その77 あの時の話。『緑の聖母の始祖様』
時は進んで、面会時間が来たので面会を終えたコノルは、レウガルとライコを連れて1界のお店で休憩していた。
「あいつもアホだよな。コノルもいんのに、いきなり相談もなくあんな事するかね?」
「あれが猫さんなんです。この前だって、船沈没させたし」
「ええ!?猫ちゃんワイルドぉー!何でそんな事をしたの?」
「多分気まぐれ」
「気まぐれで船沈没させるとか笑えねーな。ははは。丁度いいや。あの時の笑い話を聞かせてやるよ。ほらお前らがデビルクラーケンの討伐に失敗してシノ影に詰め寄られてたっつー時の事」
「何それー ♪ 聞きたい聞きたい ♪ 」
興味津々でかぶりつく様に机から身を乗り出すライコ。
「お前関係ねーだろ。まぁそう焦んなって聞かせてやるから。確かお前らが消えたのは―――」
得意気な顔をしながらレウガルはあの時の事を話し出す。
―――
―――コノルと黒猫が黙って逃げた後の話―――
「ぶっ……ダッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!ハヤテの負けイベに続いてこれ!!流石コノルちゃんに黒猫ちゃん!!いつも通り予想の斜め上だわ!!ダヒャヒャヒャヒャ!!」
「……お前……爆笑しているが、声も掛けられずに置いていかれてる事実には気付いているのか?」
爆笑する一虎に、ハヤテはシノ影の襟を掴んだまま呆れ顔を向ける。
そんな2人に不愉快そうな顔を向けつつ、シノ影は自分の襟を掴んでいるハヤテの手を振りほどいて、黒猫とコノルの後を追おうとする。
「と、待てよ。話はまだ途中だろぉ?」
肩を掴んで一虎はシノ影を引き止める。
「貴様らと話す時間などない。さっさと失せろ。でなければ、例え貴様らであろうと斬り捨てるぞ」
シノ影は怒りの形相を顕にしながら腰の刀に手を添える。
「おっといいのか?こっちには特異持ちの超人と、敏腕攻略メンバーの俺様がいるんだぜ?雑魚が何匹いようと負ける気はしねーなあ?」
「雑魚とは言ってくれる。やってみれば分かる事だ……貴様らが口火を切った事、後悔させてやろう」
シノ影と一虎が武器を構えぶつかろうとした、まさにその時、シノ影の後ろからある人物が声を掛けてくる
「お待ちなさい。と始祖様は仰っております」
「……」
2人の喧嘩を止めに来たのは、狐の面を頭に掛け、着物を羽織った、身の丈200cmはあるかと思われる高身長の女性だった。
その後ろには白いレーベで顔を隠し、白い死装束の様な姿をした長い翠髪の小さな女の子がいた。
その翠髪の女の子を見た瞬間シノ影は、急いで頭を下げ始める。
「これは!?し、始祖様!?お見苦しいところを!まさかこの様な場にいるとは!如何なさいましたか!」
さっきまでの緊迫した空気が一転。シノ影は仰々しい様子で翠髪の女の子に顔を下に向けた状態で話す。
「……」
しかし、翠髪の女の子は返事をせず、側近である狐の面の女性を見る。
すると狐の面の女性は、まるでその翠髪の女の子から話を聞いたかの如く頷くと、翠髪の女の子の言葉を代弁する。
「ギルドの仲間達が危機に瀕したと聞き訪れました。この騒ぎは何事か、頭を上げ答えなさいシノ影。と始祖様は仰っています」
「あ、これは、その……」
シノ影は言葉に詰まったのか、頭を下げながら後込む。
その声には焦りが窺えた。