その72 182界が終わって目覚めた時
――時は遡り、黒猫の回想シーン――
182界を攻略した時の黒猫は気絶していたのか仰向けに倒れていた。
その横にはコノルがいた。膝枕で黒猫を優しく看病するコノル。その目は涙で充血していたのか赤かった。
黒猫はそんなコノルにいつもと変わらない調子で喋る。
「おはようなのじゃ」
「……バカなの?……おはよう猫さん」
涙声なのに嬉しそうな顔でコノルは黒猫に挨拶を返す。
黒猫は上半身を起こすと、周りを見渡す。182界で最初に集まった広場だ。
「起きたのかい?」
その黒猫にライトが心配そうに近付いてくる。
「ライトかの。起きたのじゃ。ここは何処じゃ?」
「ここは182界の広場よ。ボスを倒しに来たの。もう終わったわ猫さん。今は解散して、ここに残ってるのは数人だけよ。猫さんは森の中で倒れてたの」
コノルが事のあらましを簡潔に説明してくれる。
「そうなのじゃ?まぁいいのじゃ。それより、お腹空いたのじゃ。帰ってご飯なのじゃ!」
涎を垂らしながら両手を上げてコノルに言う黒猫。
「気絶から目覚めたばかりなのに元気だな」
「うむー!」
微笑むライトの言葉に黒猫は満面の笑みで返す。
そして2人は151界へ帰る為に必要な素材をライトから受け取ると2人一緒に立ち上がる。
その時、1人の女性が近付いてくる。
「漸く目覚めたのね。ちょっと待ちなさいよ!」
その女性は、シャドー隊として黒猫に振り回されたマーチだった。
2人が帰ろうとするのをマーチが引き止める。その顔は顰めっ面で甚だ不愉快だと伝えるかの様な形相だった。
「やめろマーチ。もう話が付いただろう」
そんな不満あり気なマーチの前に立ち塞がり、ライトは諭す様に引き止める。
「でもこいつのせいで皆が危険に!個人的に一言言わなきゃ気が済まないわ!」
「目覚めたばかりなんだぞ。それに彼の処分は次のギルド会議で決めるって話になったろ。君がここで不満をぶつける必要はない。あるなら、それを御せなかった俺に文句を言え」
「そんなの!……うぅ……何よ……ライトは何も悪くないじゃない……なんでそんな奴庇うのよ……ほんとに……ソイツ……嫌い」
少し寂しそうにしながらマーチはライトの言葉で引き下がり、渋々自分がいた方へと帰っていった。
これで一件落着……かと思いきや。
「あのぉ……ギルド会議で処分を決めるって……何?」
コノルはライトの言葉から出た処分と言うワードに、タダならぬ不安を感じるのだった。