その42 ドツボにハマるとはこの事
依頼掲示板のある広場
ここでマザーの情報を整理しよう。
プレイヤー名【ペリカン職人】通称マザー
年齢は20代前半
ブロンドの髪に紺色の修道服を来た女性
眼鏡を掛けている。
使えそうな情報は修道服ね。修道服着てる人なんてそうはいないし。
コノルはペリカン職人の容姿に目星を付ける。
そして2人と7人の子供達は広場に到着すると、辺りを見回す。
しかしマザーらしき修道服を着た人物は見当たらない。
ここは人で溢れているので、もしかしたらマザーの情報もあるかと思い、コノルは子供達の事を黒猫に任せて1人で聞いて回る事に。
知らないか?見てないか?そんな事を聞いて回る事10分――
「情報ほぼ無し……おかしくない?」
コノルはガクッと項垂れながら黒猫と子供達の待たせている場所に戻って来ると、黒猫が木の棒を4つ使って子供達にジャグリングを披露していた。
「ぬはははは!ぬはははは!」シュッシュッシュッ
「おねぇちゃんすっごーい!」
「カッコイイー!」
「ピエロみたーい!」
子供達に大絶賛。拍手されながら黒猫は得意気にしていた。
ピエロ、まぁ道化みたいな事は良くしてるし、強ち間違ってない。というか意外な得意ね。ジャグリングって。戦闘じゃ全く使えないけど。
素直に心の中で賛辞を送る一方、酷な評価も下すコノル。
「猫さん」
「のじゃ?」カンカンカンカン
コノルの呼び掛けで黒猫は手を止めこちらを振り向くと、投げていた木の棒が全て黒猫の頭目掛けて落ちてくる。
木の棒に当たる度にダメージ-1を受ける黒猫。
「唐突に笑かしにくるのやめて」
「そんなつもりは微塵もないのじゃ」
「それより、何?この形の整った棒は?さっきまで持ってた木の枝はどうしたのよ」
コノルは地面に落ちた木の棒を1本だけ手に取る。
「詳細っと」
『【松明】暗い洞窟やダンジョン、夜のフィールドで効果を発揮する。敵のエンカウント率を減らす事が出来る。使用時間20分』
こんなアイテム持ってなかった筈……道に落ちてる訳もないから……こいつ……また何処からか盗んだな……
ジト目を黒猫に向けるコノル。
そんな視線に全く気付かない黒猫は子供達とジャンケンしていた。
マザー探す気0か。
「負けたのじゃ〜。では10秒数えたら捕まえにいくのじゃ」
「「「わーい」」」
黒猫がそう言うと、一斉に子供達が散り散りに走り出す。
……っておい!
「鬼ごっこなんかしないで!ちょっ!?迷子になるから戻ってきてー!」
コノルの願いも虚しく、子供達は広場から消えてしまった。
「えあぁ……探す人が増えた……」
「……5、6、8、9、10じゃ!探すのじゃー!」
子供達を追い掛ける為に走り出す黒猫。
ガンッ!
「な……何故ぇ……じゃぁ……」バタン……
しかし走り出すと同時にコノルの怒りの拳が頭に炸裂し、黒猫は倒れ込む。
「毎度毎度余計な事を。仕方ない。猫さんに子守りを任せたのが運の付きね……鬼ごっこ……やったりますかー!!」
コノルはヤケクソ混じりで拳を握り締め、無くなり掛けているやる気をひり出したのだった。