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その75 面会&面会


入監して直ぐに黒猫は例の面会室でコノルと面会していた。コノルの横にはレウガルも同席している。


「刑は確定なの。でも罰を軽くする為に私頑張るから」


「のじゃ」


「安心しろよ。昔の誼で俺も手伝ってやってるからよ。俺のギルドの連中も極力お前の肩を持つし、【緑の聖母】の奴等も、シノ影の件の借りを返すって裏でお前を擁護する様に手を回してるし、何も問題ねーよ」


「のじゃ」


2人は黒猫を全力でサポートする事を伝えると、黒猫は真顔で返事する。


「……こいつ絶対意味分かってないだろ」


「……はい」


申し訳なさそうにコノルはレウガルに謝る。


「そんな事より……ここではご飯が出ぬのは……ほんとなのかの?」


「「…………」」


当人の危機感の無さに呆れ返る2人。


そっちか……あの入監の時の放心状態はそれのせいか……


コノルは呆れを通り越した何かを感じ、言葉が出ない。


「「「………………」」」


まるで噛み合わない3人の間に、沈黙が川の(せせらぎ)の様に流れる。



………………



…………タッタッタッタッタッバンッ!



「満を持して私参上!珍獣ちゃん ♪ はい ♪ 差し入れー ♪ 」


すると、その沈黙を打ち破るかのように、ライコが突然面会室のドアを蹴り開けて、果物が大量に入った編みかごを両手に持ちながら現れる。


驚いた顔で3人はライコに視線を向けていた。


「……誰だよコイツ?」


謎の空気に耐え兼ねてレウガルが切り出す。


「はっ!ビックリした……あれ?貴方は確か……151界の広場でPvPをしてた子?」


コノルは広場を遠目から見ていた時に手を振ってきた女の子を思い出す。


「ライコぉ、ここで何をしとるのじゃ?」


「えへへー ♪ 珍獣ちゃんおひさー ♪ &こんにちはー ♪ はっじめまして ♪ 珍獣ちゃんの親友のライコでーす ♪ よっろしくぅー ♪ 面会してるって聞いて飛んできたよ珍獣ちゃん ♪ あれ?これどうやって渡すの?」


意気揚々と元気に自己紹介するライコは果物を渡すスペースを探す。


今の自分達との温度差が激し過ぎて、その勢いにコノルとレウガルは気圧される。


「ライコって……あっ!今回初参加の人!って、猫さん知り合いだったの!?」


「のじゃ」コクン


「何で教えてくれないのよおおお……」ギリギリギリ……


コノルは怒りに手を震わせながら目の前の透明な壁に爪を立てる。


「あはは。ごめんね。本当は直ぐに合流したかったんだけど、怪我をして歩けなくなってた子供がレイドボスに襲われてて倒してたら参加が遅くなっちゃったんだ」


「何かさらっと凄い事言ってるけど、大丈夫ですよ。何とかなりましたし。って、え?遅くなったって、もしかして不参加じゃなく、あの場にいたんですか?」


「一応珍獣ちゃんが相手にしていたワンちゃんと戦ってた」


「えええええ!?じゃあシャドーと1人で戦ってたって人ってライコさんだったの!?」


驚きの連続にコノルは堪らず声を上げる。


「というかさっきから誰だよ珍獣ちゃん。こいつの事か?」


「そだよー ♪ 」


レウガルは黒猫の顔を指差すと、ライコは笑顔でコクコクと頷く。


「呼び方が独特過ぎるだろ。まぁ間違っちゃいないが。頭は獣以下だがな」


「……馬鹿にされた気がしたのじゃ」


レウガルのジト目に黒猫は反応してジト目をし返す。


「おっ、今回は猫さんの馬鹿にされたアンテナ正常に機能してるね」


珍しく正しい反応にコノルは手を叩いて皮肉を言う。


「ぬはは、照れるのじゃ」


しかし皮肉を褒め言葉と受け取る黒猫。


「壊れてるよ」

「やっぱりダメか……」

「えぇ……珍獣ちゃん……?」


コノルから褒めらたと勘違いして嬉しそうにする黒猫に3人は呆れ顔を向ける。


「それより紹介するのじゃ。ライコなのじゃ」


「知ってるよ。今さっき自己紹介してただろ。お前は目の前で何が起きたと思ってたんだよ?」


「たはー ♪ どこか抜けてる珍獣ちゃん可愛い ♪ 驚くべき進化だね ♪ 」


「いや退化だろ」


ライコの言葉にすかさずレウガルがツッコミを入れる。


「可愛いって……え?ライコさんって……あっち系なの?」


ライコの様子からコノルはもしかしたらライコは女の子が好きな女の子なのかな?と思いながら聞いてみる。


「ん?何?アッチケイ?」


しかしライコには微塵もそんなつもりはなく、コノルの真意を拾えなかった。


「天然系か。猫さんと気が合いそうですね。そういえば自己紹介がまだでした。はじめまして、私は猫さんと同じギルドメンバーのコノルです」


類は友を呼ぶとも言うし、ライコさんも猫さんみたいなタイプなのかな?と、コノルは自己紹介をしながら勝手に自分の中でライコを黒猫と同族なんだろうなぁと、下らない事を考えていた。


「やっぱり君がそうなんだね。珍獣ちゃんから話は聞いてるよ ♪ よろしくっ ♪ あ、それより私に敬語はいらないよー ♪ タメで気楽に話し掛けてくれたら嬉しいな ♪ あとこの差し入れはどう渡せばいいの?」


ライコはウィンクしながらコノルの敬語混じりの話し方はいらない事を伝えて、果物の入った編みかごを持ち上げる。


「渡せねーよ。監獄と病院間違えてんのか?」


「え〜、食べ物くらい渡して良いじゃんか〜ケチ〜」


「俺に言うな」


ブーブーと不満を零してくるライコに、レウガルは鬱陶しそうな顔を向ける。


「まぁいいや。私が食べちゃおー ♪ それよりピンクちゃんの名前は?」シャリッ!


ライコは果物を齧りながらレウガルの名前を聞く。


そんなライコを、透明な壁越しに情けない顔をしながら羨ましそうに指を咥えて見る黒猫。お腹が空いているのに目の前で果物を食べるライコがさぞ羨ましいのだろう。


その事にコノルとレウガルは気が付くと、ライコに向かって呆気に取られた目を向ける。


「……お前結構天然でエグイな。まぁ自業自得だが。ああ、俺の名前だったな。俺は情報屋レウガルってんだ。何か欲しい情報があれば売ってやるぜ。安かねーけど」


「わー!情報屋の知り合いが出来るなんて初めてだよ!よろしくねレウガルちゃん ♪ アダ名はピンクちゃんでいい?」


「良くねー。ちゃんを付けんな。しかもピンクちゃんって、名前フル無視してたら自己紹介した意味ねーじゃねーか。レウガルさんって呼べ。これでも成人だぞ」


腕を組んでドヤ顔で言うレウガル。


「うはっ!?事実は小説より奇なりだね!ピンクちゃん!」


しかしライコに呼び方を改める様子は微塵も無かった。


「……お前本当に天然でえげつないな。このバカ猫並に話聞かねーじゃねーか」


黒猫に横目を向けながら、レウガルはライコの話を聞かない破天荒振りに畏怖するのだった。

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