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第9話 爆弾商人の少女

 そんな風に狩りをしていた時のことだった。狼3匹に囲まれている猫の獣人のプレイヤーの少女が見えた。その少女は多分私と同じ年くらいかな? 体を震わせて怯えていた。


 これは助けた方が良さそうだ。私は狼にスキルを打つ。


「【破滅の旋律】!」


 地面から音符が浮かび上がり、3匹に命中する。少女は驚いたようにこっちを見た。


 私が少女の1番近くにいた狼に重点的に攻撃する。


「【呪い】『アーチタクト』!」


 そして通常攻撃を連発する。それで、少女の1番近くにいた狼は消滅した。後2匹。


 私が狼に攻撃しようとした時、少女が意外な手に出た。手に持っていた爆弾のようなものを自分に近付く狼に投げた。


 爆弾が地面にぶつかり、爆発する。その爆弾は私の呪いで弱った狼2匹を倒すには十分な威力だった。


 少女はこちらに向かって、ぺこりとお辞儀した。


「狼に囲まれてパニックになっちゃいました……。危ないところをありがとうございました!」


「どういたしまして」


「あの、このまま街へ戻るならご一緒してもいいですか? 爆弾の残りの数が少なくて。もちろんお礼はします」


「私も帰るところだったので。ご一緒しましょう。お礼はけっこうですよ」


 街へと戻るところだったので、一緒にいくのは全然OKだ。お礼については丁寧に断らせて貰った。狼1匹倒しただけで、貰うのも逆に悪いので……。


「ありがとうございます!」


「じゃあ、帰りますか」


 私達は隣に並んで歩き始めた。


「名前言ってませんでしたよね? 私ルージュって言います。職業はトレーダー(商人)です」


「私はアナスタシアです。エンチャンター(付与魔術師)です」


 商人か。商人は街でお店を開いているのを何人か見たけど、森で見たのは始めてだ。ちょっとステータスを鑑定してみる。


ルージュ Lv4

種族 獣人

職業 トレーダーLv15

ギフト 爆弾名人 スキル売買 商人の才能

コモンスキル SR【円滑取引】

称号 NR【りんご好き】


 爆弾名人っていうのがすごく気になる。爆弾名人を鑑定すると、威力の高い爆弾を作れ、爆弾を使った時の威力が普通に人が使った時より高くなる。さらに自分やパーティメンバーは爆弾の攻撃無効という、爆弾に特化したスキルだった。


「トレーダー向けのギフトがあったので、トレーダーにしたんですよね。戦闘職と迷ったんですけど」


「私もギフトとステータスで、職業決めました。魔法系やりたかったってのもあるんですけどね」


 ルージュちゃんとのやり取りはけっこう弾んだ。私もNPC以外の人と話すのは久しぶりだったので、楽しい。お互いにこの世界に来てからのことを語り合う。


「年同じくらいですよね? 私のことはルージュでいいですよ」


「なら、私のこともアナスタシアで。あ、お互い普通に話さない?」


「じゃあそうさせてもらおうかな、アナちゃんはいくつ?」


「私は15歳だよ。ルージュちゃんは?」


「私も15!」


 同じ年と分かって、会話はさらに弾む。お互いにゲーム好きっていう共通の趣味もあるしね。


 お互いの職業の話で盛り上がる。


「店は店番を雇ったの。せっかくゲームみたいな世界に来たんだし、冒険もしたくなって」


「店番なんて雇えるの? 」


「うん。お金を払えば、NPCを雇えるの」


 ルージュちゃん曰く、生産系の職業には自分のレベルの他に職業レベルがあるらしい。それで職業レベルを上げると、店を持つ職業の人は、店で出来ることが増えるらしい。初日に職業レベルを一気に上げると、NPCを雇えるようになったそうだ。


 トレーダーは全員最初に店を持てるらしい。さらに店を立てるための資金みたいなのも用意されてるみたいで、どこの建物を借りる、もしくは買って店にするかはもちろん、何を売るかとか、レイアウトとかも自分に決めれるらしい。


 商品は、トレーダーショップで、普通の店で買うより安く買えるそうだ。トレーダーショップの商品は自分の店にいる間は、いつでも店の画面から買えるらしい。


 そんな話で盛り上がっていると、魔物と出くわした。私が【破滅の旋律】で、敵を弱らせ、ルージュちゃんが爆弾でトドメを刺す。いい感じで連携が取れた。


 私達はこの森にいる間だけ、パーティを組もうという話になった。パーティを組むとメリットも多い。パーティを組んでる間、倒した魔物の経験値はパーティメンバーに均等に分配される。パーティを組んでないと、基本的にはトドメを刺したメンバーの経験値となるが。


 後パーティチャットなんかも使える。他にもスキルとか称号によっては、パーティメンバー全員にいい効果をもたらせたりもするのだ。それにパーティを組もうっていう初心者ミッションも達成出来るしね。


 その後も街へ帰る途中に、何体か魔物に出くわしたが、私達2人で、楽々倒せた。


 街へ帰ると、私達はパーティを解消し、代わりに友達登録をした。友達登録をすると、友達のステータスを見れたり、チャットしたり出来る。


「泊まるところとかきまってる? 良かったらあたしの店部屋空いてるからどお?」


「じゃあお邪魔させてもらおっかな!」


「おっけーー」


 ルージュちゃんの店に泊めて貰うことになった。ルージュちゃんの店はいくつか店が並ぶ通りにあった。3階立ての水色の可愛いらしい店。


「可愛い店だねーー。水色好きなの? 髪も水色だし」


「うん、水色好きだから、髪も瞳も店も全部水色ーー。さ、入って入って!」


「じゃあお邪魔しますーー」


 店内は水色で溢れていた。水色の壁紙に、白や水色、青系の色で彩られた絨毯。可愛らしくて、女の子っぽい店だ。


「中も可愛くていいね。思ったより広くてびっくりした」


 中はけっこう広かった。店内にはアイテムや冒険者向けの装飾品が置かれていた。珍しいものもあったので、色々見せてもらう。もう閉店されているので、中にはもちろん人はいない。雇ったNPCは家に帰ったらしい。毎日決まった時間に来て、帰るそうで。


「最初のアイテムガチャで、けっこうな額のマルをゲットしたからね。奮発しちゃった」


 ルージュちゃんは笑いながら言う。私はアイテムガチャってアイテムだけじゃなくて、マルも出るんだ、とか関係ないことを考えていた。


「さ、アナちゃんの部屋はこっち」


  2階にはいくつかの部屋があり、ルージュちゃんの寝る部屋の隣を貸して貰った。ベッドや机、椅子といったものはもちろんお風呂やトイレまで付いていたから驚いた。


「お。いい感じ。部屋ありがとうね」


「私も助けて貰ったし。それに1人じゃ寂しいからね。おやすみーー」


 時計をみると、もう11時を過ぎていた。ちなみに時間間隔は向こうと同じだ。1日が24時間だし、1週間は7日間だ。


「おやすみーー」


 お風呂に入って、ベッドに入ると今日1日を振り返る。今日は隠れ家で、色々ゲットして、獣人の同じ年のこと知り合って……、色々あったな。


 そんなことを考えるうちに眠っていた。



 そして次の日の朝、ちゃんと目覚まし時計をセットしていたので、7時半に起床した。


 ルージュちゃん起きてるかな? と部屋を出ると、2階のリビングのような所に向かう。


 すると、ルージュちゃんはキッチンで紅茶を入れていた。もう起きていたらしい。


「おはよーー。アナちゃんも紅茶飲む? あ、コーヒーもあるよ」


「紅茶お願い!」


「はーーい」


 ルージュちゃんが紅茶を入れてくれた。それだけじゃなく、サンドウィッチもご馳走してくれた。至れり尽くせりだ。


「ありがと」


「今日はアナちゃんは何するの?」


「私は武器屋を見よっかなって。時間があったら、ちょっと森に行こうかな。ルージュちゃんは?」


 魔杖化石を使って、藁人形を武器にしてくれる職人さんを探すつもりだ。見つかるといいな。


「私は店の整理したりとか、店で売るものを買ったりとか」


「なるほど」


「あ、そうだ。夜早く帰って来てくれたら、美味しい料理屋さん紹介するよ」


「うん。ありがと」


 あれ、いつの間にか私がここで暮らすことになってる。ルージュちゃんが迷惑じゃないなら、私的にはありがたいけど、いいのかな。


「今夜も泊まっていいの?」


「今夜なんて言わないでいつまでもいて大丈夫だよ。部屋余ってるし。アナちゃんなら大歓迎だよ」


「なら、お言葉に甘えて!」


 ルージュちゃんの言葉に甘えさせて貰う。宿に泊まると、マルもかかるから助かる。なにより帰る家があるっていいよね。心にゆとりが出来るというか何と言うか。そのうちルージュちゃんに宿泊のお礼もしないとね……。



「武器はやっぱり杖? 」


「藁人形っていうアイテムを魔法の杖に変えて貰うの。アイテムをアイテムの機能や見た目はほとんどそのままで、杖に出来るアイテムをゲットしたから」


「藁人形が武器……。スキルと噛み合って、呪いマスターになれそうだね……」


 呪いマスターを目指そうと思っている。けっこう本気で。


 話しながらの朝食を終えると、私は店を出た。私の藁人形を魔杖化してくれる鍛冶屋を見つけるぞ、と自分で気合を入れる。



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