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仮想世界は楽しむ所なのじゃ  作者: 灰色野良猫
チュートリアル
7/228

その7 情報屋レウガル

「レウガルちゃん!」


 コノルは手を振りながらレウガルと呼ばれる桃色の髪をした褐色の女の子に近付く。


 身長140cm位のその女の子は、コノルに対してムッとしかめっ面を見せる。


()()!レウガル()()だ!一応これでも成人してんだぞ!お前らより年上だ!敬えよ!」


 どうやら合法ロリのようだ。


 紹介しよう

 彼女はソロ攻略専門のギルド

【明け待つ旅人】の『情報屋レウガル』

 彼女はソロ攻略を中心に活躍するプレイヤーで、この世界の事を最新界の攻略組よりも熟知している情報屋である。

 何か情報が欲しい時、彼女を尋ねれば知りたい情報が必ず得られると噂される位、腕の立つ人物だ。

 見た目は身体の成長も止まっているのか小さく発育も良くないため、よく子供だと誤解される。


 そんなレウガルは頭を片手で乱雑に掻きながらながら年長者への態度を説く。


「どいつもこいつも、ちゃんちゃんちゃん……しまいにゃ二桁いかない子供にまで呼ばれるし……年上って概念を軽んじ過ぎてるぞ最近のガキ共はよ」


「あはは、ごめんごめんレウガル()()()。気を付けるよ」


 しかしコノルは小さな子をあやすように屈んでレウガルと同じ目線で話しながら、ちゃん付けをやめない。


「ふざけてるのか?全然直す気ねぇじゃねぇか」


 グルル…とチワワが怒ったような顔をしながらレウガルはコノルを睨み付ける。


「ジョークジョーク。ジャパニーズジョークだよレウガルさん。ごめんなさい。レウガルさんがあまりにも可愛くてついついつい……」


 コノルは頭を下げる。そして頭を上げるとレウガルから徐々に目を剃らして遠くを見る。


 その内心は……


(きゃわわぁ……レウガルちゃん相変わらずヌイグルミみたいだよぉ……持ち帰りたいよぉ……)


 煩悩にまみれていた。


「分かればいいんだ。分かれば……何か引っ掛かるが……まぁいい。俺は大人だからな」


 その発言が既に大人らしくはないが。


 そんなコノルの態度に疑問を覚えながらもレウガルは腕を組んでドヤ顔を晒す。


「おお!クララではないか!何しとるのじゃ?」


 そんな二人の横から黒猫がレウガルの名前を間違えながら寄ってくる。


 一文字も合うことない名前を呼びながら。


「………………コイツに至っては問題外だな。訂正とか敬うとかそんなレベルを越えてるぜ……誰だクララって?お前を車椅子生活にしてやろうか?」


 某アニメに出てくる車椅子の少女を頭に浮かべながらレウガルは黒猫を呆れ顔で見る。


「歩かなくて済むのじゃな」


「ポジティブか……お前随分久々だけど最初に会った時とは完全に別人じゃねぇか。噂では聞いてたが、何でそんなポンコツになってるんだよ?」


「褒めても何もないのじゃ。あっ木の棒ならあるのじゃ」


「いらねぇよ。それに褒めてもねぇ。コノル、お前コイツとつるみ続けたら、ホームレスと何ら変わらない生活から抜け出せねぇぞ?」


 いつの間にか蝶々を眺めてレウガルの話を聞き流す態勢に入っている黒猫の間抜け面を指差しながらレウガルは言う。


 しかし、流石情報屋と言った所か。どうやらレウガルはコノルと黒猫の現在の生活状態を知っていた。


 ゲーム内なのに


 家無し

 宿無理

 野宿だけ


 それが二人の現状だ。


「ホームレスって……確かにその日暮らしだけど、私は好きで猫さんと一緒にいるの。だからなぁーんにも苦ではありませんよー」ナデナデ


 コノルは幼稚園児をあやすような話し方でレウガルの頭を撫でる。


「やめろ。頭を撫でるな。まぁコノルがいいならいいけどよ。コイツに同情して一緒にいるなら――


「やめて」


 レウガルの話を遮る様に。さっきまでとは打って変わって冷たい声音でコノルはレウガルに言う。


「…………そうだな。悪かった。詮索し過ぎた。俺の悪い癖だ。気を悪くしないでくれ。んじゃ俺はこれで」


 そう言うとレウガルはコノル達の横を通って森へと入ろうとする。


「え?もう行っちゃうの?」


 コノルは少し残念そうにレウガルに声を掛ける。


「あぁ、こう見えて俺も忙しくてな。今日181界をライトのチームがクリアしたんだ。すげーよな。んで新界に突入出来るようになったから明日ギルド同士の作戦会議が決まったんだ。それまで俺はクリアされてないサブクエストを急いで消化しとこうと思ってな。じゃあな」


 背を向けながら手を振りレウガルは森へと消えていった。


「忙しい奴じゃな」


 黒猫は森へと消えたレウガルの方向を目を細めて眺める。


「なんだか悪い事しちゃった気分……」


 一方コノルはさっきのレウガルへの態度は悪かったと思いながら下を向いていた。


「でも……やっぱり嫌だな……」


「何が嫌なのじゃ?」


 黒猫は首を傾げながら聞いてくる。


「私……別に猫さんといるのは全然苦じゃないよ。むしろ毎日が楽しいもん。でも……あんな風に、私が猫さんに同情して一緒にいると思われてるのは……なんだか……悔しくて悲しいの……」


 コノルは心に秘めている声を吐露する。


「難しい話は分からぬのじゃ。楽しいなら楽しいでいいのじゃあ~。それよりコノルよ。お腹減ったのじゃ。今から晩御飯にするのじゃ。何にするかの?」


 コノルの深刻な悩みなど露知れず、黒猫はまだ3時だと言うのに晩御飯の話をし始める。


「……おじいちゃん。さっき食べたでしょ?」


「誰がおじいちゃんじゃ!?まだ食べておらぬのじゃ!!お腹空いたお腹空いたお腹空いたのじゃああああ!」


 黒猫は大声で空腹に絶えれず喚き散らす。


「ああもう煩い!レウガルちゃんがドロップ素材放置してくれて転移素材集まったから4界の露店居酒屋『蟻地獄』で軽めの御飯にしよう!それでいいわね?晩御飯はまだ先よ」


「オッケーなのじゃ!久々の蟻地獄じゃの!嬉しいのじゃ~」


 何を想像してるのか。黒猫は涎を滴しながら笑顔になる。


「ふふっ」


 そんな黒猫を見てると深く考えるのがバカらしくなり、コノルは吹っ切れたような笑みを黒猫へと返す。


 そしてコノルと黒猫は直ぐ4界へと移動したのであった

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