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毒役令嬢  作者: まさかの
毒薬令嬢
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もう限界

 〜〜〜〜

 薄暗くなってからとある屋敷に行く。

 郊外にしては立派な建物であり、強大な権力を持つ者が、裏で何かをするために建てたのだろう。

 ホールに向かうと、立って雑談している者たちが一斉にこちらを向いた。

 仮面を付けた者たちが集まって楽しくパーティーをしているのだ。

 みんながすれ違うたびに挨拶をする。

 そしてステージの上に立った。


「皆さんよく来てくださいました」


 主催者の女性が来客たちを労う。

 若い彼女がこれほどの人望を集めるのは、地位か名声か。

 だが誰も彼女の言葉に不快感を持っていなさそうだ。


「それではこの国を乗っ取りましょうか?」


 彼女は仮面を外した。

 その顔は、黒幕であるローラだった。


 〜〜〜〜


「うーん……」



 変な夢を見ていたせいで、少し寝起きが良くない。

 頭がボーッとしており、いつの間に寝たのか考える。

 少しずつ寝ぼけた頭が冴え始めて、わたしは自分の手を見つめた。

 家事すら全くしない綺麗な手は、やはり夢の世界ではなかったと思わさせてくれる。


「ここは何処だっけ?」


 昨夜の自分の行動を振り返ってみた。

 そこでガバッと起きる。


「そうだ!」


 わたしはすぐに自分の体をベタベタと触った。

 りんごみたいな物を食べたら毒だったのだ。

 地獄のような苦しみだったが今は全くそんなこともない。

 そこでお腹周りに変な痕があることに気付いた。

 それは噛まれた痕だ。


「嘘っ、やっぱり血を吸われてる。それも二回も」


 おそらく寝ている隙にヴァルコ王子が血を堪能したのだろう。

 痛みがないのが救いだが、しばらくこの痕は残りそうだ。


「もういやぁ、帰りたい……」


 泣き言が出てきてしまう。

 急に前世の記憶を思い出して困難続きでいい加減疲れてきた。

 ふと、扉が少し開いているのに気が付き、そして誰かがこちらを見ている。


「だ、誰!」


 色々あったせいで警戒心が強まっている。

 ベッドの上で縮こまり、何があっても対処できるよう心構えだけはする。

 ゆっくりとドアを開けられると小さな少年がおどおどしながら入ってきた。


「ハルくん?」


 さっき驚かせてしまい嫌われたかと思ったが、どうしてここに来たのだろう。

 その手にはパンの入ったバスケットがあった。


「あ、あのぉ……た、食べてください!」



 もじもじとしながら、テーブルに置いてすぐさま出て行ってしまった。

 どうやらわたしのために料理を持ってきたようだった。



「ハルくんーー!」



 なんていい子!

 やっぱりハルくんは天使だよぉ。

 あんなことがあってもこうして優しくしてくれるならもう少し生きていいかもしれない。

 色々な妄想を膨らませながらハムハムとパンを食べていく。

 そこで一度食べる手を止めてパンをジッと見た。


「そういえばパンは変わらないのね」


 まだこの世界に慣れていないため、どの食べ物が食べられるのかが分からない。

 しかしパンのように現実世界と変わらないものもあるので、まずは出されたもの以外は食べないほうがいいかもしれない。



「さて、とりあえず動けるみたいだし一回出かけよう」


 ここに残っていると何をされるか分からない。

 ヴァルコ王子との恋愛は諦めよう。

 すぐに行動に移して、部屋のドアをコソッと開けるとちょうど部屋に入ろうとしたヴァルコ王子と目が合った。


「なぁーにをしているのか?」

「ひいやああああ!」


 今一番会いたくない人物に会ってしまった。

 わたしはあまりにもびっくりしすぎて腰を抜かしてしまい、腰から地面へ落ちていく。


「おっと!」


 だがそれよりもヴァルコ王子に掴まれて胸まで引き寄せてられる。


「危ないなぁ。ぼくのレディーは少し目を離すと何をしでかすか分からないからね」



 あわわわわわ!

 突然イケメンに抱擁されて頭がテンパっている。

 色々と恐いがそれでもイケメンに優しくされると、心が理性と反してしまう。


「よっと!」



 軽々とお姫様抱っこされ、わたしの動揺はどんどん大きくなる。

 顔をどっちに向ければいいのかすら分からない。

 チラッと彼の顔を見ると目が合ってしまい慌てて目を逸らした。

 やっぱり攻略キャラなだけあって顔がかっこいい。


「もう少し安静にしておくんだよ? じゃないと」


 ヴァルコ王子はわたしをゆっくりと優しくベッドに下ろした。

 手が自然と縮こまり、胸の前で両手を握る。

 細い右手がわたしの頬を撫でる。

 そして顔を近付けてきて、少し顔を浮かせればぶつかってしまうほどの近さになる。

 わたしが熱くなっているのか、彼の手が冷たいのか頬がひんやりとした。


「このままこうして見張ってないといけない。レディーがいいならそうするけど?」


 ボハーン!

 まるでそんな音が聞こえたかのようにわたしの許容範囲を超えた。

 恥ずかしさと現実世界では絶対にされない行為にもう耐えきれず、またもや意識を失った。




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