その53 寂しかったんだから!
ライトと別れた後、一虎に連れられて黒猫は無事コノルと合流した。
合流した途端、黒猫はコノルに頭を殴られる。
ゴツン!
しかしいつもより痛くない。不思議に思い黒猫はコノルの顔を見る。
目に映るのは何も言わずに泣きそうな顔のコノル。その顔を見るや否や黒猫はコノルの肩に手を置く。
「悪かったのじゃ。反省!」
「……ぐすん……ヨシッ!」
どうやら許してくれた様だ。
そんなコノルが泣いている事に動揺していた一虎は、一連の謎のやり取りを見て、それで泣き止むコノルと黒猫に、困惑を覚える。
……ナニコレ?
するとコノルは涙を拭うと、今度は一虎に近付いてきて両肩に手を置く。
「へ?」
「ふんっ!」
ドゴッ!
コノルは勢い良く一虎の股間に膝蹴りを食らわす。
「ぐほっ!?」
突然の暴力に倒れる一虎は痛みに猛絶しながら地面を転がる。
「気分が晴れたわ」
「良かったのじゃ」
「ゼェゼェ……なんも良くねー……何でいきなり膝蹴りかまされたの俺?」
理由が分からない。涙目になりながらあそこを押さえて嘆く一虎。
それを見てコノルは晴れ晴れとした表情で地面に転がる一虎を見下す。
「放置するからよ。それより猫さんはどこ行ってたの?」
一虎を放置してコノルは黒猫に顔を向ける。
「ぬはは。ウケる」
「ウケるな。答えろ。じゃないとご飯抜き」
「なぬ!?―――に会っていたのじゃ」
「誰だって?」
「―――に会っていたのじゃ!」
黒猫が何度その名前を呼ぼうとしても、名前を言った瞬間ノイズが走って上手く聞き取れない。
「いや、『のじゃ!』は煩いのに、何で名前はハッキリ言わないのよ?まぁいいや。猫さんの知り合いなら私も会っておきたいかな?何処にいるのその人」
「あっちじゃ。それかあっちかもじゃ。もしかしたら上かの?」
「どこだよ?会わせたくないって事ね。分かったわ」
「違うのじゃが」
「ご飯抜き」
「違うのじゃが!?ご飯抜きは勘弁なのじゃ!?このりゅううう!?」
あまりに理不尽だと黒猫は泣いてコノルに縋り付く。
「ああもう鬱陶しい!分かったから!冗談だから離れなさい!」
その言葉を聞いた途端、嬉しそうにコノルから離れる黒猫。
ヤレヤレと一息付いていると、一虎が起き上がってコノル達に近付いてくる。
「泣きそう……女の子にここまでボコボコにされたのは初めてだわ。まぁ放置したのは悪かったよ。すぐ戻るつもりだったんだけどな。と、そろそろ雑魚殲滅隊以外全員集合の時間だ。あっちに集まってくれ。それとコノルちゃん猫ちゃん。悪いんだけど色々合って遊撃隊は2人だけでお願い。俺は本体討伐に参加しろって言われてさ。んでもう1人のライコって子とは連絡が取れないらしい。だから2人共ごめんな。2人で頑張ってくれ」
「…………は?」
並べられる理不尽極まりない一方的な指示にコノルはキレそうになりながら不満の一言は零した。