第32話 守護ゴーレムの洞窟
あの占い師のおじさんが現れた三日後。特に夜の使徒に狙われたりといったことはなかったので、私達の気は緩み始めていた。
このまま何も起こらないといいんだけどね。私達はゲームエンジョイ勢なので! 夜の使徒を倒そうとか思ってるわけじゃない。そういうのは攻略組が頑張ってって感じだ。
ちなみに今日でゲームがスタートしてから22日目だ。3週間はこの世界にもういることになる。今日はというと、朝からお知らせを確認したり、週初めなので、ソウルンでドゥームソウルを磨いたりした。
私が部屋で今日は何しようと考えていると、コンコンコココンと、リズミカルなノックの音が聞こえた。誰だろ。このリズミカルなノックの主は。
「入っていい?」
続いて聞こえる声。ノックの主はルージュちゃんだったらしい。
「どうぞー」
私の許可が得られると、ルージュちゃんはガチャリとドアを開けて、入ってきた。
私はルージュちゃんに、自分が座っているベッドの横を指差して、勧める。ルージュちゃんは私の仕草を見て、私の隣に腰掛けた。
「アナちゃん今日暇ーー?」
「暇だよ」
今これから何をしようか考えていたところだからね。
「ならちょっと私のクエストに付き合ってくれない?今爆弾の材料を集めてるの! で、この「守護ゴーレムの洞窟」で、私の作りたい爆弾の材料がドロップするらしいんだよね」
「そういうことなら私も手伝うよ」
私の言葉に、ルージュちゃんは嬉しそうに、ぱあっと顔を輝かせた。
ルージュちゃんには私のクエストとか色々付き合ってもらってるし、爆弾の材料集めなら手伝いたい。今日は特にやることもないし。
「ありがと! クエストチケットは2枚あるから、今からいい?」
「ちょっと準備をするから待ってね」
私はよっこいしょと立ち上がると、テキパキと準備をする。私の準備が終わると、2人でパーティを組んで、チケットクエストの「守護ゴーレムの洞窟」に挑む。
クエストチケットを使うと、体がふわって浮く感覚がした後、洞窟の入り口に移動していた。さっそく中へ入る。
中は薄暗い。けれど私が今まで挑んできたクエストチケットと比べると、全く気味が悪いという感じはしない。
「朽ちた神殿」とか「呪いの遺跡」が気味悪すぎたのもあるだろうけどね。
私達は2人並んで、洞窟の中を歩く。その道中に、ルージュちゃんから詳しい話を聞く。
ルージュちゃんは魔力を込めた爆弾を作りたいらしい。この前の「朽ちた神殿」でゴーストを倒せなくて悔しそうにしてたもんね……。
それでその爆弾に魔力を込めるアイテムがこの洞窟の最奥にある宝箱からドロップするらしい。
ちなみに噂だとこの洞窟には回復しまくる鬱陶しいキュアゴーレムがいるそうだ。普通のプレイヤーなら嫌がるけど、私には相性バッチリだね。噂が本当ならだけど。
反転で魔物を自滅させるのけっこう楽しい。楽だし、爽快感があるというかなんというか。
「魔物、全然出ないねーー」
「朽ちた神殿とか呪いの遺跡は序盤からばんばん魔物出てきたから、全部そんな感じかと思ってた」
洞窟をそこそこ歩いてるけど、今のところ魔物には遭遇していない。こんなに魔物に出会わないクエストってあるんだ。
「その分ラスボスが強いのかな? 楽なクエストと思わせて、難しいみたいな」
「なにその上げて落とすみたいな感じ」
「アナちゃんの反転頼りだよーー」
「回復を呪いに変えるのは任せて!」
私達がそんなふうな会話をしていると、少し先に並んでるゴーレムが4体ほど見えた。この洞窟で最初の魔物だ。
右側に2体、左側に2体立っており、ゴーレムの間を通らなければ先へは進めない。ゴーレムを倒さなくても、間を通り抜けたらいいらしいんだけど、ゴーレムは攻撃してくるだろうし、先に倒してしまった方がいいよね。
ゴーレムを鑑定する。
キュアゴーレムLv25
スキル キュアヒール ゴーレムビーム
4体ともステータスはこんな感じ。ルージュちゃんに敵の情報を伝えておく。
「キュアヒールを持ってるよ。後、ゴーレムビーム。ゴーレムのビームらしい」
「ゴーレムビーム? そのまんますぎじゃない?」
「ゲームの技名なんてそんなもんじゃない? 逆にゴーレムが厨二臭いスキル名のスキル打ってきたら嫌だよ」
「確かに」
私達は軽口を叩きながらも、攻撃を始める。
「【反転(呪)】【破滅の旋律】」
私は連続で2つのスキルを発動する。これでゴーレムは呪い状態になった。
隣でルージュちゃんは爆弾を投げまくっていた。ドカンドカンと相変わらず凄まじい轟音だ。
私は通常魔法攻撃を連発する。
ゴーレムはゴーレムビームを打つ。ゴーレムの目からビームが飛び出す。しかし距離があったので、私達には届かなかった。ゴーレムは定位置から移動出来ないっぽい。
「私1回だけでいいから、目からビームを出してみたい。そんなスキルないかな?」
「ルージュちゃんは爆弾に爪ときて、次はビーム? 何を目指してるの……」
「ビームへの憧れない? ビームは子供のロマンだよ」
確かに子供の頃見たヒーロー番組の定番はビームだよね。でも私は悪役の闇系の技が好きだったんだよね。ダークな感じがいいなって。
私達がしばらく攻撃していると、ゴーレムはHPが減ってきたので、キュアヒールを次々に発動する。しかし回復効果が呪いダメージに変わり、自滅していった。
経験値とアイテムをけっこう落としていった。アイテムの中にはルージュちゃんが欲しがっていたものもあったらしい。奥の宝箱からドロップするんじゃなかったの? まあゲット出来たならいいけど。
「やった! これで魔法爆弾が作れるよ! ありがとうアナちゃん」
「どういたしまして。魔法爆弾が出来たら私にも分けて」
物理攻撃手段がない私は敵が近付いて来た時の護身用として、ルージュちゃんの爆弾を持ち歩いているのだ。またいいのが出来るのを楽しみにしてるよ。
「もちろんだよ。1番にアナちゃんに性能を見せるね」
「性能は期待出来そうだねーー」
ルージュちゃんの爆弾の性能は確かだ。私も何度か使っているけど、威力はそれなりに高いし、投げやすい。それに最近ルージュちゃんは店で、自作の爆弾も売り始めたらしいけど、1番の売れ筋は爆弾らしい。
「驚いたぜ。キュアゴーレムを4体とも倒すなんてな……」
私達が喜びあっている時だった。私の声でもルージュちゃんの声でもない声が聞こえた。私は驚きながらも、その声の方を見た。
そして私はさらに驚いた。その声の主は、あの色んな意味で話題になっているプレイヤーだったから。
その声の主はアラト。初日にギルド職員を皆殺しにし、騎士団長を殺し、高額指名手配されているプレイヤーだ。
私は初日に冒険者ギルドで見掛けたから顔を覚えていた。アラトで間違いがない。
なんでここに? チケットクエストはパーティ登録をしているプレイヤーしか同じエリアに行けないはずなのに。
困惑する私達に、アラトは独り言のように呟く。
「エンチャンターとトレーダーの2人がどんなカラクリを使ったのかと思えば……、反転スキルかよ」
なんで私達の職業とスキルを……。少し考えてはっとする。この人も鑑定ギフト持ちなの? 私は鑑定を使ったけど、私よりレベルがおそらく高いのだろう。鑑定出来なかった。
「どうやってここに?」
私の口から思わず疑問が溢れ出た。
「俺のギフトだぜ。他のプレイヤーのクエストに侵入出来る力を持ってるんだよ。クリア出来なそうなプレイヤーのクエストに侵入して、クリアアイテムとリタイアしたプレイヤーの落としたアイテムを両方ゲットするつもりだったんだけどな」
アラトは悪びれも無くとんでもないことを言っていた。そんなギフトがあるんだね。
それにしても他のプレイヤーの落としたアイテムごとゲットしようという発想。さすが初日にギルド職員を皆殺しにしたプレイヤー。発想が違うね……。
「驚いたぜ。まさかキュアゴーレムを倒すなんてな。エンチャンターとトレーダーの2人組がよ」
アラトはどこか愉快そうに笑った。




