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仮想世界は楽しむ所なのじゃ  作者: 灰色野良猫
チュートリアル
33/231

その33 真相は闇の中

 PvPでやり合った広場から走って離れた2人は道の真ん中で立ち止まる。


「ふぅ……さて……ここにはもう居られないわね」


「何故なのじゃ?」


「【赤壁旅団】のサブマスに目を付けられたからよ!!キー!凄い気に入った界だったのにー!ムキャー!」


 コノルはハンカチを噛み締めるみたいに自分の服を噛んで悔しがる。


 それもそうだろう。攻略している界に近いこの休息界にいてはいつシノ影一派に遭遇して因縁を吹っ掛けられるか分かったもんじゃない。


 でも諦めるには些か惜しい。


 景色は綺麗、料理は少し高いが美味しく、街は活気に満ちて、何処からでも海が展望できる。


 なんなら第2の故郷にしようと思っていたほどだ。


 だからこそコノルは、こんなアクシデントでこの街を去るのが悔しくて仕方なかった。


 目一杯自分の服を歯と両手で引っ張るコノル。データの服が噛みきれそうな程の強さだ。


「……コノルが荒れてるのじゃ」


 それを見た黒猫はとばっちりは嫌だとばかりに、コノルから少し離れる。


 とばっちりじゃない。お前のせいだ。


 そんな無粋な事、敢えて誰も言わないが、コノルは歯を服から離して落ち着きを取り戻すと黒猫に聞きたい事があったのを思い出して黒猫に問う。


 その内容は


「ふぅ……ところで猫さん、どうして船を沈めたの?」


 一番の問題。問題の発端。核心に触れる疑問。街を離れなければならない原因。


 まず黒猫が本当に船を沈めたのか沈めてないのかとか、黒猫を信じてる信じてないとか言う話ではなく、黒猫ならやりかねないと核心をもっての疑問。


 沈めたのは間違いないとしても、そこには必ず理由があるはずだわ。猫さんは何の理由もなく私を危ない目になんか…………


 合わせるわ。理由を理解しないまま合わせるわ。


 ものの数秒で考えが一転する。


 額に手を起き、思い当たる節しか見当たらない事に頭を悩ます。


 まぁ猫さんの天然は置いといて、理由は必ずある筈だ。何故なら目撃者の話を思い出す限り『負け戦に用はないのじゃ』とか言ってたらしいし。


 猫さんには、敵の力量を測る事も、戦況の優劣を測る事も、ましてや何をすればいいかも分かる筈がない。機転が利かない、それが猫さん。でも必ず何か、いや、猫さんに入れ知恵をした何者かがいる。


 コノルはそう考えているのだ。


 じゃないと黒猫が突然船底に行き、船を故意に沈めた理由も、負け戦発言も辻褄が合わないから。行き当たりばったりで普通こうはならない。別の第三者がいるとなれば納得出来る。


 それが誰かを突き止める為、コノルは黒猫の話を聞く。


「瓶が転がってきたのじゃ」


「うんうん。それで?」


「???」


 眉を細めて首を傾げる黒猫。これで説明した気になっているから参ってしまう。


「いや、私が意味分からない事言ってるみたいな顔にならないで。それで?瓶が転がってきて?どうしたの?」


「うむ…………うむ?何じゃ?」


「アルツハイマーかお前は!!」


 話にならない。


 話した次の瞬間には忘れるもんだから、会話が先に進まない。


 これは誰かの陰謀で黒猫の記憶を弄って思い出させない様にしているのか、それとも黒猫が天然なだけなのか。


 二つの可能性を吟味してコノルは答えを出す。


 多分後者。


 そう結論付けて真相は闇へと葬る事にした。


 もうこんな頓珍漢な事は起きないだろうし、という楽観的思考に切り替えて2人は前へと進む事にした。



 ――――



 夕暮れ時。


 日も落ち始めようとしてきたので、2人は泊まる所を探して、辺りがオレンジ色に染まる街の中を歩く。なるべくシノ影がいた場所から離れるように。


「それはそうと、何だったんだろうね。あの触手」


「うむ。身体がなかったのじゃ」


 2人が海に落ちて最後に見た光景。


 海の中で本体のテクスチャがないのに触手だけが延びていて蠢く謎の光景。


 それが何なのか2人は顎に手を置き、うーん……と唸りながら考える。


「まだ……完成してない……とか」


「ぬはははははは!!ウケるのじゃ!!……どういう意味なのじゃ?」


「爆笑しといて意味を理解してない猫さんのがウケるわ。イベントが未完成って事よ」


「???」


「うん。まぁ正解の反応ね。本当に未完成なら私も謎よ」


「うむ『蜜柑せい』とはどんな果物なのじゃ?蜜柑の仲間かの?謎なのじゃ」


「はいはい。そこからね。分かってた。未完成ってのは果物の話じゃなくて、作られてないって事。分かる?」


「うむ。お腹空いたのじゃ」


「……今日ご飯抜き」


「のじゃ!?」


 コノルは会話にならない罰を黒猫に与えて、掲示板の広場へと出る。


 あ、しまった。もしかしたらアイツらここにいるかも。


 コノルは辺りを見回し、シノ影達がいない事を確認すると、ホッと胸を撫で下ろす。


 しかし長居は無用。いつ会ってもおかしくない場所だ。


 ユラユラ歩いて掲示板へと向かう黒猫の腕を掴んで別方向へと引っ張り、掲示板の広場から離れようとした、そんな時。


「……見つけたぞ」


 聞き覚えのある声が2人を引き止めた。

ちょっと投稿頻度落ちるかもです。すみません……

51話までは作ってるんですけどね。その辺で1章を終わらせる予定です。


1章は1章の登場キャラ全員集合で終わらせて、早く2章にいきたい。

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