その40 子供だから仕方ない
「もしかして君達は保護者と一緒に来たのかなー?」
優しく気さくな口調で聞くコノル。
一歩間違えば、この子供達の笑顔に暗雲が差す事になるので、慎重な言葉選びを意識する。
親と離れてナーバスだ〜とか、友達が死んで〜とか、そんな事に繋がるワードは絶対禁句だ。泣かれたらこっちまで泣いてしまう。間違いなく。
「えっとねーギルドのねー【教会法師】の旅行できたのー」
子供の返答でそんなコノルの心配も取り越し苦労に終わる。
おおおお!ちゃんとギルド関係で来てたのね!良かったー!もう心配する必要もないわ。
そう安堵していると、子供達が更に続きを喋る。
「でも、離れちゃったの」
「マザーが迷子になったの」
「マザーと離れ離れになったー」
「だから猫耳おねぇちゃんが助けてくれたのー」
「そうなんだぁー猫耳おねぇちゃに感謝だねー」
おぅのぅ……迷子だったかー……
何もない訳なかった。最悪はなくとも厄介な事案である。
探す?いやいや、ここは公共ギルドの誰かに保護を頼もう。
公共ギルドの繋がりは役割の関係上、一般のそれより広いネットワークを構築しているので、この判断は概ね正しい。
コノルは近くにある公共ギルドを何処でもいいから探す為にマップを開くと、黒猫が口を開く。
「わたしゃとコノルが責任持ってマザーを探すのじゃ!みな、付いてくるのじゃー!」
「「「はーい!」」」
何処から拾ったのか、小さな木の枝を掲げて子供達を先導し始める黒猫。
「ちょっと待てーい!?」ガシッ!
コノルはマップを閉じて直ぐ様黒猫を襟首を掴んで引き留める。
「ちょっと何勝手に!」
「可哀想なのじゃ」
「可哀想なのは分かるけど!私達じゃなく公共ギルドの人に頼めば人脈で直ぐそのマザーと連絡取れるから!私達で探さなくていいから!」
「えー探してくれるんじゃないのー?」
「遊んでくれるんじゃないのー?」
「うわーん!もっと一緒に遊ぼうよー」
子供達はコノルの言葉を聞いて駄々をコネたり、期待の眼差しを向けたりしてくる。
「あのね!私達よりも―――」
ジー
「だから安全で―――」
ジー
「確実に―――」
ジー
「わ……分かった!分かったから!その目やめて!探すわよ!」
「「「うわーい!!」」」
「のじゃー!」
子供達の無言の視線に根負けして、2人は子供達の保護者、マザーと呼ばれる人物を探す事に。
せっかくのホテルなのに……トホホ……
この後ゆっくりホテルで休んでお姫様気分を味わおうと思っていたが、何事も上手くは進まないものである。それを痛感しながらコノルはマザーのプレイヤー名を子供達に尋ねと、どうやらマザーの名前は【ペリカン職人】って言うらしい。
このままマザー呼びでいいや。
プレイヤー名がダサい上に言い辛い名前だと感じつつ、2人は子供達を連れて街中を歩く。
子供が珍しいのか、通りすがる人皆、子供を連れる私達に視線を向けてくる。
うーん……この……なんとも言えない視線……悪い事してる気になってくるなぁ。
そんな視線に息苦しさを感じながらコノルは後ろを振り向くと7人の子供と1匹のバカ……もとい黒猫が楽しそうに騒いでいた。
「てっぽうだまは〜♪ 勘弁じゃ〜♪ 」
「「「てっぽうだまはー♪ 勘弁じゃー♪ 」」」
「ボスなら〜♪ お前が〜♪ 行けなのじゃ〜♪ 」
「「「ボスならー♪ お前がー♪ 行けなのじゃー♪ 」」」
どんな歌よ……
黒猫が訳の分からない即興の歌を歌うと、子供達もそれを復唱して、1ミリも理解を得られないであろうチビっこ斉唱団が大通りを闊歩する。
脳内のレベルが同じなんだよなぁ……
黒猫と子供達が並んで歩いているのを見て、違和感がない事に呆れる。
取り敢えず子供達は置いといて、先ずは情報。聞き込みしなきゃ。
コノルはまず掲示板がある広場へと子供達を連れて向かった。