その44 借金取りじゃ!逃げろー!
しかしペリカン職人は黒猫が見えなくなる前にある事に気が付く。
あれ?今、わたしゃも?もって言った?子供って私が連れてきた7人だけでそれ以外に子供なんてこの界で見てないけど……あの人、もしかして私が探してる子供達の事を知っているのかも!
ペリカン職人は慌てて黒猫を追い掛けて走る。
「あ、あの!お待ちを!」
手を伸ばしながら声を掛けると、
ぬ?ぬ!あの挙動は!まさか借金取りの仲間!?油断したのじゃ!逃げるのじゃ!
黒猫は驚いた様子で急に走り出す。
「なんで!?ちょっ、ちょっとお待ちください!」
「その手には乗らぬ!わたしゃを騙そうなど1日早いのじゃ!」
「1日経てば騙せるのね……じゃない!騙そうなんてしてませんって!止まってー!」
黒猫は追ってくるペリカン職人を撒こうと、階段のある場所をジャンプして降る。
トントントンと階段を軽やかにジャンプする黒猫。
しかし途中で体勢を崩して転げ落ちる。
「のじゃああああ!?」
ゴロゴロとボールの様に階段から転げ落ちる黒猫。
1番下まで転がりおちると、黒猫は身体中傷だらけでHPをレッドゲージにしながら立ち上がり、まるでゾンビの様に歩き出す。
ここまでくると執念である。何に対する執念なのかは謎だが。
「に、逃げねばぁ……」
「ちょっちょっちょっと!!大丈夫ですか!?」
執念虚しく黒猫はペリカン職人に呆気なく追い付かれる。
「……ここまで……なのじゃな」
深く絶望したような様子で黒猫はその場に倒れ込む。
思い出すのは、あの懐かしい光景。
――黒猫の回想――
1人、路上の屋台で食事している黒猫は目の前にあるおでんのような食べ物を片っ端から取ってムシャムシャと食べていた。
そんな時、豪快におでんを貪り食っている黒猫の肩をトントンと優しく後ろから叩いてくる人物がいた。
コノルなのじゃ
そう思って黒猫が嬉々としながら後ろを振り向くと、そこには褐色でグラサンを掛けた男が。
男はニコッと笑うと、人差し指と親指で輪を作り、こう言った。
『金返せ』
――回想終了――
その男の動きとペリカン職人の動きが似ていると思っての逃走。
実際の所、似ている箇所など微塵もないのだが。
そんな勘違いで勝手に転んで重症を負った黒猫は倒れたまま意識を失ったのだった。
黒猫の過去話。
出来ればもっとちゃんとした過去話を思い出せよ。って見直して思った。
ちなみに黒猫の食べていた店が『路上居酒屋蟻地獄』って設定です。