その55 嫌われ者のお二人さん
長い長い1章が終わりそう(૭ ᐕ)૭ヤッタゼ
関係ないけど、
この顔文字がムカつかない?→(૭ ᐕ)૭
「もう……盗んだのバレたら何されるか……取り敢えずこの盗品は私が持っておくわ。ん?これは……煙玉かぁ……これは猫さんが持ってなさい。いざと言う時に使って」
黒猫へのお仕置を済ませると、コノルはナチュラルに盗んだアイテムを使うように指示を出す。
黒猫のせいでコノルも十二分に倫理観がバグっていた。
「分かったのじゃ。ぬはは」
一方、頭に大きな瘤を作り、コノルに叩かれ続けてヒリヒリしている自分のお尻を優しく撫でながら、黒猫はご機嫌な様子で白い野球ボール並の大きさをした煙玉をコノルから渡されると、それを何個もポケットへとねじ込む。
これでまったく準備の必要性がない猫さんの準備は完了。あとはこれを直して私もOK。
地面に並べている地雷を、アイテム欄の取り出し易い位置に配置して片付け、準備が出来ると立ち上がって合図を待つ。
作戦の流れはこうだ。
本隊が界ボスと戦闘を始めると合図の閃光弾が上空に打ち上がる。
それを確認したら私達遊撃隊(2人)はA地点から始めてB地点→C地点→A地点……と本隊から10分置きに出る合図を遠目から確認し次第場所を移動して指定の場所に地雷の罠を仕掛ける。後は本隊がその場に誘導して私達が仕掛けた罠を使いながら界ボスを攻撃する。
何故10分置きかって?仕掛ける罠の有効時間が10分だから。
この方法なら絶対危ない目には合わない。
簡単な作業だ。今度は船の時みたく失敗はしない筈。というか失敗は絶対に許されない。
グッと拳を握り締めて気合いを入れるコノル。
すると後ろから女性が声を掛けてくる。
「ちょっと、貴方達本当に大丈夫なんですか?一虎が外れたと聞きましたが?」
そこには神官の様な姿をした女性がいた。
「えっと、貴方は?」
唐突に声を掛けてくる女性にコノルは警戒心を持つ。
また猫さん関係か、それとも私か?もしくは両方?何か気に触る事でもしちゃったか?まさか盗品の持ち主!?
様々な憶測が脳内を駆け巡る中、相手の女性はコノルの問いかけに答える様に自己紹介をする。
「私は【希望の星】のメンバーのマーチと言います」
「あ、私は【夢完進】のコノ」
「知っています。自己紹介はいいです。それより何を企んでいるのですか?」
はい分かる。もう分かる。この質問だけで全て把握。敵意剥き出しで良好な関係は築けないタイプ来た。しかも何企んでるだって?気に触る事でも盗品の事でも無いとか、ただ私達が気に入らないだけの人だわ。モンスター並に相手にしたくないタイプ。略してモンスタータイプ。
コノルはマーチの言葉を心理的に解釈すると嫌悪感を抱く。
「何を企んでいるとは?」
「貴方達の蛮行は多くの方から耳にします。大方、今度は一虎を利用して界攻略に参加し、名を上げたいって所でしょうか?」
「そんな事思っ」
「結構です。ただでさえ皆新しい人を迎えるのが気に入らないのに、来たのが貴方達とは……皆言っていますよ?邪魔だと」
マーチはコノルの言葉を遮り聞く耳を持たない上に、悪意ある言い回しを使ってくる。
チクチク刺さる言葉に、コノルはとうとう堪忍袋の緒が切れる。
「そこまで言わなくてもいいじゃないですか!急に何なんですか貴方は!失礼にも程があります!」
「なんじゃこやつ!言いたい放題言いおって!コノル!こやつ何と言っておったのじゃ?」
「猫さんは黙ってて!」
「のじゃぁ……」
コノルは強い口調で黒猫を制止すると、黒猫はションボリしながら後ろに下がる。
「ふん、リリスの件といい、今回の界攻略の参加といい、ハッキリ言います。私は貴女方が嫌いです」
「リリスって誰よ?勝手に嫌うのはご自由ですけど、理由も分からないのに一方的に初対面の人に言いたい放題言われて気分が良いと思います?貴女の性格が悪い事は伝わったので、そういう事は心の内に秘めといて下さい。出されても不愉快なだけです」
「なんですって!よくもそんな……あんた達が!リリねぇを!」
「ストップだマーチ」
コノルの挑発でマーチがヒートアップし始めた段階で、闘技場にいそうな戦士の見た目をした男と、ガタイのゴツイ大男がコノルとマーチの間に割り込み喧嘩を仲裁しにくる。
「清太……」
「言いたい事は分かるし不満があるのも分かるが、我慢しろ。界攻略最中だぞ」
清太はマーチに言い聞かせように強い口調で言うと、マーチは小さな声で分かったとだけ言って俯き、コノルとの言い合いを引き下がる。
「清太はマーチと所定の位置に行け。お前らも、もうあっちに行け。ここはシャドー隊の担当場所だ。遊撃隊だかなんだか知らないが邪魔するなら即帰れ」
コノルの方を止めにきた体の大きい大男は野太い声で、コノルと黒猫を見下ろして、シッシッと手を振って邪険にしながら追い払おうとする。
「……なんなのよ……行こう猫さん」
ムスッとしながらコノルは本隊の合図が見えるであろう別の場所へと移動する。
正直言ってなんでこんなに攻略組の人達に嫌われているのか分からない。身に覚えがないのもそうだが、あまりにも扱いが……あんまりではないか?
優遇なんかされないのは当然だとしても、態度が酷過ぎる。確かに2人には良からぬ噂や盗っ人等という悪名はある。が、ここにいる人達に直接的な影響はない。それどころか噂でしかないのに皆些か反応が過剰過ぎやしないか。
知らない人の名前が出たり、変な因縁を吹っ掛けられたり、界攻略の人達って性格が悪い人達ばかりなの?
コノルは憤慨しながら、振り向く事なく強く地面を踏み締めて歩いていった。
「……お主ら、コノルをあまり虐めるななのじゃ。後悔させるぞ?」
「ふん。雑魚が喚いたところで何も思わぬ。早くいけ。ただでさえ血死涼とかいうお前らのギルドメンバーに苛苛してんだ。舐めてるとお前を血死涼の代わりに捻り潰すぞチビ」
大男は手を握り締めて、捻り潰す様なジェスチャーで黒猫を威嚇する。
「ふん!何が捻り潰すじゃ!バーカバーカアホ〜なのじゃ〜!脳筋ハゲ〜!アッカンベ〜!」
そんな威嚇を受けた黒猫は舌を出しながら踵を返して、コノルに付いていくのだった
皆から嫌われている理由は様々だけど、主な理由はリリスって人のせい。無論、出るのは有り得ないくらい先だから覚えなくていいよ。