その96 やれやれなのじゃ
黒猫はリョウケンの後ろを歩きながら考える。
……ぬじゃぁ、一体いつまでこやつらと過ごさねばならぬのじゃ。ギルマスめ……協力者に従えばいいって言っておったのに未だその協力者が現れんではないか。メッセージに次やる事を送ると言っておったが……そもそもわたしゃはメニューを開けんのじゃああ!どうすればいいのじゃああ!
内心穏やかでない黒猫は頭の中で暴れ散らかす。とは言え実際に暴れたら前を歩く奴にまた腹パンを食らわされるので大人しくするしかない。
ストレスが発散出来ないのでフラストレーションは溜まるばかり。
コノルからメニュー画面を開く術を教えて貰ってたはずなのじゃが……どうすれば良かったのか忘れたのじゃ……うむぅ……
頭を捻りながら頭を悩ます。散々コノルが説明していたのに。
日頃の行いが祟った悪い例である。
そんなどうしようも無い事を考えながら歩いていると、急にリョウケンが立ち止まり、黒猫も一緒に立ち止まる。
その先には射場ザキがいた。どうやらリョウケンとやらは射場ザキとここで仕事前に待ち合わせをしていたようだ。
「チッス。リョウケンさん」
「ちちち、待たせて悪いな。で、話は本当なんだろうな?」
「ええ、試してみたら分かりますよ。現にコイツ、俺のアイテムを盗んでやがったから」
射場ザキは黒猫の物を盗む行為に興味を持っていた。
誰にも出来ない芸当。興味を持つのは当然だ。ゲバラの訪問により有耶無耶になっていたが、射場ザキはまだ追求を諦めていなかった。
「なんじゃ?仕事じゃないのかの?」
2人から一身に奇異の目を向けられ黒猫は首を傾げる。
「ちちち、その仕事はお前次第で楽になるんだよ。射場ザキが嘘を言ってなきゃな」
「おら、盗み方を教えろ。今すぐに」
射場ザキは黒猫に近寄り、拳を見せ付けながら黒猫の盗む秘密の方法を知ろうとする。
また殴られるのかの。はぁ、ヤレヤレなのじゃ。しかも今度は2人。2倍殴られそうじゃな。
黒猫は薄目になりながら、自分へと迫ってくる射場ザキの拳を見る。
痛いのは勘弁なのじゃ。まぁコノルが理解出来なかった事をこの2人が理解出来るとは思えぬし、教えてやってここは切り抜けるかの。
「分かったのじゃ。教えるから殴らないで欲しいのじゃ」
黒猫はそう言って手を前に出して近寄ってくる射場ザキを引き止める。
しかし
「最初からそう言やいいんだ。だが俺から盗んだアイテムの件は許さねぇ」
ドゴッ!
「ぬじゃ!?」
黒猫が射場ザキから盗んだ事を自ら認めた事により、黒猫は結局殴られた。