやる。

 それから無未ちゃんとともに、とりあえず自宅へと帰った。


「あ、おかえり」

「うん。ただいま……って、なんでアカネちゃんがいるのっ!?」


 玄関を開けて入ると、魔王イスに座って膝の上に乗せたコタツを撫でているアカネちゃんの姿が目に入り驚く。


 今日はちゃんと鍵をかけて出掛けたはずだが……。


「うん。この前に来たときに合鍵を見つけてね。もらっちゃった」

「も、もらっちゃったって……」


 確かどっかの引き出しにもう一本、自宅の鍵があったとは思う。


「いいでしょ? わたしが持ってたって?」

「まあ……うん」


 勝手に持って行ったのはダメだけど、自宅の鍵をアカネちゃんが持っているのは特に問題は無いか……。


「ダ、ダメに決まってるーっ!」


 と、俺の背後で叫んだのは無未ちゃんだ。


「他の女が小太郎おにいちゃんちの鍵を持ってるなんてダメっ! それをわたしに寄こしなさいっ! それはわたしが持つにふさわしいのっ!」

「無未ちゃんは鍵が無くてもスキルを使って入れるからいらないんじゃない?」

「そういうことじゃないのっ! 小太郎おにいちゃんは黙っててっ!」

「はい……」


 俺の家の鍵なんだけど。


「あんたになんか渡すわけないでしょ。あんたに渡すくらいならこの場で飲み込んでやるんだから」


 上を向いたアカネちゃんはあーんと口を開けて、鍵を飲み込む仕草を見せる。


「ダ、ダメっ!」


 床から飛び出た小さな黒い手が鍵へ伸びるが、


「きゅう」


 光り輝いたコタツによって、その手は消失する。


「あーんっ! なんてことするのーっ!」

「ふふん。この子はわたしの味方なの。ねー」

「きゅー」


 すっかり懐いたようで、コタツはアカネちゃんに撫でられて嬉しそうにしていた。


「むきーっ! いいから鍵よこせーっ!」

「嫌だ。ぜーったい嫌だっ!」


 鍵を奪い取ろうと迫る無未ちゃん。

 鍵を渡すまいと、アカネちゃんは狭い部屋を逃げ回る。


「ちょ、ちょっと落ち着いて。狭いんだから」

「小太郎おにいちゃんっ! この子に鍵を渡すよう言ってっ!」

「いや、そんなこと言われても……」

「言うわけないじゃん。コタローはわたしが好きなんだから。この鍵はわたしが持つものなの。あんたじゃなくてね」

「こ、この……っ!」


 無未ちゃんの顔がますます怒りに歪む。


 止めなきゃと思うも、どうしていいかわからず俺はあわあわしていた。


「やめいっ!」


 と、そのとき一喝が部屋へ響く。


 俺の腕に抱かれている雪華が、2人を見据えて声を上げたのだ。


「ぴーちくぱーちくと、くだらないことでもめおって」


 そう言って雪華は俺の腕から降り、アカネちゃんの手から鍵を奪う。


「ほれ。お前の鍵じゃろ」


 俺は渡された鍵を受け取る。


「女の喧嘩も止められんとは情けない。もっとしっかりせい。男じゃろ」

「め、面目無い」


 確かになにもできずにあわあわしていたのは情けない。


 雪華に叱られ、もっとしっかりしようと俺は自省した。


「だ、誰その子?」


 今さらな疑問をアカネちゃんは口にする。


「小太郎おにいちゃんとわたしの子供」

「サラッと嘘吐かないで」


 ペロッと舌を出す無未ちゃんへ向かって俺は肩をすくめた。


「えっと、雪華ちゃんは忠次さんの子供……なんだよね?」

「いや、そうじゃないんだ」

「そ、そうなの? じゃあ……」

「うん」


 話さないわけにはいかないだろう。


 俺は雪華のことを2人に話すことにした。


「雪華のことを話す前に、とりあえず服を買って来てやらないとな」


 いつまでも俺の上着1枚にくるませているわけにもいくまい。


 とはいえ、俺には女の子の服などわからないので、無未ちゃんにお願いして適当な子供服を買って来てもらう。そして雪華がそれを着たところで話を始めた。

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