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仮想世界は楽しむ所なのじゃ  作者: 灰色野良猫
チュートリアル
30/231

その30 黒猫vsシノ影

〇vs〇はどんどんやってきます


 

 私が気絶した後に何が起こったのか聞いたら、どうやら誰かが上げた救難信号を見て近くにいた白い漁船が駆け付けてくれたらしい。


 だけどデビルクラーケンについては謎のままだ。


 もういいよ。謎のままで。二度と行かないし。


でも憶測を述べるなら……恐らくバグだったのだろう。触手しか出ないバグ。だからデビルクラーケン本体が出なかった、なら辻褄が合う。イベントが進行しないのだから。


 まぁ憶測だから合っているかどうか分かんない。それでもいい。だって助かったのだから。後はどうでもいいよ。


―――


 それから場面は現在に戻り、コノルの説得演説によりシノ影はPvPを承諾。周りのシノ影の部下も納得し万事上手く事は進んでいった。


 1人を除いて。


「のじゃ!?のじゃ!?何故なのじゃ!?何故なのじゃ!?」


 黒猫はコノルの服を引っ張り続ける。


「だから猫さんがやらかしたんだから、責任取ってシノ影さんの相手をするの。分かった?」


「わがらぬのじゃあああ!?何故なのじゃああ!?」


 大粒の涙を目に溜めて黒猫はコノルに説明を懇願する。


「もうこれで説明10回目よ?猫さんがやらかしたんだから、責任取ってシノ影さんの相手をするの。分かった?」


 全く同じ事を言うコノル。説明する気0である。


「……やっぱり意味わがらぬのじゃあ!!謎過ぎるのじゃあああ……」


 少し思考するが、納得いかない黒猫は到頭蹲って泣く。


「いつも『ブチのめしてやるのじゃ!』とか言ってるのに、なんでPvPは嫌なのよ。そっちの方が謎過ぎない?」


「響きが凄い嫌なのじゃ」


「知らんがな」


「PvPじゃなく直接ブチのめすのは駄目なのかの?」


「何故自ら死ぬ可能性を選ぶ?PvPなら死なないし外傷も受けないからPvPにしたの。我儘言ってたらご飯抜きよ?」


「…………い……い……いや……なの……じゃあ……」


「どっちが?」


「PvPとご飯抜きがじゃ」


「どっちもかい。もう……覚悟決めて。それに猫さんはプレイヤー相手ならぁー……」


 コノルは少し考えた後、途中で口を噤む。


 あの時は……まぁ、運が良かっただけか。


 とある過去の光景を思い出してコノルは黒猫にある質問をする。


「猫さん。私を助けてくれた時の事覚えてる?」


「???」


「昨日の事も覚えてないもんね。おっけ」


「なんにもオッケーじゃないのじゃ」


「分かった。じゃあ言い方変える。私の為にシノ影さんのサンドバッグになってきて」


「万倍嫌になったのじゃが?」


「じゃあシンプルに、私を助けて?」


「やったるのじゃあああ!!!」


 コノルの言葉で、唐突に首を鳴らしてヤル気を出す黒猫。


 シンプルな説得は時にバカをも動かす。


 そう。


 首をゴキゴキ鳴らす度にダメージ-1を受けるバカを。



 ―――――



 港の広場でシノ影の部下達と、全く関係無いギャラリーに囲まれてる中にコノルと黒猫はいた。


 そう。今まさに黒猫vsシノ影のPvPが始まろうとしていた。


 作戦はない。何故かって?絶対勝てないもん。考えるだけ無駄。でも万が一、黒猫さんが隠している力が覚醒したら……


 勝てる!かも!


「のじゃ!のじゃ!」ビュン!ビュン!


 コノルは目の前で釣竿を振り回す黒猫に期待の目を向ける。


 釣竿振り回して何をして……まさか猫さん……釣竿で戦う気なの?というか前渡した短剣は?


 期待は煙のように飛散して消えた。


 そんな泡より儚く淡い期待は置いといて、コノルはシノ影のいる方を向く。


 シノ影は腰の刀に手を置いてコチラの準備が終わるのを黙って待っていた。


 こちらはいつでもOKと言わんばかりに。


「流石に大手ギルドのサブリーダー……貫禄あるわね。猫さん。頑張って」


「任せるのじゃ!」


 勝負の邪魔にならない様、コノルは周りで観戦するギャラリーの中に入り、勝負の行く末を見守る。



 依頼主だった人が合図を出したら開始。



 黒猫とシノ影は依頼主だった人を挟んで向かい合う。


「PvPだからといって油断したら痛い目に合うぞ」


「コノルの為に!お主は沸かすのじゃ!」


「ふん。生意気な……うん?沸かす?え?何?」


 猫さん……そこは『負かす』よ……


 コノルは言葉の言い間違えにより、早速大衆の前で恥を掻く黒猫の姿に頭を抱える。


「何を言っているか分からないが、手加減はせんぞ。鬱憤も溜まっている事だしな。ここで思う存分晴らさせてくれようぞ!」


「のじゃ!後悔させてやるのじゃ!行くのじゃああ!」


 黒猫は釣竿を武器にシノ影に向かって走り出す。


「のじゃあああああ!!」


 しかし


 ガッ!「あっ」ズサー……


 黒猫は盛大に転けてダメージを負う。


「……………………」


 シノ影は言葉も出ない。ただただ哀れな生き物を見る目で見続ける。


周りも言葉が出ず、黒猫の姿を静観している。


「……化かされたのじゃ」ムクッ……


 赤面しながら謎の言い訳をして起き上がる黒猫。


「化かされてはいない。バカにされてるとは思う」


 そんな黒猫に冷たい言葉を投げ掛けるコノル。


 シノ影と刃を交える前にダメージを食らっているのだ。


 まぁお話にならない事で。


 周りはそんな黒猫の事を見て笑い始める。


「………………ぶち殺すのじゃああああ!!」


 黒猫はシノ影ではなく、笑っているギャラリーに向かって攻撃を仕掛けにいった。


「そっちじゃなあああああい!?」


ターゲットを変える黒猫にコノルはツッコミを入れる。


「私が相手だと言っているだろうが!」シュバッ!


 するとシノ影はギャラリーに向かって走ってくる黒猫の前に立ち塞がり、突進してくる黒猫に蹴りを食らわす。


 ドゴッ


「のじゃ!?」


 黒猫のお腹に鈍い音が鳴り、黒猫はボールの様に蹴り飛ばされた。


「の、のじゃぁ……」


 ゴロゴロ転がりながらうつ伏せに倒れる黒猫。


「猫さん!?ちょっとやり過ぎよ!!」


「これはPvPだ。始まってすぐ転けて別の者に襲い掛かったり、やり過ぎだと言ったり、話にならぬ。お前達は何がしたい?私に勝利したいのではないのか?」


 シノ影は刀を抜きそれをコノルへと向ける。


「成り行きとは言え貴様らが望んだ条件だ。貴様らが文句を言うのはお門違いというもの。外野は黙ってみているがいい」


 シノ影の言葉にギャラリーは歓声を上げ「そうだそうだ!」とか「卑怯者!」だとか言って罵ってくる。


 そんなシノ影と周りの言葉を無視してコノルは黒猫に近寄る。


「おい、まだ勝負は終わっていない。勝手に戦場に入ってくるな」


 シノ影の言葉を無視して、コノルは黒猫を抱き起こしながら片手で上を指差す。


 そこには


 WINNER シノ影


 と表示されていた。


「「「………………えっ?」」」


 シノ影も歓声で沸いていたギャラリーも、コノルと黒猫以外の全ての人が、その表示を見た瞬間言葉に詰まって何も言い表せない顔になった。

この前評価ポイントが付いてて驚きました。


読んで下さってるだけでも有難いのに

本当にありがとうございます(^人^)感謝です!


評価されると凄い嬉しいものですね。

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