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201/231

その201 棄世2

 放たれた3つの炎の球は一直線に黒猫目掛けて飛んでくる。


「どんな攻撃でもお主如きにわたしゃは殺されんわ!のじゃああああ!」


 威嚇するように叫ぶ黒猫。


 何があってもここから動かない。その一心で黒猫は避けようとしなかった。


 何故なら


 避ければ蹲っている棄世に当たると思ったから。



「!」バッ!



 ボンッ!



 青い炎は間違いなく当たった。


 だが黒猫ではなく、黒猫の前に現れ黒猫を庇った棄世に。


 棄世が両手を前に出した先には、特異スキル【絶影】で作り出された丸い影の盾が出現していた。


「………………ねぇ……お、お願いが……あ、あるん……だけど……」


「なんじゃ?」


「……く、クロ……って……よ、呼んで……いい?」


「アダ名かの?勿論いいのじゃ棄世。それはそうと、庇う必要なんかなかったの。自力で立ち上がれて何よりじゃ」


「……く、ひひ…………やろう……クロ……」


「うむ。決別の手伝いをするのじゃ。ぬはは」


 2人は覚悟を決めた顔でブルーハートを睨む。


「完全に裏切りやがったな。雑魚共が調子乗ってんじゃねーぞ。それに棄世。てめぇの特異スキルはこんな晴天じゃ役に立たねー事、忘れてんじゃねーか?」


 ブルーハートは静かな怒りの炎を心に燃え上がらせ、自身のガントレットを構える。


「……く、ひひ……あ、甘く……み、見るな……」


 棄世は不気味な笑みを浮かべてブルーハートを見る。


 なんだあの余裕?あいつの影攻撃は自分の影か自分の影が重なってる影しか操作出来ねぇ筈。


 辺りは陽の光を遮るような障害物もなく。影は自分の真下にある部分だけ。ブルーハートが思う様に棄世には若干不利なフィールド状況。


 暗闇ならば、敵の足元から棘等を出して攻撃出来るがそれもない今、棄世が笑う理由が分からない。


 すると、棄世が先に仕掛ける。


「ふひひ……」シュッ!


 棄世は素早くクナイ型のアイテムをブルーハートに向かって投げる。


「はっ!何をするかと思えば、下らねー飛び道具で攻撃たぁ甘く見てるな!根暗女ぁ!こんなもん当たるかよ!」


 ブルーハートは軽く横に身体をずらして最小限の動きで避ける。


 まさかこんなちゃちな飛び道具で攻撃とは予想してなかったが、飛び道具で攻撃しつつ距離を詰めようって算段か。対した脅威じゃねぇな。このまま火力で押し切――


 ブルーハートがガントレットによる炎攻撃をしようとしたその時


 自分の影から黒い棘が頭を目掛けて生えてくる。


「何!?」


 ブルーハートは急いで横にジャンプして回避する。


 何で俺の影を!?どうなってやがる!?


 ブルーハートが棘が生えた場所に目をやると、その理由が分かった。


 先程投げたクナイに細い糸が巻き付けられており、見えないレベルの細い影が棄世とブルーハートの影を繋げていたのだ。


「こんな小細工で俺の影に自分の影を重ねたって訳か!熟熟下らねー真似しやがって!だが、最後のチャンスに仕留め切れなかったのは残念だったな!もう同じ手は喰わねぇぞ!」


 ブルーハートが種を理解して憤っている時


「……棄世よ……名前を呼んだら、わたしゃとあやつをわたしゃが言った方に飛ばすのじゃ…………のじゃ!」ダッ!


 ボソリとそう呟いた瞬間、黒猫が棄世の後ろからブルーハートに向かって、迂回する様に走り出す。


「え!?く、クロ!?」


「あ?なんだあのカス女?」


 決して速くはない速度。何をする気かは不明だが、棄世やブルーハートの目から見ても、作戦があるとは思えない無茶な動きだった。


 のじゃ!身体が重いし遅いのじゃ!


 そんな普段通りの速度でも、こんな切羽詰まった状況では自分ですら遅いと感じる。それでも全速力で走る黒猫。


「のじゃああああ!」ダッダッダ!


「うぜーよ!まずはお前から死ね!」


 ブルーハートは青い炎の球を黒猫に向かって2つ放つ。


「クロ!さ、避けて!」


 だ、ダメだ!あれじゃ当たる!今の私じゃ!え、援護、出来ない!


 普段なら普通に当たる。なんならブルーハートの攻撃は全て命中率がかなり高く必中と言っていいレベルだ。そして彼の攻撃はまともに当たれば低レベルの黒猫なら一撃でダウンさせられる。


 当たれば終わり。しかも当たる確率はかなり高い一撃必殺レベルの攻撃ばかり。そんなレベル差と状況。


 この時、黒猫はある人物の動きを思い浮かべていた。


 ライコのパルクールの様なアクロバットな動き。


 あの動きを真似すれば!避けられる筈なのじゃ!


「のじゃあああ!のじゃ!?ぐあああ!?」ズサー!


 しかし、予想とは違って黒猫は盛大に転けてしまう。


 だが不幸中の幸いか、間一髪の所で黒猫は転けてしまう事で2つの炎の球を奇跡的に回避する事が出来た。


 炎は交差して地面に当たると、ブルーハートの役職【追跡者(チェイサー)】の効果でバウンドして再び黒猫に向かって飛んでいく。


「だ、だめ!クロ!さ、避けて」


「消えろカス女あ!」


「のじゃあああ!諦めんのじゃああ!」ゴロゴロ!


 だが運がいいのか、黒猫はそのまま転がると2つの炎の球は跳ね返ったタイミングが重なり、2つの炎はお互いにぶつかり合い相殺される。


「何!?」


「く、クロ!……よ、良かった……」ホッ……


「のじゃ!」バッ!ダッ!


 そして転けた黒猫はそのまま助走の勢いを殺すまいと、転けて転がってる状態で前転するように起き上がり引き続きブルーハートに向かって走る。


「運良く避けやがってこのカスが!てめぇが近付いた所で俺に傷一つ付けらんねーだろうが!」


 ブルーハートはそんな無駄な努力をする黒猫にイライラして蹴りで黒猫を退けようとする。


 それを見た黒猫は手に木の棒出現させて、ブルーハートの蹴りを防いで横に飛ばされる。


 バシンッ!


「のぎゃ!?くっ!のじゃあ!」パシッ!


 蹴りを防いだとしても、黒猫は先程転けたダメージと蹴りのダメージでHPがレッドゲージになっていた。


 弱過ぎる黒猫。絶望的な戦闘力の差。


 それでも黒猫は勝つつもりだった。


 横に飛ばされたその瞬間、その手に、先程棄世が投げたクナイを拾って。

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