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仮想世界は楽しむ所なのじゃ  作者: 灰色野良猫
チュートリアル
66/231

その66 絶望からの希望を配るコノル

「なんだ……と?」


 地面に伏せる仲間達の頭上には600のカウントが刻まれる。


 目の前には萎んだ白いモンスターが。


 さっきまで風船サイズだったのが、今は萎んだ枯れ木のように空中を漂っていた。しかし、そのモンスターは少しずつだが元に戻ろうと膨らんできている。


「待て……こんな敵この界にいなかった筈だ……まさか!?」


 ライトは急いで【エネミーアナリシス】と呼ばれる巻き物型のアイテムを使う。


 これは雑魚敵の情報を見る為の物で、ボスやレイドボス等のボス級モンスターに使っても情報は得られない。


 そのアイテムを使って、ライトは自分の思った通りの最悪の答えを知る。


 ……情報が……得られない……やっぱり……


 そう、それはつまり、目の前の白い風船型のモンスターはボス級モンスターだと言う事。この182界のボスはフェンリルだ。という事は、答えは1つ。


 レイドボス……黒猫さんの件といい、なんて間の悪い。


 ライトは歯軋りをする。


 レイドボスは界ボス以上の脅威だ。HPこそ界ボスより低いが、それ以外は全て脅威。


 外傷ダメージで一撃死。

 数発、もしくは一撃でHPを持っていかれる攻撃力。

 並の攻撃ならビクともしない耐久性能。

 対策が難しい突発的出現と未知の性能。


 会ったら逃げるが常識とされているレイドボス。以前コノル達が4界でその脅威を味わったミノタウロスと同じモンスターが目の前にいた。


 界攻略中に出現した場合、人員が足りていれば引き付けて界攻略を続行。いないなら必ず界攻略を断念して撤退。


 しかしそれは被害が出る前の話。


 ライト以外が倒れている今ここで撤退は悪手。後で仲間を引き連れて、倒れている仲間の蘇生をしようにも倒れた人数が多い上に近くにフェンリルと謎の風船型レイドボス。近付いて蘇生させようにも手が足りない。


 まさか、詰み、なのか?


 ライトの顔が真っ青になる。


 こんな急に精鋭が倒されるなんて、このままじゃ今後の界攻略も出来なくなって―――


「――トさん!ライトさん!私が蘇生します!ライトさんは敵を惹き付けて下さい!」


 絶望の淵に立たされていたライトの肩を叩いて正気に戻したのは、遊撃隊としてフェンリルとの戦闘を遠くからサポートしていたコノルだった。


 コノルは黒猫用に持っていた【蘇生神札】を素早く倒れた人に使い、蘇生させていく。


「な、なんだあのアイテムは?……いや、今はそんな事気にする必要はない。ありがとうコノルさん。敵は俺に任せてくれ!」


「わ、私の名前を知ってるの!?こんな有名人に名前を覚えてもらってるなんて……うへへぇ」


 コノルはニヤケ顔で嬉しそうに次々と蘇生していく。そして復活した者も近くの仲間を蘇生する。


「お、おお!ありがとう!」

「遊撃隊って役に立つのね!」

「助かった!」

「君!いい活躍だ!」


 蘇生された者は皆コノルに賛辞を贈る。


 それを横目で見ながらライトは口元に笑みを浮かべると目の前に立ちはだかる、フェンリルと風船型レイドボスに向かって真っ直ぐ目を向ける。


「もう容赦はしない……本気で行くぞ!」


 蒼白い光に包まれて無敵状態のライトはまず風船型レイドボスを攻撃する。


 また爆発されても敵わない。復活した皆は復活したとしてもHPがレッドゲージだ。回復に時間を割くから直ぐに戦線に復帰は出来ない。それまでに風船型レイドボスだけでも何とかしないと二の舞だ。


 ライトはひたすら風船型レイドボスを攻撃する。そして倒れてる人の近くからなるべく遠ざける。幸いにも爆発範囲はそれ程大きくない。爆発の威力は桁違いだが、反撃の様子も無く、離す事は容易だった。


「はああああああ!!」


 ザシュザシュザシュッ!


 13発の斬撃全て命中させるとライトは光の腕による四刀流で他の剣技を発動する。


「【天文】発動!消えろおおおおおおお!」


『【天文】 装備武器×5回強力な斬撃攻撃を行う。1回攻撃を当てる度に最大HPの3%を消費する。 RT1秒』


 この装備武器は特異スキル【障害神手】により増えた武器もカウントされるので20回の斬撃を繰り出せる他、ライトはこの攻撃スキルを使用する事で、HPを半分以下に減らし、特異スキル【英雄】の力を最大限まで引き出す事が可能なのである。


 風船型レイドボスは見た目が弱そうだが、仮にもレイドボス。耐久性能は抜群に高いのだが、ライトの攻撃力はその耐久性能を難無く貫く程の攻撃力となっていた。


 容赦のない連撃を風船型レイドボスに当てていたが、フェンリルがそれを黙って見ている訳は無かった。


 フェンリルは口にサッカーボール台の黒い球を形成し、黒い棘による攻撃をライトに向かって放とうとする。


 だが、ライトは【天文】による攻撃を全て当てSGが溜まり次第オリジナル攻撃スキル【十三星斬】を発動し、無敵状態になる。


 放たれた黒い棘は全てライトに当たるが、ノーダメージ。


 ライトはフェンリルの攻撃をものともせず、目の前の風船型レイドボスだけを倒そうとする。


 風船型レイドボスのHPはライトの怒濤の攻撃により、残り1/4までになっていた。


 だが【天文】はHP調整の為に入れている攻撃スキルなので、もう出せない、次出せばHPがレッドゲージになってしまい、逆にピンチになってしまうからだ。


 別の攻撃スキルで攻撃するライト。


「【一閃】!」


『【一閃】 薙ぎ払いによる斬撃攻撃。RT1秒』


 ザシュザシュザシュザシュ!


 剣による薙ぎ払いの斬撃を四つの腕で同時に出して、四発の斬撃を浴びせる。


「【スクウェアスラッシュバーン】!」


『【スクウェアスラッシュバーン】 炎を纏った横斬りの斬撃を自身を中心とした4方向に放つ。RT4秒』


 ボウ!ズバズバズバズバ!


 ライトの4つ腕により、4つ重なった広範囲の炎の斬撃が、風船型レイドボスとフェンリルに当たる。


 風船型レイドボスには効果がイマイチのようだったが、フェンリルには効果抜群で、フェンリルはそれで一旦動きが止まる。


 ライトは攻撃スキルによるRT4秒の間に息を整えて、再び風船型レイドボスを倒そうとするが、風船型レイドボスはいつの間にか元の大きさに膨らみ、再び爆発しようとしていた。

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