その43 偶然出会う探し人
唐突に始まるミニゲーム。7人の逃げる子供を捕まえろ。
ルールは簡単。鬼役が逃げる子供を追い掛け回して捕まえるだけ。要するにケイドロですね。
黒猫の天然が発動し、メインのマザー探しを後回しにして依頼者である子供達を先に探す羽目に。
どうしてこうなった?と思いながらも起こったものはしょうがないとコノルは現状を受け入れる。
子供達を見付けて、子供達の保護者であるマザーも見付けないと。
さっさと終わらせたいものである。
『私も探すから二手に分かれて捕まえるわよ!1人でも捕まえたらとにかく広場に集合して子供を見張る!いいわね?』
コノルはそう黒猫に伝えて広場から出ていった。
――――
それから数分。黒猫も広場を離れて適当な大通りを歩いていた。
「見当たらないのじゃ。まるで隠れんぼなのじゃ。鬼ごっこと言った筈なのじゃがのー?」
腕を組み頭を捻りながら大通りを歩く黒猫。鬼ごっこというならせめて走れ。
そんな悠長に構える黒猫は空を見ながら考え事をする。
そもそも鬼ごっことはなんじゃ?何故鬼ごっこなのじゃ?鬼の振りするからなのかの?鬼って何なのじゃ?未確認生物かの?では正式な名前は、未確認生物の振りをする遊びじゃな……余計意味分からんくなったのじゃ。
くだらない事を空を見上げながら真剣に考えているその時、修道服を着た女性が大通りに繋がる小道から突如現れ、黒猫にぶつかる。
ドカッ!
「きゃっ!?」
「のじゃ!?」
修道服の女性が黒猫に伸し掛る様に倒れ込む。
「うむむ……痛いのじゃ……うむ!いきなり攻撃してくるとはいい度胸なのじゃ!退くのじゃああああ!」ジタバタ!
修道服の女性に伸し掛かられた状態でキレる黒猫。しかし退かす力がないので無力にジタバタするしか出来ない。
そんな黒猫の様子に気が付くと修道服を着た女性は急いで立ち上がり頭を下げる。
「あ、ごめんなさい!す、すみません!お、お怪我はありませんか!?」
「……のじゃ?うむ。大丈夫なのじゃ」
謝りながら手を差し伸べてくる女性に対して、黒猫は怒りを収めて女性の手を取り立ち上がる。
「お主良い奴なのじゃ。じゃが、おっちょこちょいは身を滅ぼす事もあるのじゃ。これから気を付けるのじゃ。ではまたのー」
お前が言うな、というツッコミが何処からともかく飛んできそうな事を言いながら、黒猫は怒りを完全に鎮火して立ち去ろうとする。
「本当にすみませんでした……あっ、ちょっと待って下さい。お聞きしたい事が、あの、この近くに7人の子供を見ませんでしたか?」
女性のその言葉を聞いて黒猫は振り向く。
「なんじゃ?お主も子供を探しておるのかの?奇遇なのじゃ。わたしゃも丁度探しておるのじゃ。いい方法をコノルから聞いたのじゃ。探すなら二手に分かれて探すと良いのじゃ。ではまたのー」
察しの悪い黒猫はコノルに言われた事をそのまま修道服の女性に伝えると、したり顔で再びその場から去ろうとする。少しもアドバイスになっていないのだが、細かい事は微塵も気にしない。
「コノル……二手……」
眼鏡を掛けた修道服の女性であるペリカン職人は、黒猫のアドバイスに対して心の中で、私……1人なんだけど……と思いながら勇み足で立ち去る黒猫の背中を見送るのだった。