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仮想世界は楽しむ所なのじゃ  作者: 灰色野良猫
チュートリアル
14/231

その14 ライコ

 

「スゲーな。もう34勝0敗だろ?」

「しかも通常攻撃だけって、化け物だろ」


 モブの男2人組が腕を組みながら眺めるその視線の先には2人の人物が戦っていた。


 1人は茶髪で巨大な斧を持った大男と、もう1人は薄黄色の髪で右の前髪を髪留めで止めて、その止めた前髪の上から編み込んだ髪を装飾品の様に垂らしている変わったショートヘアの髪型をした高校生位の小柄の少女。


 2人が戦っている周囲には人集りがあり、上空には時間が表記してあった。この時間はPvPを行う際に設定出来る時間でこの時間が0になると、お互いのHPを比べ1番HPが多く残っている者が勝ちとなる。


 時間は残り30秒。勝負は佳境に入っていた。


 大男が攻撃スキルで斧をグルングルンと大きく振り回すと周囲に小さな竜巻が2つ出現し、回ってる大男と一緒に竜巻も前進しながら少女を狙って接近してくる。


「やるね!でも」


 少女は素早い動きで迫り来る2つの竜巻の間をアクロバットに避けて通り抜けると、斧を回転させながら近付いてくる大男目掛けて突撃する。


 タタタタタッ!


「バカが!ズタズタにしてやるぜー!」グルングルン!


 竜巻を避けて突撃してきた事により動線が丸分かりになり、大男は少女のその動きにニヤリと笑みを浮かべると回転を早める。


 このままでは斧が直撃してしまう。


だが少女は回転してくる斧に剣を少し当てて火花を散らしながら斧の軌道を少しズラすと、僅かに出来た攻撃の隙間を狙って本体に数十発もの斬撃ダメージを一瞬の内に与える。


「何!?」


 驚く大男の腹に素早く蹴りを入れ、その反動を利用して後ろに大きくバク転し大男の斧が届かない距離へと退避する。


 ブー!


 その一瞬で勝負は決し、ブザーの様な音が鳴り響く。


 そして上空に


 WINNER 【ライコ】


 と表示される。


 すると周りが湧き上がり歓声が巻き起こる。


 おおおおおおおおお!


「いえーい♪ 」


 薄黄色の髪をした少女ライコは勝利のVサインをギャラリーに向ける。


「ふぅ……あんた何者だ?まさか一撃も当てられないとは思わなかったぞ。攻略ギルドの奴か?いや、あんたみたいなの見た事ないな?」


「そりゃ私、ギルドに入ってないソロプレイヤーだし、ボス戦も参加した事1回しかないもん♪ あの時は2人だけだったしね♪ 」


 無邪気という言葉が似合う様にライコは笑顔で大男に返す。


「そうか……なぁ攻略ギルド【大鷲】にはいら」


「やーだよ♪ 」


「即答か……仕方ない……また機会があれば対戦してくれ。これが対戦金だ」


 そう言って大男はメニュー画面を開くと、金額欄をいじって1000ゴルドが入った袋を出現させるとライコに渡す。


「まいど♪ 」


 ライコはその袋を受け取ると、メニュー画面の自分の金額が表示されてる箇所に押し込んで1000ゴルドを直す。


「さぁー!次は誰ー?私に勝てたら今までの対戦金全てあげるよー♪ 負けたら1000ゴルドもらうけどね♪ でもお得だよー♪ やる価値ありありー♪ 」


 ライコは大男が去っていくと、手を広げて次の対戦者を募集する。


 するとコートで口元を隠している暗緑色の髪をした男がギャラリーの人集りを掻き分けて現れる。


「次は俺でもいいか?」


 暗緑色の髪の男は短剣をこれみよがしに装備しながらライコに近付いてくる。


盗賊系かぁ。速いんだろうなぁ。ふふ楽しみ楽しみ♪


「いいね!やろうやろう!」


 ライコは挑戦者の事を軽く分析して期待感を膨らませると快く承諾する。


「おい、あれって……」

「『疾風のハヤテ』だ……」

「英雄ライトのいるギルドのメンバーがなんでここに?」

「最新界のマッピング終わってるからだろ」


 ギャラリーが騒ぎ出す。


 そんな周りを気にもせずライコは話を進ませる。


「制限時間は5分、その間に私を倒せればOK。倒せなくても私のHPを貴方より少なくしたら」


「能書きはいい。はやくやろう」


おっ?クールだと思ったけど、意外と熱血漢タイプかな?ガンガン攻めにきてくれるかも♪


 見た目に反して血の気が多い。そんなハヤテにライコは嬉しそうにニコッと笑って、手の平を向ける。


「まぁまぁ、ここまでは公式PvPと同じだけど、戦うなら私は通常攻撃だけ。魔法、攻撃スキルは一切使わないよ。フェアじゃなくなるからね。あ、勿論君は使って大丈夫だよ。回復アイテムじゃ無ければアイテムも自由に使ってね♪ 」


 ライコはここまでしないと対等な勝負は出来ないと思って、ハンデを幾つか自身に課す条件を提示する。


「……舐めているのか?それとも俺を知らないのか。そんな条件じゃ勝負にならないぞ」


 ライコの挑発とも取れるその言葉にハヤテは顔を顰める。


 これでも腕に自信があるのだ。ここまで自分に優位な条件を出されるとかえって不機嫌になる。そんな気持ちが見え隠れしていた。


「君が誰かは知らないし興味はないよ。それに私はこんな条件を出してるけど、相手を舐めたりしないし常に全力でぶつかる気でいる。それでも不満なら私にスキルを使わせる位追い詰めたらいいよ♪ そこまでいけたら私もフェアだと思って使えるしね♪ 」


 余裕の笑みでそう答えるライコにハヤテは短剣を抜く。


「良いだろう。切り刻む」


「その意気や……よし……なんちゃって♪ 」


 ライコもメニュー画面から片手剣を取り出して戦闘準備をする。


 ピー!という音と共に2人はぶつかり合う。

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