その100 彼等の戦闘スタイル
普通石で殴られたら倒れる所だが、叩かれた男は鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をする。その様子を見て他の2人も伝染するかの如く同じ顔になる。
「え?」
「は?」
「ん?」
「のじゃ?」
3人の男と黒猫は首を傾げる。そして前の男3人は顔を見合せる。
何が起こったのか少し間を置くと、3人は黒猫に顔を向け、そして……
「お前……弱すぎるだろ!ぎゃはははは!」
「えええええええ!?ダメージ1っ!?お前何でここに居るの!?」
「こりゃあ傑作だわ!石ころの攻撃とはいえ、こんなにダメージ負わない攻撃は初めて見たわ!うははははは!」
一斉に黒猫をバカにする。
「うるっっっさいのじゃああああ!笑うなあああ!バカにしおって!ぶちのめしてやるのじゃあああ!」
腹を抱えて大爆笑する3人に憤慨しながら黒猫は石を持った手を振り回す。
「あらよっと」
しかし3人の男の1人が棒状の武器を手に出現させて黒猫の手を攻撃し石を叩き落とす。
「【シャドーフェイス】も人手不足か?こんな雑魚なんか仲間にしてよー。おりゃあ!」
男は棒状の武器を横に振り黒猫の頭を勢い良く殴打する。
黒猫は叩かれると数メートル先まで飛ばされ倒れる。
「は?いやいやいや!?どんだけよえーのよお前!?」
「どんだけ飛ぶんだよ。こんな弱い奴今まで見た事ねぇわ」
「大丈夫かー?まだこんなもんじゃ済まさないつもりだから立ち上がれー?」
黒猫のあまりの弱さを目の当たりにした3人は、黒猫を敵とみなさずサンドバッグを見るような目に変わり、完全に舐め切った様子で各々が似た様な棒状の武器を装備しながら黒猫へと近付いてくる。
「ぬぐ……痛い……のじゃ……」
殴られた所を片手で押さえながら黒猫は立ち上がる。
しかし反撃する手段はない。足元に落ちている石ころでは棒状の武器のリーチには敵わない。嬲り殺しになるのを待つしかなくなった。
逃げるかの?いや、逃げれないじゃろう。仮に逃げれてもわたしゃに暴力を働くあの2人にやられるのじゃ。さて……どうしたものかの……
ピンチで絶体絶命なのに顎に手を添え呑気に考え込む黒猫に向かって男達は一斉に武器を振り下ろす。
「のじゃあ……打つ手無しなのじゃ……」
黒猫は痛みに耐える為強く目を瞑った。
「ちちち、使えねぇ」
そんな黒猫の前にリョウケンが割り込み、体中に棘の付いた鉄のマントを羽織りながらリョウケン1人で男3人の攻撃を受け止める。
男達の手は棘が刺さり、微量ながらダメージを負ったが、外傷ダメージはそれとは比にならない位大きかった。
手が触れただけで手がズタズタに裂けているのだ。
「いでぇ!?」
「てめぇ!?」
「ぐあああ!?」
手の痛みに悶絶する3人にリョウケンは不敵な笑みを浮かべる。
「ちちち、この程度で騒ぐな。これからが本番何だからなぁ。ちちち」
リョウケンがそう言った瞬間、3人の手が溶け出す。
「あああ!?うわあああ!?」
「て、てめぇ!?何しやがった!?」
「て、手があああ!?」
3人がパニックに陥っていると、3人の内の1人の頭に弓矢が刺さり倒れる。
「「!?」」
その攻撃に残った男2人は驚き矢の刺さった仲間に目を向ける。そしてそれが敵の攻撃だと分かると、その矢が飛んできた方角を見る。黒猫も同じ方角を見る。
そこには射場ザキが弓を構えて待機していた。
遠くから射場ザキが弓矢で攻撃しているのだ。
それを確認したと同時に、黒猫と男3人とリョウケンのいる場所に無数の矢が雨のように降り注ぎ始める。
リョウケンは棘の付いた鉄のマントで弓矢を全て防ぐが、身を守る方法のない男3人は諸に弓矢の攻撃を受けてHPを一気にすり減らしその場に倒れる。
無論それは黒猫もだ。
仲間の攻撃で巻き添えを喰らう黒猫。しかし黒猫は肩と足に矢が刺さっただけで運良く致命傷は避けられていた。
「ぐ、助けるならもっと早く助けるのじゃ!そして攻撃に味方を巻き込むななのじゃ!お主らは阿呆なのか!」
黒猫は刺さった矢を取りながらリョウケンに怒りの声を上げる。HPはレッドゲージ。あと一本、矢が身体のどこかを掠めていたら死んでいたから。