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仮想世界は楽しむ所なのじゃ  作者: 灰色野良猫
チュートリアル
20/231

その20 因縁をつける

念願の船だよおい

どんなゲームでも船乗るイベント好きなんよね

ワクワクする……私だけ?

「……の話は以上だ。次にこの依頼についてだが、情報屋からの情報筋で、午後3時の西の海に必ずデビルクラーケンは出てくるとの事だ。成功は約束されてると言っても良いだろう。それに伴い、依頼を達成した暁には、依頼料を彼の50万とは別に【赤壁旅団】からも相応の報酬を用意する事にした。みな、励んでくれたまえ」


「「「うおおおおおおお!」」」


 シノ影の演説に周りの士気も高まり始めた。


「……へっ、金、金、金、所詮金なのね。忠誠心(しょうなり)お金か。猫さんはああはならないでよ」


 目の前で繰り広げられているシノ影の演説とその周りの人達の反応を小馬鹿にした様に薄ら笑いで切り捨てるコノル。パバマさんからお金を貰って喜んでいた自分の事を完全に棚に上げていた。


そんなコノルは、横にいる黒猫に注意を促そうと振り向く。


「のじゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」


 しかしコノルの横にいる黒猫は両手を高く上げて誰よりも大声を上げて喜び叫んでいた。


「…………だよね。知ってた。止めなさい猫さん。あれ、報酬は多分お金じゃないよ。宗教クラブの会員券とかそんなんよきっと」


 人を疑うととことん人を信用しなくなる。そんな質のコノル。

 ある事ない事黒猫に吹き込み、周りの人達をバカにする。


「なぬ!?詐欺師なのじゃ!」


 黒猫はそれを疑いもなく信じ込む。ダメだこりゃ。


 そんなダメコンビの前に【ガーゴイルパラレル】のメンバーがコノル達の話が耳に入り駆け寄ってくる。


「貴方達、少し失礼じゃございませんの?」

「宗教などと一緒にしないで頂きたい」

「我々は純粋に始祖様を崇めているだけでございます」

「貴方達も始祖様を目の当たりにすればきっとその邪念も払われる事でしょう」

「さぁ貴方達も始祖様に信仰を捧げましょう同志よ」


 男女問わず、ずいずいとコノルと黒猫を囲む様ににじり寄ってくる。


「の、のじゃぁ……やっぱり宗教ではないか」

「誰が同志か!ていうか始祖様って何よ?」


 2人が【ガーゴイルパラレル】のメンバーに揉みくちゃにされていると、その人集りをまるで海を割るかの如く左右に避けさせ、コノルと黒猫へと続く道を作って近寄ってくる男がいた。


「始祖様とは【緑の聖母】のギルドマスターの事だ。私の部下達が失礼したな。確かプレイヤー名はコノルに黒猫だね?知っているとは思うが、今回君達を取り纏めるリーダーのシノ影だ」


 シノ影だった。


 シノ影は部下の非礼を詫びて手を差し伸べ握手を求めてくる。


「あ、どうも……って、え?私達を知っているんですか?」


 コノルは握手し返して、巨大ギルドの副マスターがどうして自分達の事を知っているのかと疑問を抱く。


「ふ、君達の事は噂で聞いているからね。だが……解せぬ。何故赤表示ではないのだ?噂が本当だとすると君達は迷惑行為を数十回以上繰り返していると聞く。複数人による証言もある。なのに何故?裏でブラックギルドと繋がって赤表示を消す工作でもしているのかな?」


 シノ影の言葉から察するに、どうやら赤表示でない自分達の事が気に入らないようだった。


 コノルは握手している手を離すと、シノ影を敵視して薄目で睨み付ける。


「……そういう事ね……ふん。赤表示じゃないのはその噂がデマだからでしょう?ね。猫さん」


「そうじゃそうじゃ!いきなりなんじゃお主?迷惑じゃバーカ!」


「ふっ……あまり頭に乗るな。君達の様な異端児はいずれこの世界の秩序を乱す。今回はこちらが迷惑を掛けた様だからこれ以上言及しないが、次に私の目に止まる行為と無礼な言葉を使うようなら……」


 シノ影は腰に差している刀を抜く。それをコノルの方に向ける


「この【村正】の錆になると覚えておいてくれたまえ」


 シノ影の一方的な正義と価値観の押し付けにコノルは手を強く握り締める。


 いきなり敵意丸出しで言いたい放題言われて、流石に気分が悪い。近付いてきたのはこれを言う為ね。ムカつく……いっそ殴ってやろうか?


 と思ってたら、


「のじゃ!いきなり武器を向けるとはいい度胸なのじゃ!ブチのめしてくれるのじゃ!」


 黒猫が腕をまくってシノ影の前に出ていた。


 猫さんナイス!でも絶対返り討ちに合うから止めないと。


 コノルは黒猫の首筋を掴んで止める。


「猫さんストップ!……分かりましたシノ影さん。注意します。ですが……貴方のような方がデマに泳がされるようでは……ふっ……【赤壁旅団】も底が知れてますね。では失礼します。私達も準備があるので」


 コノルは鼻で笑いながら精一杯の負け惜しみと嫌味をシノ影に言う。


 目には目を歯には歯を、よ。どうよ?気分悪いでしょ?


 してやったりな顔を心の中でするコノル。


「……デマかどうかはこれから分かる事だ。精々みなの足を引っ張らぬように注意するがいい」


 コノルは黒猫を引っ張って広場の隅に行く。


 そしてクールなポーカーフェイスを崩してコノルは深い溜息を吐く。


「はぁあああ……もうなんなのよアイツ?いきなり因縁吹っ掛けてきて……確かに9割噂は本当だけど……全部謝罪も弁償もしてるから問題ないもん!」


 頬っぺたを膨らまして大層ご立腹の様子のコノル。


 そんなコノルの後ろで黒猫は……


 またシノ影に絡みに行こうとしていた。


「待て待て待て、ちょっと待ちなさい猫さん……どこ行く気?」


「あやつをぶっ飛ばしに行くのじゃ。ムカつくのじゃ」


「気持ちは分かるけど、これから協力するチームリーダーぶっ飛ばしてどうするの?それに猫さんが行っても瞬殺されるから。私の我慢を無駄にしないで。あんなのは言わせておけばいいのよ」


「分かったのじゃ」スチャ……


 武器を構える黒猫。


「全然分かってないじゃない」


 バシッとコノルは黒猫の頭を叩いた。



―――



 そんなこんなで時間が来ると、依頼人が先導する形で依頼を受けた総勢56名の一行は港にある船着き場に到着する。


 そこにはガリオン船のようなデカい木造の船が止まっていた。


 海賊気分が味わえると、周りもコノルもそのデカい船を見て喜び、一行は船に乗って出航の準備を始める。


 帆を張れ!錨を上げろー!などと騒ぐ連中が現れる中、黒猫だけは違う感想をこぼしていた。


「……簡単に壊せそうじゃな」


 黒猫がとんでもない事を小さく口ずさみ、それが聞こえた人は皆コノルを含めて黒猫に顔を向ける。


 一同が感じた事。それは


(……こいつ何する気だ?)


 という一抹の不安であった。


次の話は重要な情報を載せたなんちゃって掲示板。

無駄な情報を削除した2ちゃんねるみたいな感じ。


嘘です。

掲示板は本当だけど、内容は文字だけ並べた感じのやつ。

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