第7話 冒険者登録とシークレットスキル
「【破滅の旋律】!」
私はすばやくスキルを発動する。地面から音符が浮かび上がり、ブラックファローに命中する。
これでブラックファローは呪い状態となった。残りHPが半分以下になるまでこの呪いは解けない。呪い状態になると、10秒毎に残りHP10%のダメージを受けるので、ブラックファローは苦しそうにしてる。
「『防御力デバフのプレゼント』!」
次に防御力を下げるスキルを使う。これで少しは攻撃が通りやすくなるはず。
護衛の人はお嬢様を守るように前にたちながらも、弓で援護をしてくれた。
私も魔法攻撃を何発か放つ。だがまだHPが4分の1くらい残っている。
「『アーチタクト』!」
指に魔力を込め、ブラックファローに当たるように、指を操作する。見事ブラックファローに当たった。私上達した。昨日いっぱい魔物を倒した甲斐があったよ。自画自賛しながらブラックファローの残りHPを見るとまだ僅かに残っていた。
しぶといな。でもこれで終わり。
「『アーチタクト』!」
私はもう一度スキルを使って攻撃すると、今度こそブラックファローのHPは0になり、消滅した。いくつかのアイテムを残して。私はすかさずドロップアイテムを回収する経験値も割とあって、レベルか8にあがった。
その中には【呪いの遺跡】へのチケットという大変心惹かれるものがあった。呪いのアイテムとかドロップ出来るのだろうか。別に私は呪いを極めたいわけではないんだけど……。呪いスキル持ってるし、呪いで揃えたら強いんじゃないかと思う。
「すごいわ、ありがとう。アナスタシアさん」
「助かりましよ。ブラックファローをあんなに容易く。その手腕見事でした」
リーゼロッテちゃんと護衛の人にお礼を言われた。護衛の仕事だから、近付く魔物を倒すのは当たり前なのに律儀な子だ。
「どういたしまして」
フレリアの花をゲットするという目的も達成していたので、私達は馬車に向かう。行きはあんなにはしゃいでいたリーゼロッテちゃんだが、帰りは疲れているのか、ゆったりと歩いていた。
馬車に着くと、昼ごはんのサンドウィッチを口にする。朝に宿で貰ったやつだ。サンドウィッチは、朝とは違う味で、これもまた美味しい。朝は野菜と卵のサンドウィッチだったが、昼はカツサンドだ。肉がジューシーでいいですな、と心の中で食レポをしていた。
昼ごはんを終えると、町へ向かう。リーゼロッテちゃんは少し観光したいらしい。一緒に観光しようという話になり、私は快くそれを了承した。
オシャレな店が並ぶ通り。リーゼロッテちゃんが見たい! といった店に私達は付き合う感じだ。やっぱり女の子。アクセサリーとか服とかが並ぶ店が好きみたい。服とかウィンドーショッピングするの楽しいよね。
1通りの店を見尽くした。リーゼロッテちゃんはいくつか気に入った服を買っていた。私は何も買っていない。マルを貯めて、強い武器を買う予定なので。
その時、ふとプレイヤーショップが目に入った。あれはプレイヤーがやってるショップだ。私がその店を見ていると、リーゼロッテちゃんが私の顔を覗き込んできた。
「あの店を見たいの?」
「うん、ちょっと気になって」
「なら行きましょう」
プレイヤーショップに入店した。プレイヤーがNPCショップに入れるのと同じで、NPCでも普通にプレイヤーショップに入れるし、買い物も出来る。
NPCはプレイヤーショップかNPCショップの違いなんて分かってないし。自分達のこともプレイヤーのことも普通にこの世界に暮らしてる人だと思ってるからね。
私が入店したプレイヤーショップは、ピンクの壁紙に赤い絨毯とかなり華やかな内装で、女性のお客さんが多かった。
プレイヤーショップには、私達の命であるドゥームソウルの宝石を磨くのに必要なソウルンが売られていた。ドゥームソウルの宝石を1週間に1度磨かなければ、宝石が壊れる。宝石が7つとも壊れたらプレイヤーがゲームオーバーというシステムがある。プレイヤーは嫌でもソウルンを手に入れなければならない。
ソウルンは1つ12万マル。中々に高額だ。ソウルン1つで、7つの宝石を磨けるから、1週間12万マルと考えたらどうだろう。
少し迷ったけど、今日はリーゼロッテちゃんも一緒だし、他の店で売られている金額も見たいので、スルー。
まだ2日目なので、時間に余裕はあるしね。1週間以内に宝石を磨けばいいのだ。
プレイヤーショップの商品を1通り見て満足すると、店を出た。
もう私達は疲れていたし、夕方になっていたので、お開きになった。宿へ行くと、リーゼロッテちゃんのお爺さんが出迎えてくれた。
「護衛ご苦労じゃったのう。ブラックファローを倒してくれたと聞いておる」
「ええ」
「これは冒険者ギルドへの紹介状とお礼じゃ」
お爺さんは直接私に紹介状とお礼を渡してくれた。こういうのって、偏見だけど、偉い人は従者とかに渡して、従者が私に渡すものだと思ってた。
「孫をありがとうの」
「ありがとうね、アナスタシアさん」
笑顔で手を振るリーゼロッテちゃん。お爺さんは朗らかに微笑んでいた。
「こちらこそ」
私も笑顔で手を振った。NPCだけど、本当に人間みたいだった。また会えるといいな。
2人とお別れを済ませると、私は冒険者ギルドに向かう。明日は朝イチで誘いのスライムの隠れ家に行きたいので、先に冒険者登録を済ましておきたかったのだ。
冒険者ギルドには1度行ったので、道は分かる。そんなに複雑な道でもないので、すぐにたどり着くことが出来た。
冒険者ギルドは昨日あんな騒ぎがあったのに、すっかり元通りだった。中に入ると、ギルドの職員は当たり前のようにいて、プレイヤー達で溢れていた。私も冒険者登録の列に並ぶ。
20分くらい待つと、自分の番がやってきた。お爺さんに貰った紹介状を見せると、ギルド職員のお姉さんは驚いた顔をした。
「冒険者登録をする際には通常、依頼を1つ達成してからとなるのですが……。紹介状があるので、この場でご登録が可能となります。それから登録の際には1000マル必要となります。よろしいでしょうか?」
「はい」
私は1000マル支払った。紹介状貰えて良かったよ。紹介状がなかったら、依頼を受けて、またこの行列に並ばなければいけないところだった。心の中でお爺さんに感謝しながら、受付のお姉さんの説明を聞く。
「冒険者にはSS.S.A.B.C.D.E.Fのランクがあります。最初はFからのスタートとなります。依頼を達成すると、ランクが上がっていきます。ランクが上がれば受けられる依頼も増えるので、高ランク目指して頑張ってくださいね! 冒険者登録は完了しました。あなたに祝福があらんことを」
冒険者の証のランクが書かれたカードを受け取る。冒険者登録はあっさりと出来た。ついでにスライムとか狼を狩った時にドロップした毛皮や魔石を半分くらい買い取って貰った。けっこうな金額になったので、うはうはです。
冒険者登録を済ませた私は宿に引き返した。宿を変えるのもめんどくさいので、昨日の宿にもう1泊だけさせて貰おう。ちょっと高いけど、ご飯も美味しいし、ベッドも気持ちいいのよね。
宿に帰った私はメニュー画面を開いていた。始めにするのは、ミッションの報酬受け取り。初心者ミッションの他にも色々なミッションが来ており、クリアすると報酬が貰えるのだ。ちなみに報酬はポーション(小)とか魔除スプレー(小)とか1000マルとかガチャチケット等。
その作業が終わると、次はにするのはガチャを回すことだ。初心者ミッションのいくつかのクリア報酬や誘いのスライムの討伐で、ガチャチケットをいくつか手に入れていた。今所持しているのは、ランガムガチャチケット×5とスキルガチャチケット×1、称号ガチャ×1、SR以上確定ガチャチケットだ。それのチャチケットを回していく。
ガチャの結果はと言うと、普通のガチャチケットはNやNRばっかりだった。使えそうなのは今のところ一つもない。残りは誘いのスライムの討伐で手に入れたSR以上確定ガチャチケットのみ。私は期待を込めて、SR以上確定ガチャチケットを回した。
するとガチャ画面が今までにない光り方をした。これは当たりかな? と思うと、なんと SCR (シークレットレア) だった。
スキル レア度SCR 【反転(呪)】
10分間周囲の敵の回復効果を呪い効果に変えることが出来る。
SCRの存在なんて、ヘルプ画面にも書いていなかった。シークレットってかなりレアなやつだよね。スキル内容がめっちゃ強い。このスキルがあれば、敵は10分間回復出来なくなるわけで。ゲームとかで面倒臭い、回復しまくる魔物とかも容易く倒せる。
難点があるとすればMPの消費量が多いことくらい。MPを20000消費する。いや、私はMP消費20%カットスキルを持っているので、16000か。クールタイムは30分と意外と短い。
しかもステータス補正が、NのスキルはHP+1とかだったけど、このスキルのステータス補正はMP+1000で、セットするとステータスが1000高くなる。これはかなり嬉しい。
さっそくSCRスキルをスキル枠にセットする。他のNとかのスキルや称号も何もセットしないよりいいと思うので、一応セットしておく。NR称号の【見習いマジシャン】やNスキルの【貝ひろい】なんて何に使うのか分からないけど……。
SCRスキルをゲットするっていう通常ミッションもクリアした。報酬は魔杖化石や強化石(極大)、サロアの花の種、金のなる森クエストチケット×1と、今までで1番美味しい。
次にするのはステータスの割り振り。最初のステータスポイント1000と、レベルアップで貰ったステータスポイント70。ちなみにレベルが1上がると、ステータスポイントが10貰えるシステムとなっている。
とりあえず、SCRスキルはMPの消費が激しそうなので、MPを多めに振ろうと思い、MPに770に振った。残りはHP、魔法攻撃力、魔法防御力に100ずつ。
その結果、ステータスはこんな感じになった。
アナスタシア Lv8
HP 1124
MP 37900
物理攻撃力 77
物理防御力 906
魔法攻撃力 5515
魔法防御力 6810
魅力 1023
器用 532
運 1960
ステータスポイント 0
カルマ値 428
ギフト
女神の祝福 鑑定眼 MP消費20%カット アイテムボックス
ふあーー。大きな欠伸がでた。疲れてるのかな。明日は早いし、早く寝ようと決意する。
そそくさと夕食を食べ、明日の準備をして寝た。