その15 特異スキル
何にもしてない時にこの作品に
閲覧者が数名いたって分かると
「えっ!?見てる人がいる!?やった!!」
ってなる今日此頃。
単純ですね。
でも嬉しいのです。
前書きなんかで失礼しますが
ご覧いただきありがとうございます!!
m(_ _)m
ハヤテはバフを使用する。
「【疾風迅雷】【自動反射】いくぞ」
どちらもAG関係のバフスキルで【疾風迅雷】はAGを上げて、【自動反射】は(AG/1000)%の割合で攻撃を受けたら、その%分の確率で敵に自動反撃するバフだ。どれもRTは無く、緑と赤の淡い光に包まれるとハヤテはライコに向かって走り出す。
「【瞬進】!」
シュンッ!
ハヤテはSGを消費した攻撃スキルを使って一瞬の内にライコの懐に入り短剣での突き攻撃を放つ。
ガキンッ!と武器と武器がぶつかり合う。
ハヤテの短剣突きはライコの刃で受け止められた。それも面積の少ない刃の部分で。
「おお!はやいね!いいね!盛り上がってきた!」
「防いだだと!?くっ!」バッ!
ハヤテは後ろにバックステップを踏んで距離を開き、ハヤテは片手をライコに向ける。
「【ダークネス】!」
「おっと!あまいよ!」サッ
ハヤテは距離を空ける為の足止めとして地面から黒いトゲが出るRT2秒の魔法を使用すると、思惑通りライコはそれを後ろに軽く避け、互いの距離を空ける事に成功する。
思惑通りだが、ハヤテは先程の出来事に驚愕しながら冷や汗を垂らしていた。
さっきハヤテがSGを消費して放った【瞬進】という技。これは自身のAGに比例して素早さと攻撃力を%で上乗せするというとっておきの攻撃スキルで、バフを盛っているのを含めると速さがえげつない事になる筈の攻撃なので、まず反応して防御する事は難しい。RTは10秒と長く、PvPではSGありきの技とも言えなくはない。
更にSGはRTを気にしなくていいから溜まったら積極的に使っていきたい所だが、PvPでは、まずゲージを溜めようと思っても戦闘中に溜める事は出来ない。何故なら相手は攻撃を防御したり回避したりする為なかなか攻撃が当たらずゲージが溜められないからだ。
なのでPvPに限っては、SGは1度きりしか使えない切り札だと認知されており、ここぞと言う時か勝負の中盤に使うのが常識だとされている。
ハヤテの狙いはそれを開幕に使う事で相手の不意を狙い確実にダメージを稼ぐ事だった。
普通は相手もSGを最初に使うとは思わない為大抵決まる、もしくは反応されても攻撃が早過ぎるため防御まで手が回らず攻撃を受けてしまう。それ程防御が非常に難しい技なのだ。
幾つもの条件が重なった絶対必中と言っても過言ではない攻撃。それをライコは初見で意図も容易く並外れた動体視力で防御してみせた。それも防御が難しい刃の部分で。
例えるなら飛び回る蠅を割り箸で捕まえる程の妙技。
まさに神業と言っても過言ではない。
(偶然か?いや奴は確か刃の部分で防御した。間違いなく反応できている……一旦手の内を隠そう)
ハヤテは短剣を逆手持ちに変え、更に役職をメイン役職の【忍者】に変えて攻撃スキルを一新する。
ハヤテは最初
サブ役職の【盗賊王】でバトルをしていた。その時セットしていた攻撃スキルと魔法は
【疾風迅雷】【自動反射】【瞬進】【ダークネス】
それを今度はメイン役職の【忍者】に変える事で一新して、1度晒した手の内を隠したのだ。
今はこうなっている。
【???】【???】【???】【???】
これもPvPの戦略の内の一つだ。相手の手が分からない時に下手に動けば、相手の思うつぼ。相手の出方を伺い駆け引きに持っていく。手の内は然う然う晒さない。それがPvPでの序盤の勝負。
しかし
「今度はこっちからいくよ!」
戦いの定石をまったく気にせずライコはハヤテに向かって走り出す。
手の内が分からない今、無闇矢鱈と突っ込むとPvPでは大ダメージを受ける可能性しかない。
「ふん!反撃の狼煙を上げよ【ヘルマイン】!」
ハヤテはそんなライコの無謀さを鼻で笑い魔法を唱える。しかし何も起こらない。
(何かした?……いや、行っちゃおっと)
ライコは気にせずハヤテに近寄ろうとしていると、突如ライコの足下が爆発する。
!?
ライコは爆発する瞬間超人並の反射神経でジャンプして間一髪で爆発を回避するが
「貴様なら避けると思っていたぞ。【乱破手裏剣】」
ハヤテの手には無数の緑色の手裏剣が現れ、ハヤテはそれを空中で身動きが取れないライコへと投げつける。
銃弾並の早さの手裏剣がライコを狙って飛んでくる。
ライコはそれを見るとニヤリと笑う。
カンッカンッカンッ!
ライコは身動きの取れない空中で剣を振り、手裏剣を全て叩き落としたのだ。
「何!?くそっ!」
【乱破手裏剣】のRTは5秒
ライコはその隙を逃さず地面に着地した瞬間一気に間合いを詰めて、ハヤテの身体目掛けて剣を振ってダメージを稼ぐ。
「ぐあっ!?くっ!この!」
ハヤテは動けるようになると、直ぐ様短剣を振って反撃をするが、ライコはそれを軽くいなして更にハヤテの身体を切り刻む。
シュンシュンシュン!
逃げれない!くっ!ならば!【煙玉】!
ハヤテは懐に忍ばせていた煙を炊くアイテムを使用して煙の中に姿を晦ます。その隙にライコから離れようとするが
ライコは高速で回転して風を巻き起こし煙を吹き飛ばす。
「そんなバカな!?」
「さっきの人のおかげで閃いたんだ。さぁ逃がさないよ!」
ライコはハヤテが距離を空けようと走っている真横に並び剣を振るう。
ガンガンガンガン!と火花を散らして2人の武器がぶつかり合う。
しかし、ライコの方が武器を振るうのが早く、ハヤテのHPはどんどん削られていく。
くっ!もう少し!
ハヤテはある箇所に目を向ける。そこには先程使用した魔法【ヘルマイン】が効果を出す場所だった。
【ヘルマイン】の効果は任意の5箇所に、軽い衝撃を感知したら強力な爆発をする地雷を仕掛けられるというもの。
そこに逃げ込めば形勢が逆転できるのだ。何故なら自身が発動した魔法や攻撃スキルのダメージは受けない。つまりこのゲームで自爆は出来ない仕様となっているので、【ヘルマイン】が自分の近くで爆発しても自身はダメージを受けず、近くにいるライコにだけ一方的にダメージを与えられるからだ。
もう少しでこの斬り合いの現状を打破できる!そしたら一気に攻めに転じてHPを狩りとってやる!
このままいけばハヤテの思惑通りになる筈だった。
だが、
ライコは剣と剣を交えている最中、途中で剣を振りながら側転をして左手で掴める程度の大きさの石を拾うと、右手で剣を振るいながらハヤテがチラチラ見ていた場所に向かって素早く左手で石を投げる。
すると【ヘルマイン】は石が当たる衝撃に反応して爆発する。
「何!?」
「あからさま過ぎだよ!えい!」
ライコはそう言うと、回転蹴りをしてハヤテを蹴り飛ばす。
「ぐっ……」ズサー…
飛ばされたハヤテは受け身を取るも砂埃を上げながら膝を付いた状態になる。
「終わり?まだやれるよね」カチャ……
いつの間にかハヤテの目の前にいるライコは地面に膝を突いているハヤテに向かって剣を向ける。
(まさか本当に通常攻撃だけでここまで押されるとは……仕方ない……PvPでは使いたく無かったが……これだけ舐められては、疾風のハヤテの名が泣く)
ハヤテは覚悟を決めたように立ち上がる。
「良いだろう。お前は強い。認めてやる。だが、ここまでだ。切り札を使わせてもらうぞ」
「へぇー!いいよー!まだまだ楽しめるならドンと来いだよ!」
ライコはその言葉を聞くと嬉しそうにしながら胸をドンと叩いて真っ正面から受けようとしていた。
「ふん……その余裕もここまでだ。特異スキル【陣風】」
ハヤテの身体の周りに風が纏わりだす。それは小さな龍の形を成し、ハヤテと共にライコを睨み付けてくる。
「切り札ってそういう事ね!特異持ちか!凄いね!どんな効果なの?」
「ふっ、良いだろう。冥土の土産に教えてやる。このスキルは素早さを上げ、風を操り、周囲の物を対象に吹き飛ばす完全自動攻撃を行う。貴様もこれで……終わりだ」
ごおおお……と風の音が強くなるにつれ、周りのオブジェクトや樽がガタガタと音を出し始める。
「良いなぁ。デメリット無しかぁ。でもそれなら私も使うね?」
!?
そう言ってライコは手の平に光の玉を出現させる。
「一つだけならフェアだからね♪ 貴方のを教えてくれたから私のも教えるね♪ 私の特異スキルは【神足】。効果はSPとSGを半分消費して15秒間攻撃速度と素早さを3倍にするんだ。さぁ……行くよ!」パリーン!
そう言うと、ライコは光の玉を握り潰す。するとライコの身体が金色に光だす。
(3倍だと!?あの素早さに更に拍車が掛かるのか!?俺の【陣風】はAGを50%upするのに奴は3倍!だが、15秒と言っていたからそれまで逃げて――)
ハヤテが思考を終わらそうとした時には、ハヤテの身体が宙を舞っていた。
は?
ドサッと仰向けに倒れる。ハヤテの眼前には青空が広がり、空中に『WINNER ライコ』の表示が見えた。
「……な、何が?まさか……負けた……のか?」
唖然とするハヤテ。何が起こったのか理解するのに数秒掛かる。そして自分が負けた事を悟る。
「うわ!?ややややっぱりやり過ぎちゃった!?ごごごごめんね!?これからだったのに……こ、こんな筈じゃ……あっ!再戦しよう!そうしよっ!今度は絶対特異スキル使わないから!勿論お金はいらないよ!やろう!お願い!」
倒れているハヤテに慌てて近付いてくるライコは身振り手振りをしながら、悪いと感じて両手を合わせて再戦を申し込んでくる。
「…………いや、恐らく俺はお前に何をしても、何度挑んでも、勝てないだろう」
ハヤテは倒れた状態で脱力して目を瞑る。
「そっかぁ……」
潔く負けを認めるその言葉を聞いて至極残念そうにしているライコはハヤテに向かって手を差し伸べる。
その差し伸べられた手を借りてハヤテは起き上がる。
「……ちょっと最後が不完全燃焼気味だったけど……ポジティブにいかなきゃだよね!うん!楽しめたしいい勝負だった!ありがと♪ 」
ライコはニコッと笑って、ハヤテの手を両手で強く握り握手する。
「本当にそう思ってるのか?まぁいい……一つ教えてくれ。『一つだけならフェア』と言っていたが、お前にはまだ特異スキルがあるのか?」
「教えないよ♪ また勝負してくれたら教えてあげるけど?♪ 」
「ふん。もう分かった。お前とはもうやりたくない。もしかしたらお前はあの英雄ライトの強さに匹敵するかもな。ほら1000ゴルドだ」
「いらないよ。私特異スキル使って勝っちゃったし」
「フェアが望みなんだろ?なら受け取っとくれ。俺の立つ瀬がない。それにこれは、久々の負けという良い経験をさせてもらったお礼だと思ってくれ」
「ふふ、なら仕方ない♪ もらっておくよ♪ 」
2人は厚く握手を交わして報酬のやり取りをした。
そしてハヤテが消えるとライコはたまたま遠くに見慣れた人物が休憩している姿を発見する。
「……うん?あれは!!珍獣ちゃん!噂通り見た目が……と、あれが彼の言ってたお姫様!おーい!勝ったよー!」
ライコは大きく手を振ると、向こう側にいる金髪のマフラーを着けた少女が手を振り返す。その横の黒髪の少女は驚いた顔で金髪の少女を見ていた。
無事会えたんだね……守ってあげなよ……君の大切なお姫様を……
ライコはPvPを終わらせギャラリーを解散させると、ご機嫌な様子で飴玉を取り出し、空高く投げて口へと入れるのだった。
「うーん♪ おいしっ♪ 」