第49話 小さな小屋
中は普通の小屋って感じだね。普通に暖炉とか机とかソファがあって、普通に生活出来そうだ。
「疲れたし、一休みしない?」
マロンちゃんはソファを指差す。マロンちゃんはかなり図太い神経してるね……。
「この状況で? 閉じ込められてるけど……」
私の言葉に、ルージュちゃんはうんうんと首を激しく縦に振る。
「向こうが仕掛けてくるのをゆっくり待つのもありじゃないかしら?」
そうなのかなあ。私達は顔を見合わせる。
結局私達は疲労とお菓子の誘惑に負け、閉じ込められた家で、ティータイムを始めたのだった。ルージュちゃんの持つお菓子や紅茶を堪能する。
ホラゲーから一気にほのぼのゲーに切り替わった感じだった。
「美味しいですね! あ、おかわりお願いします」
私達は全員紅茶派だった。コーヒーは苦くて飲めないんだよね。やっぱり紅茶が美味しいです。
閉じ込められた部屋で、呑気にティータイムなんて正気の沙汰じゃないよね……。
そんな呑気なことをしていると、この家の主が怒ったのか、地響きが鳴る。グラグラと地面が揺れる。
地震で、ティーカップやアフタヌーンティーセットが宙を舞い、床にガシャンと大きな音をたてて、散乱する。
「なにこれ? やばいよ!」
「とりあえずここにいたらやばそうだし、出口を探そうよ」
私は地震でぐらついた自身の体勢をなんとか立て直し、そう言った。
「そうですね。こっちです!」
茶々さんの先導で別の部屋へ向かう。隣の部屋はベッドと机が置かれた部屋。ここで寝ているのかな?
窓とかあったら窓から出られるのに、と思ったが、それらしきものもない。
「ほかの部屋も見てみましょうか」
といっても、そんなに部屋はない。この小屋は一階建てだし。あっという間に全ての部屋を見終わった。けれど外に出る手段についての手掛かりはない。
「何もなかったわね……」
「さっき女性の声がしましたが、誰もいませんでしたね」
私達がノックした時に女性の声が聞こえたけど、女性がいる気配は全くない。
他に隠し部屋っぽいのがあるのだろうか。それともこの小屋自体が魔物……とか?
そんな可能性を思い付いた私は、鑑定を使って、この小屋を鑑定する。あまり建物に鑑定を使ったことはないけど。
え? 何これ?
鑑定結果を見て驚いた。この小屋は建物ではなく、魔物だった。この小屋のような魔物の名前は人喰いハウス。迷い込んだ人を食べるという魔物。人喰いハウスの中に入ると、生きて出られないと言われているらしい。
「この小屋は魔物だよ。人喰いハウスっていう名前の」
「ならさっきの声はなんなの?」
「人喰いハウスの声じゃないかな?」
「どうやって倒せばいいのかしら? 中からこの家を壊せばいいの?」
体内を壊せば、何らかの影響は与えられそうだけど。
「HPバーは見えませんが……」
魔物には普通HPバーがあって、どんくらい魔物のHPを削ったかが見えるんだけど、今回はそれがない。HPバーは絶対魔物ならあるはずなんだけど。どこにあるんだろう。
「うーん、あ、そうだ!」
私は近くにあった手頃な花瓶と花に手を伸ばし、藁人形のポケットに入れる。
五寸釘とかなづちでゴスンゴスンと打つ。鑑定で見ると、HPバーがなくても、敵の残りHPが見える。
私の藁人形攻撃で、敵のHPが順調に減っていっているのが分かる。
「あ、そうか! 藁人形で! アナちゃん頭いい!」
3人はなるほどと、感心した顔で私を見つめていた。
「おのれぇぇぇ……。何をしたぁぁぁ」
凄まじい怒り声が聞こえてくる。この声はさっきより低いけど、あの女性の声ではないだろうか。あの声は人喰いハウスの声だったのね。
凄まじい地響きと共に、地面が激しく揺れる。が私は藁人形を打つのを辞めない。やがて、HPは0になり、人喰いハウスは消滅した。
そして私達は人喰いハウスの外ーーさっきの花畑にいた。人喰いハウスの跡地の下に、マンホールのようなのがある。これ下行けるんじゃない?
「行ってみましょうか。ここまで来ましたし」
「そうね。もしかしてだけれど、裏側って、ここのことを指しているのではないかしら?」
「裏側? 地面だから?」
まあ地中は裏側と言えなくもないし、ある意味人喰いハウスの裏側なのかもしれない。
私がマンホールに触れると、自動でウィーンと開いた。中を除くと、階段が続いていた。中は灯りがなさそうだったので、片手に蝋燭を持って、階段を下る。
「なんか気味が悪いね」
「私達、なんか不気味なとこにばっかり来てる気がする」
人喰いハウスもそうだし、朽ちた神殿とか呪いの遺跡も。まあ朽ちた神殿と呪いの遺跡については、気味が悪いのを承知で参加したから何も言えないけど。
「アナちゃんが呪いスキルを持ってるから何か惹き付けてたりして」
「私を呪いホイホイみたいに言わないで」
「話は変わりますけど、ゴキブリホイホイは便利ですよね!」
私達は明るい声で、騒いでいたので、気味が悪いのは全く気にならなくってきた。
しばらく下を行くと、空洞のようなのが見えてきた。空洞を通ると、湖のようなのが広がっており、湖の奥に、光る箱が見える。あれは宝箱かな?
「あれが噂の秘宝じゃない?」
「本当だ! ボートならトレーダーショップで買えるよ。取りに行こ!」
相変わらずトレーダーは万能だ。ルージュちゃんのボートに乗り込んで、湖を渡る。湖の奥の秘宝に触れた時、秘宝が眩く光、光の精が現れた。
光の精を鑑定しようとするが、鑑定妨害系の称号かスキルを持っているのか失敗した。
「あなた達は誰?」
「私達は冒険者だよ!」
先頭で、ボートを漕いでいたルージュちゃんが答える。
「そう……。人間にこの秘宝は渡せないわ」
光の精は冷たい眼差しでこちらを見つめながら、答える。そして私達を攻撃するためか、手を振りあげる。
「どうして?」
私は光の精を思い止めさせるために、話し掛ける。すると光の精は私の方をずっと見つめる。その目には先程のような冷たさはなく、暖かさがあった。
「あなたは精霊……?」
「私は精霊だよ」
私は本当のことを答える。精霊は人間に秘宝は渡せないって言ってたし、精霊なら望みがあるんじゃないかなって思って。
「そう……。あなたは精霊……」
精霊の少女は自分に言い聞かせるように、呟く。
「あなたはその秘宝を守っているの?」
私の問い掛けに、精霊の少女は目を見開いた後、頷く。
「守っているというのは訂正するほど間違っていないわ……。でもそうね、あなたが精霊ならばチャンスを上げましょう」
チャンスって何だろう。私は精霊の言葉を一言一句も聞き逃さないように、唾をゴクリと飲み込む。
「私の作り出す分身体を倒して。そうしたらあなた達の実力を認めて、秘宝をあげる……。私人間は嫌いだけど、精霊は好きよ。だからチャンスをあげるの」
種族精霊を選んで良かった、とこれほど心の底から思った瞬間はない。
秘宝を貰うために、分身体を倒す。せっかくのチャンスだ。私達は武器を構える。
精霊が手を伸ばすと、光が精霊の手の周りに収束し、もう一体の光の精が現れた。
精霊の分身体を鑑定したが、やっぱり鑑定を妨害された。むむ、鑑定が使えないとなると厄介だ。敵の攻撃への対策がたてられない。
光の精霊はいくつかの精霊を召喚する。見た感じ小さな精霊だから、下級精霊かな。下級精霊は通常魔法攻撃を連発する。光の精霊本体は、魔法スキルで私達を攻撃する。
「【反転(呪)】【破滅の旋律】」
もしかしたら光の精霊は回復スキルを使えるかもしれないので、反転を発動する。他の3人も私の援護をしてくれた。
HPが多いのか、中々精霊のHPは減らない。
「【呪い】『アーチタクト』」
いくつものスキルを発動する。やっぱり決め手にかけるかな。少し勿体ない気はするけど……。
「【ファイアーボール】」
私はスキルチケットのスキルを使った。この技は大技で、一気に精霊の残りのHPを削りきった。
精霊も下級精霊も分身体だったのか倒しても経験値は入らなかった。
「見事よ。あなたに資格があると認めましょう」




