第71話 宝の守護者
私達は戦闘態勢に入る。ゴーレムも私達に気付いたようだ。警戒した様子で、こちらを見ている。1体を除いて、ゴーレムのレベルは100だった。レベルは高いけれど、回復スキルや防御スキルに特化しており、強い攻撃スキルは見当たらないので、何とかなるだろう。
私はいくつかのスキルを発動した。
「【反転(呪)】【破滅の旋律】」
私はアラト達に反転スキルを見込まれて来たのだ。ゴーレムと私の反転スキルの相性はバッチリ。これで暫くゴーレムは回復スキルの効果が聞かない。
私がスキルを切ったのを確認すると、2人は一気に突っ込む。私はというと、まあ呪ったり、バフを掛けたり、デバフを掛けたり、呪ったり……って感じだ。
アラトは怪しく光る鎌をすごい速さで、振り上げる。リンクスさんの拳は炎を発しており、思いっきり殴りかかる。ヒーローものの主人公とかでいそうである。
2人はすごい勢いでゴーレムのHPを削っていく。
HPが減っていくと、ゴーレムはどんどん回復スキルを使っていく。
やがて、私の反転スキルで、ゴーレムは自滅していった。魔物には知能がないので、HPが減ると、ただただ回復スキルを意味もなく使うのだ。
ほとんどのゴーレムは私の反転効果で自滅していった。ゴーレムの回復量はかなりのものだったので、私の反転で大ダメージを食らった感じだろう。
「アナさんないすっす。便利なスキルっすね」
私達はほとんどのゴーレムを蹴散らし、会話をする余裕さえも出てきた。
「あはは。自滅していくのは中々に爽快感があるね」
ラストスパート。残っているのはボスっぽいゴーレムのみ。このゴーレムのレベルはなんと120。
私達はこの戦いでレベルが大幅に上がった。私のレベルは76から85になった。アラト達は100目前まで来ている。
「ラストスパートやるか。回復頼む」
「ほい。【アラウンドヒール】」
回復スキルを2人に使うと、2人は一気にボスゴーレムに攻め込む。
「【ディアブロウス】」
アラトの鎌から全てを飲み込む闇のようなものが現れ、ゴーレムに鎌を振った瞬間、ゴーレムを闇が包み込む。
「【ファイアーブラッド】」
リンクスさんの拳から現れた炎が全身を包んでいた。体を炎で輝かせながら、ゴーレムに突っ込む。
「【呪い】【破滅の旋律】『防御力デバフのプレゼント』『呪い精霊召喚』」
私もゴーレムを呪う。そしてHPが25%を切ったところで、運試しのスキルを発動する。これが効いたら楽でいいんだけどな。
「【カルタフィルスの呪い】」
私の呪いスキルは成功し、ゴーレムのHPは一気に0になった。経験値とドロップアイテムを落として、ゴーレムは消滅した。
後レベルが87になった。ゴーレム戦で一気にレベルが上がったね。
「けっこうレアなアイテム落としたぜ! 美味しいわ」
「本当っすね。このアイテムとか防御力を10分間3倍にするなんて破格の性能じゃないっすか」
アラトとリンクスさんはいくつものドロップアイテムを回収しながら、愉しそうに笑う。
「後で3人で分けようぜ。ゴーレムのアイテムだけで、来てよかったと思えるわ」
私もチラって見せてもらうと、どのアイテムも高性能だった。こんなに……! と思ったが、良く考えると、ゴーレムは私の反転がなければもっと苦戦しただろうし、このくらい貰えるのが妥当か。
「ゴーレムを倒したし先に進もうぜ」
「うん」
私達はゴーレムの部屋の奥に行く。するとその先には長い廊下が続いていた。
「お宝はこの先っすね!」
「待て、この先はトラップになってるぜ」
先走って行こうとしたリンクスさんをアラトが引き止める。
私も鑑定してみると、トラップが仕掛けられているのが分かる。しかし、鑑定眼で、トラップの場所や種類は分かっても、解除する方法が分からない。
「どうするんすか?」
「全部先に発動させようぜ」
アラトがにやりと愉快そうに笑う。
全部発動……? それをしたら私達の侵入がバレるんじゃ。とそこまで考えて、思い直す。あ、もうバレてたね。気にせず、発動させちゃうか。
「どうやって反応させようか」
「それなら、ルージュちゃんの爆弾とか?」
爆風とかもあるし、衝撃も強い。ほぼ全てのセンサーに反応するのではないだろうか。
「それ採用だわ」
アラトとリンクスさんはいたずらっ子のような顔を浮かべる。
こうして、罠解除のために爆弾を投げつけることになった。残念ながら、この場に、やり方の物騒さに突っ込むまともな感性の持ち主はいない。
そして、1番力のあるアラトが思いっきりルージュちゃん産の爆弾を投げつける。さすがルージュちゃんの爆弾だ。爆発の威力がすごい。頑丈な城の壁に少し亀裂が入ったよ。
爆弾がセンサーに反応し、次々と罠が発動していく。爆音とセンサーの音が奏でるハーモニーは凄まじい。
罠には、センサーに当たると弓が飛んでくるものや、踏むと燃えるもの等などバラエティに富んでいた。
アラトが次々と爆弾を投げ、全ての罠を解除した。
「進もうぜ」
「うん!」
私達は罠を力技で解除しきり、元々罠があった道を進む。我ながらむちゃくちゃな侵入方法だと思う。
私達は一応トラップを解除したとはいえ、元々トラップのあった道なので、警戒しながら歩く。
しばらく歩き、トラップの道を進み切ると、大きな黄金の扉が待ち構えていた。
「この先にお宝が眠ってるんだろうな」
「いかにもそれっぽいっすもんね」
「扉重たそう」
私達は各々思った感想を口に出しながら、扉に手を伸ばした時だった。背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。私は思わず振り返る。
「怪盗ルパン16世参上! これからお宝を頂く」
すると、かっこつけたポーズを決めながら、こちらに走ってくるルパン16世の姿が見えた。
「あいつがアナちゃんの言ってたルパン16世とかいうやつか」
アラトは見定めような目で、ルパン16世を観察していた。
「そうそう! あ、ルパンさん、はぐれちゃったけど、お互い辿り着けて良か……」
私がルパンさんにそう言いかけたところで、ルパンさんが私達の前に立つと、私達を指さして、勢いよく話し始める。
「ゴーレムと罠の解除をしたのは君たちかい?」
「そうだけど……」
「なんて酷いやり方だ! いいかい? 盗みは芸術だ!見張りを倒したり、トラップをボロボロに破壊するなて芸術性0だよ」
なんかルパンさんは暑く熱弁し始めた。言ってることは全く理解できません。盗みに芸術なんてあるものか。
アラトやリンクスさんもなんだコイツと言う冷たい眼差しで、ルパンさんを見つめていた。
「師匠様! お待ちくださいませ!」
今度は甲高い女の人の声が聞こえてきた。そちらを見ると、白いヒラヒラのドレスを身につけた少女がいた。
師匠? 私達はきょとんとしたが、ルパンさんが少女に話しかけているのを見て、納得する。
「良く1人で辿り着けたね。リリィ」
「それ程でもありませんの! 師匠のご指導のお陰ですわ」
とそこまで言いかけて、初めて私達に気付いたらしい。「あら?」と不思議そうにこちらを見つめる。
「あなたちはどなたですの?」
「彼女達とはこの城で出会って、手を組むことになったんだ」
「そうでしたの! 私はリリィと申しますの。お見知り置きを」
「アナスタシアです。よろしくね」
私は一応笑顔で応じる。アラト達の方を見ると、2人とも、リリィさんにもルパンさんにも興味無いと言った感じで、扉を見つめていた。早く行こうと言いたげな様子で。
「行こっか」
「おう!」
アラトが扉に手を当て、ゆっくりと押す。黄金の扉は静かに開いていく。
黄金の扉の先には、金銀財宝や魔法石、武器、美術品等様々なものが眠っていた。




