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仮想世界は楽しむ所なのじゃ  作者: 灰色野良猫
チュートリアル
23/231

その23 囲まれた

「出たぞー!」


 突然乗組員の1人がコノルと黒猫の後ろを指差す。


「うむ?ぬはは。あやつ、わたしゃらを魔物か何かと勘違いしとるのじゃ。ウケる」


 黒猫は指を差す男を見て笑いながら、船の手摺に凭れ掛かる。


「………………」


 その横にいるコノルは、黒猫の真後ろでニュルニュルと蠢く紫色の触手に気が付き、額から汗がダラダラと流れる。


「おい!?そこから離れろお!!」

「何してるの!?後ろおおお!?」

「またアイツらか!」

「戦闘準備いいい!」

「やっぱり頭悪かった」


 周りも気が付いて2人に注意を促してくる。


「ぬはぬはぬはははははは!!ぬはっー!!」バンバンバン!


 必死な顔をして何か伝えてくる人達を見て、黒猫は何故か大爆笑して上を向き、手摺をバンバンと何度も叩く。


 何がそんなにツボに入ったのか本当に謎である。


 そんな上を向いて大爆笑している黒猫の目に


 触手の影が映り込む。


「…………のじゃ」


 先程の笑顔から一変。

 サッーと……一瞬にして顔から血の気が引く。


 そして流れるように触手に身体をガッシリと巻取られて、黒猫は空高く持ち上げられる。


「のじゃあ〜……」


「ね、猫さああああん!?」


 情けない声を上げながら触手に力無く持ち上げられる様はまさに無様としか言いようがなかった。


「ああああああ!?猫さん少しは抵抗してえええ!?」


 険しい顔で叫ぶコノルは黒猫に手を伸ばすが、勿論届く訳がない。黒猫は空中で触手にされるがまま振り回される。


 すると、そんな黒猫の様子を眺めるしかないコノルの後ろからとある人影が近付いてくる。


「【千一閃】」シュッ!


 その人影の人物から突如薙ぎ払いの一撃が放たれ、黒猫を掴んでいる触手とその周りの触手が光の礫となって消え去り黒猫は解放される。


 そして黒猫は落ちてくる。


「ぬっ!?」ドサッ!


 黒猫は先程触手に掴まれた衝撃と、今の落下の衝撃でHPが0になり



 死ぬ。



「猫さああああん!?【蘇生神札】!」ダダダダ!


 コノルは物凄いスピードで黒猫に駆け寄ると、いつもの要領で黒猫を蘇生する。


「もおおおおお!なんでいつもこんな簡単に死ぬのよ!スペランカーかあんたは!!」


 コノルは黒猫を強く抱き締める。


「……のじゃ」


 ※スペランカーが何か知りたい人は『スペランカー即死』で検索してみてね。


 コノルは黒猫を放すと、黒猫を助けてくれた人に感謝の気持ちを言おうと、さっきの技を放った人物を探す。


 するとそこにはシノ影がいた。


 げげ……あんたか……


 シノ影を見付けた途端コノルの中で感謝の気持ちが揺らぐ揺らぐ。それはもう荒波のように。


「い、幾らなんでも弱過ぎる……何なんだ貴様は?助けた筈なのに死ぬ奴なんて初めて見たぞ」


 一方シノ影は黒猫の耐久力の無さにドン引きしていた。


「うむ。褒めても何も出ぬぞ」


「褒めてはいない。恥を知れ」


「のじゃ!?」


 シノ影の厳しい言葉を浴びせられて黒猫に衝撃が走る。


「た、助けて頂いてぇ、あ、ありがとうございますぅ……」


 一方コノルは目線を背けながら、あまり言いたくない感謝の言葉を小声で口にする。


「……さっそく私の言葉通りになったな……足手纏だ。君達はもうよい。船内に大砲が設置してある。デビルクラーケンが出たらそれを使用する班がいるから、そちらのサポートをしてくるがよい」


「……分かりました」


 早々に足でまといのレッテルを貼られて不服だが、さっきの今だ、致し方無いとコノルは黒猫を連れてそそくさと船内に撤退する。




 船内にある螺旋状の階段を黒猫を連れて下りながらコノルはさっきの触手について考察する。


 あの紫色の触手……完全に見た目がタコかイカの足だったよね。クラーケンって名前だから正体は巨大な紫色のタコかな?シノ影さんの攻撃で一部の触手が消えたって事は恐らく足の1本1本にHPがあるタイプの敵だね。本体を狙わないと長期戦になる。って言っても私達じゃどうしようもないか。


 コノルは凡その見立てをするが、前線を早くも撤退した自分達ではそれ以上考えても仕方ないと、大砲のある場所へと引き続き急ぐ。


「ここかの?」

「おお!」


 辿り着いた船内は慌ただしく動いていた。大砲を撃つ者、大砲に弾を込める者、大砲の弾を運ぶ者。各々が役割分担して外にいるデビルクラーケンに向かって攻撃を開始していた。


 凄い統制の取れた所を見るに、どうやら既に作戦や役割分担はコノルや黒猫が知らない所で決まっていたようで、コノル達がサポートする必要もなさそうな雰囲気だった。


 しかし、それ以外にもコノルはある事に気が付く。


「これは……少しマズイのでは?」


「のじゃ?」


 コノルの言葉で頭にハテナマークを浮かべる黒猫は置いといて、コノルは大砲を船外へ撃つ為の開口部の隙間全てから、紫色の触手が船を取り囲むように伸びているのに気が付く。


 それはつまり


 船は完全にデビルクラーケンの触手に囲まれている事を意味していた。


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