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第1話 年下イケメン上司に低学歴と罵倒される

 この会社に就職して5年は経ったか。

 学歴の無い俺、末松小太郎すえまつこたろうは給料も安く、昇進もあんまり見込めない。

 28歳のときになんとか中途で入れた会社なので贅沢は言えないが、上司の性格だけは不愉快で毎日が辛かった。


「おい末松、ちょっと来い」

「あ、はい」


 課長の小田原智おだわらさとしに呼ばれて俺は行く。


「お前さぁ、例の契約どうなったの? まだ取れないの?」

「はあ、その、先方になかなか納得していただけなくて。やっぱりこの条件で契約してもらうのは厳しいと思います。売れなかったら先方のリスクが大きいですし」


 うちの会社が開発した商品を小売りに営業しているわけだが、返品不可な上、かなり高い価格で売ってこいと言うのだ。


 こんなの売れるわけないだろ。


 俺でもわかるようなお粗末な商品だが、専務の肝入りとかであちこちへ無理な営業をかけさせられていた。


「それを売るのがお前の仕事だろ? やる気あんの?」


 小田原は専務の息子だ。

 つまりはコネ入社なのだが、歳は俺より6つ下で正直、仕事はできない。


「はあ、一生懸命にはやってますが……」

「やってないじゃん。やってないから売れないんだろ?」


 じゃあお前が売って来いよ。


 偉そうに命令するだけで実績らしい実績も無い無能上司にそう言ってやりそうになるも、言ったらクビになるかもしれないので言葉は飲み込む。


「まあ、なかなか難しいというか……」

「お前が馬鹿だから売れないんだよ。お前のここにはなにが詰まってるんだ? うん? クソでも詰まってんのか?」


 定規で頭をペシペシと叩かれる。


「うわーまたやられてるよ」

「年下の上司にいびられてだっせーの。ああはなりたくないね」


 職場の同僚たちが小声でそんなことを言う。


 小田原はいつも俺ばかりにこんなことをする。

 俺がおとなしい陰キャだからだろう。対して小田原は陽キャのイケメンだ。高学歴で将来は会社の重役と言われているし、女子社員からの人気は高い。

 低学歴で将来もそんなに昇進できないだろう俺とは違う。


「これだから学歴の無い奴は嫌なんだ。努力しようって気が無い。すぐ怠けようとする。お前みたいな部下をもった俺は不幸だよ」

「はあ、すいません」

「すいませんって思うなら仕事しろよ仕事。できないじゃなくてやるんだよ。できなきゃクビだぞこの低学歴」

「わ、わかりました」


 俺は小田原へ向かって頭を下げた。


「智、仕事は順調か?」


 と、そこへ専務の小田原喜一郎おだわらきいちろうがやってくる。


「親父。まあそれなりにな。けれどこいつみたいな無能のせいで例の商品がなかなか売れなくてね。困ったもんだよ」

「そうか。お前も大変だな。しかし無能な奴もうまく使うのが良い上司というものだ。ケツを叩いてしっかり働かせろ」

「ははは、もちろんだよ。俺はやさしいからね。馬鹿でも見捨てずにしっかり指導して働かせてやるよ」

「さすがは俺の息子だ。はっはっは」


 馬鹿だとか無能だとか本人の前で言いやがって。

 嫌な親子だ。


 もうこの会社やめようかな。


 何度もそう考えた。

 しかし俺は低学歴だし、そんなに若くも無い。再就職は難しいだろう。


 俺は高卒だ。しかし別に頭が悪いからとか、家が貧乏だったから大学に行けなかったわけじゃない。

 俺が大学へ行けなかったのは、ある事情のせいだった。


 ワンルームの自宅へ帰った俺は、部屋の奥にあるイスへと腰を下ろす。


「あー今日も疲れたなぁ」


 禍々しい玉座へと座った俺は大きくため息を吐く。


 どうも普通のイスだと落ち着けない。

 向こうでの生活が長かった影響だろう。


 俺は16歳のころに異世界へ召喚されて、そこで魔王をやっていた。向こうの連中が言うには、俺には魔王の才能があるから召喚したとかなんとか。


 俺の10代後半と20代の前半は向こうでの魔王生活に費やされた。こっちへ戻って来てから夜間へ通って高校だけは出たけど、大学へは行っていない。


「いまどき大学くらいは出てないとなー」


 しかし今から社会人として通うにも金と時間が必要だ。

 いずれ大学へは行きたいが、今の仕事だけで学費を払うのは辛い。だから俺は終業後と休日に副業をしていた。


「疲れたけど、行ってくるか。しかたない」


 玉座から立ち上がった俺は剣を持って出掛ける。

 魔物のいるダンジョンへと。

 異世界帰りの魔王がクソ上司や悪党にざまぁ無双します。

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