その81 場面は戻り、潜入の話
時系列があっちこっちになってますがこれで元通りです。
獄中での地獄の様なやり取りから、はや数日。
話は夜中に面会しに来たNNとの会話へと場面は戻る。
「……潜入なのじゃ?」
「そうです。それで罰は帳消しです。ですが、極秘でお願いします。バレたら潜入する意味がありませんからね。その点貴方なら好都合です。悪名は轟いていますがブラックギルドに顔が一切知られていませんからね。分かりましたか?」
「分かりませんのじゃ。何すればいいのじゃー?目的はー?」
自分への折檻でないと分かるや否や、足を組んで椅子に反り返り、偉そうな態度でNNに質問を投げる黒猫。
さっきまでの脅えた様子はどこえやら……と常人なら呆れ返るとこれだが、NNは気にも止めずに話を進める。
「貴方はコノルがいなければ多少話は通じる筈です。理解して下さい。あと目的は知らなくて良いのです。いつもの様に流されて下さい。同じく潜入している仲間が貴方を影でサポートしますから、貴方はそれに従うだけで順風に帆を上げられます」
「ん?潜入している仲間?では潜入しているのは副監かの?」
「違います。ライとフウは下層界のプレイヤーに人気ですからね。顔バレする恐れが」
「では副団かの」
「彼はブラックギルド【薬死寺】の元ギルドマスターでしたから顔が割れているので」
「……まさか、だしだし五月蝿いあの副マスが潜入を?冗談じゃろ?」
「ええ勿論違います。彼女は別の任に付かせていますから。しかし、血死涼と仕事がしたいのでしたら呼びますよ?」
「やめるのじゃ。隙あらばわたしゃに嫌がらせしようとするな。いつもお主は影で何かしてわたしゃに嫌がらせをするの。まずその性格を直すのじゃ。で、あの3人でないなら誰の部下が侵入しているのじゃ?また副団の部下かの?」
「いえ、潜入の幇助をするのは誰の部下でもない私の個人的な知り合いです。気にせず潜入して下さい。ですが、潜入とはいえ、行くのはブラックギルド。選ぶ権利位は貴方にあるでしょう」
「ぬはは。意味分からぬ。では断る」
「『ぬはは。意味分からぬ。では断る』は良いのですが、そうなれば貴方はこの場所で囚われたまま、今後一生コノルと会えず、好きな食べ物も食べられずに生涯を終える事になりますよ?勿論コノル共々ギルドから退団させ、その後のコノルの生活保証もしませんし、次我々ギルドの誰かがコノルに出会ったら敵と見なして攻撃し捕まえ、無意味な拷問を掛けた後死んでもらいます。それがご希望でよろしいのですね黒猫?」
「……脅し方が露骨にエグ過ぎて引くのじゃが?お主のせいでこのギルドが何処よりもブラックしとるではないか。何もよろしくないのじゃ。それではハイしか答えられんではないか」
「素より」
「ぬぐぐ……気狂いなのじゃ……分かったのじゃ。では何をすればいいのじゃ?」
「やれやれ、同じ事は二度言いません。メッセージを飛ばしておきます。それを見てその都度思い出して下さい。次に何をすればいいのかもメッセージで送りますので。では私はこの後大事な用事がありますので、また」
「うむ。『また』と言われても、わたしゃの方はもう二度と会いたくないのじゃが?」
黒猫は話が済んで一安心したのか、NNがその場から転送されて消えるのを眺めながら考え込む姿勢になって思考する。
おそらく黒猫は、何故NNの転送がポータルでもないこの場所で行えたのかを考えて―――
「…………今日わたしゃはご飯食べたかの?」
なかった。
凄い優しいギルマスを目指したら、糞鬼畜なギルマスになっちゃった。まぁいいや。
それは置いといて、話の流れでいずれ説明に出しますが、ギルドではギルマスの次にサブマスと呼ばれる副総理大臣みたいなポジションがあり、黒猫のギルド【夢完進】ではサブマスの事を『副マス』『副監』『副団』と3つに分けて呼んでます。
つまり【夢完進】のサブマスは3人です。はい。