その50 さぁ界攻略に出発
「どうせ彼女じゃないから安心しなよコノルちゃん」 まぁ知らんけど。
へたり込むコノルを見ながら一虎は適当なフォローを入れるが、ショックで深い溜息を吐くコノルには届かない。
「あー、仮に彼女でも、ほら!目の前に俺がいるじゃん?ハヤテなんか忘れて俺に乗り換えなよ。俺ならコノルちゃんに黒猫ちゃんの2人共大事にするぜ?イエス!」
親指を自分に向けて堂々と二股宣言でプロポーズしてくる一虎。
「……尻の軽い野郎に興味ありません。女の敵は土に帰ってどうぞ」
「ぬはは。分かったのじゃ。ご飯はまだかぁ〜?」
コノルは睨み付けながら一虎のアピールを切り捨てる。
黒猫は相手にすらしていない。コノルの横で座りながら地面を叩いてご飯を強請る。
「……すげーよな。優しさのつもりなのに、2人共返事が冷たさタップリなんだもんな」
一虎は再び心を抉りに来る2人の容赦のなさに悲壮感を顕にする。
「ぬはは。コノルよ。こやつは何を言ってるのじゃ?」
「猫さんは聞かなくて大丈夫。まぁ彼女じゃないのは信じるとして、そのハヤテさんが呼んだ方はここで合流なんですか?来る気配皆無ですけど」
コノルは沈んだ気持ちから立ち直ると、黒猫と一緒に立ち上がり、辺りを見回してハヤテの紹介でやってくる女性を探す。
「ああ、その子とは現地集合だって言われたわ。とりま出発するけど転移素材は大丈夫?行きはパーティーリーダーの俺が出すけど帰りはバラバラだぜ?」
「「もちろん……」」
コノルと黒猫は互いに顔を見合わせて頷き、一虎の方を向く。
「ありません」
「ないのじゃ」
「まぁだよな……」
声を揃えて胸を張る2人に一虎は頭を掻きながら呆れる。
転移する際パーティーを組んでれば、最大4人分の転移素材とゴルドを1人分で賄える。だから行きは一虎が受け持つが、帰りは別々の界へと帰る事となる為パーティーを解除する。
そうなれば帰りは自分達の分を用意しないと行けない。下の界に帰るだけなのでゴルドは掛からない訳だが、問題はどっちに転んでも182界の敵を倒して素材を入手しないといけない。無論2人が持っている訳ない。
素材は店等を探せば売っていたり、仲間から分けて貰える方法もあるが、最新界の素材だと、市場ではそんなに出回っておらず、譲って貰うには他の人も自分の事で手一杯なので些か難しい。
「コノルちゃん達は151界に戻ってくるなら、【キラーベアの爪】と【ハンターウルフの皮】31個かぁ。俺もそんな余ってる訳じゃねーし雑魚担当メンバーから少し分けて貰うか。ちょっとは余ってるだろうし」
一虎は素材問題に目処を付けると、早速メニューを開いて仲間にメッセージを飛ばし始める。
「わぁ、ありがとうございます。猫さんもお礼を言って」
「うむ。棚から牡丹餅じゃな」
「至れり尽くせりでしょ?じゃない。お礼を言うの」
「世話になるのじゃ」
「お安い御用さ。んじゃ行くか!」
そして2人は一虎に連れられ、数ヶ月振りの界ボス討伐へと向かった。