その71 2章プロローグ
――これはNNとのやり取りから数日後の話――
暗い真夜中で、燃え盛る屋敷を見ながら、黒いフードに身を包んでいる黒猫は呆然としていた。
ドンッ!
ドスン……
のじゃぁ……
誰かに背中を勢い良く叩かれ黒猫はなすがままに力無く前に倒れる。
背中を叩いてきたのは同じく黒いフードに身を包んだ男。そいつは黒猫を蔑む様な目を向けながら口を開く。
「任務完了だ。倒れてねーでさっさと盗品を寄越せ」
黒猫はその男に黒い紋章の付いた紫色の袋を渡す。
「チッ。少ねーな。これだから新入りは。まぁいい。さっさとずらかるぞ」
そう言って男は祠型のポータルへと走って黒猫を置いて消える。
「……の、のじゃぁ」
体中傷だらけになりながら、黒猫もヨタヨタと走って祠型ポータルへと向かい、素材とゴルドを払って目的の場所へと移動しようとする。
すると後ろから懐中電灯みたいな物で照らされる。
「見つけたわよ!貴方が屋敷に火を放った犯人ね!」
そこにはコノルがいた。黒猫はフードを取り、コノルの方に嬉しそうな顔を向けようとするが、言い渡された任務を思い出すと黒猫はバッと顔を隠す。
しかし、その一瞬でコノルは目の前の人物が黒猫だと気が付く。
「え!?猫さん!?なんで!?」
コノルの驚く顔を見ながら、黒猫は悲しそうな顔でその場から消えた。
――――
そして数週間後
コンクリートで覆われた暗い部屋。周りには謎の装置が立ち並び、中央には血で書かれたような赤い魔法陣が描かれていた。
その部屋で黒猫はライトと対面し話をしていた。
「お主は正しく、わたしゃは間違っておる」
「覚悟は……出来ているって事か」カチャ……
ライトは黒猫の首筋に金色の剣を向ける。
「違う。覚悟ではない。道じゃ」
「それは……どういう?」
「お主が正しき道を歩むならば、わたしゃは間違った道を歩み続ける。ただ、それだけじゃ」
黒猫は片手を横に広げ、口元に笑みを浮かべると、手から赤いクリスタルのアイテムを出現させる。
アイテム欄を開かずにアイテムを出現させた?いったいどうやって?
ライトがその奇妙な違和感を感じ取ると、黒猫はそのアイテムを握り潰す。
グググ……バキンッ!……シュー……
赤いクリスタルを壊した時、砂のような赤い光の粒が宙へと消える。
「そう……私は間違い続ける」
そのアイテムを使用した途端、黒猫の気配が変わる。
「コノルの為に」
口元に薄く笑みを浮かばせ、黒猫は全てを思い出す。
そう
全てを
物語はここに集約する為に動き出す。