その47 黒猫はメニューが開けない
―――子供を捕まえて数分後―――
コノルは後ろに子供達を引き連れて、1人行方不明になった黒猫を探していた。
この前黒猫に言った、1人でも捕まえたら掲示板の広場で子供を見張る発言が仇になっていた。コノルが1人で全員捕まえたから、当然掲示板の広場に黒猫いる訳がない。誰も捕まえてないのだから。
「…………今度は猫さん探しに変わってるじゃないのよ!なんなのよ!もー!」
不満が突如爆発し、コノルは地団駄を踏みながら全くマザー探しが進展しない事に不満を嘆く。
折角のホテル暮らしなのに!ゆっくり休む神が与えたもうた休みなのに!2日しかないのにぃいいい!
髪をわしゃわしゃと掻き乱すコノル。
「どうしたの?」
「何何ー?」
「おねぇちゃん大丈夫?」
突然怒り出すコノルに、子供達は心配して駆け寄ってくる。
「あ、何もないよー。ごめんね急に大声出して。ちょっと虫が攻撃してきたから追い払ってただけなの」
コノルは子供達の頭を撫でて平常心を装う。ここはゲームの中だ。虫などいない。
下手な嘘だが純粋な子供達は信じる。そして安心したのか、子供達は再びコノルの後ろで友達と一緒に遊びの話をする。
本当に良い子達。それに比べて猫さんは……一体全体ドユコト?……はぁ……
コノルは溜息を付く。黒猫の方が子供達より世話も手間も掛かるから。
猫さんにメッセージを送ったのに返事は無いし、一緒にマザーも探してるけど見つかんないし、本当にいるの?マザーって?
居るかどうか疑いだすコノル。
まぁ見付からなくて当然。マザーことペリカン職人は現在行方不明の黒猫と一緒なのだから。
1日走り回って何にも進展してない現状に1日を無為に過ごしている気になってくる。殆ど黒猫が発端の鬼ごっこのせいだが。
マザー探しを提案した当の本人の黒猫は消えるというハプニング。
もう!勝手に探す事を了承して!勝手に鬼ごっこ始めて!勝手に行方不明!スポーツならレッドカード3枚で退場よ!……あれ?イエロカードだっけ?ブルー?まぁ何でもいいか。兎に角これは説教ね。見付けたらタダじゃ済ませない。
コノルは額にブチギレマークを浮かばせて、大通りのど真ん中を闊歩する。
―――
一方その頃……
「ここは……何処じゃ?」
「頂上ですね」
黒猫とペリカン職人は島の中央にいた。山状の島だけあって頂上から見える景色は絶景だ。
蒼い海が広がり、周囲の傾斜には白い建物が立ち並び、まるで自分を中心に島が出来ている錯覚を覚える。
そんな絶景スポットで2人はベンチに座っていた。
「コノルは?」
「私に聞かれても。連絡は取れないのですか?」
「やり方を忘れたのじゃ」
「連絡は出来るんですね?ではまずメニューを開いて下さい」
「うむ」
黒猫は片手を前に出して自分のステータスを表示する。
「いや、ステータスじゃなくてメニューを開いて下さい」
「ぬはは!ウケる」
「え?何が?」
結局黒猫はメニューが開けなかった。
ペリカン職人が懇切丁寧に説明するも、黒猫がメニューを開く事はついぞ無かった。
「……意味が分かりません。貴方は今迄どうやってアイテムを使って来たんですか?」
「こうすればいいのじゃ」
黒猫は手を前に出すと丸いボール状のアイテムがどこからともかく現れる。
「今……どうやったんですか?メニュー画面を開かずにアイテムを取り出せる機能なんかありましたっけ?」
「ぬはは!ウケる」
「え?だから何が?」
会話がままならない。言葉が話せるだけで会話のキャッチボールがドッヂボール状態だ。それも一方的に当てられるだけの。
ペリカン職人は困った顔で考える。
うーん……この人には申し訳ないですけど、当てになりませんね。かといって彼女から今離れても……折角の子供達の手掛かりですし……一旦掲示板の広場に行きますか。あそこは人が集まりますし。
「あの、黒猫さん。一旦掲示板の広場に行きましょう。そこならもしかしたら会えるかもしれません」
「うむ。そうするかの」
2人は階段を降りて掲示板の広場へ向かう事にしたのだった。