第3話 始まりの街
ペガサス王国を選択すると、体がふわっていく感じがして、気が付くと広場の噴水の前のような所に移動していた。そこはまさに中世ヨーロッパの街並み。NPCと思われる街の人達もたくさんいて、活気が溢れている。煉瓦でできた可愛らしい建物が並んでいて、いい感じだ。
ここが始まりの街か。
周りを見回すと、それなりの数のプレイヤーがいた。人間以外にも、エルフとか獣人とか色々。見た感じ獣人とかエルフが多い。耳とか魅力的だもんね。
プレイヤー達は私と同じように胸を踊らせている人や、不安そうにしてる人、帰りたいと怒号を上げている人など様々な人がいた。
とりあえず何からしたらいいんだろ。まずは冒険? それとも泊まる場所とか探した方がいいのかな?
急に街に連れていかれても自由度が高いとやることに困るよね。MMORPGなんかにありがちだけど。
今後の方針を立てようと、スマホを見ると、初心者向けのミッションが来ていた。食堂で食事しようとか、宿に泊まろうとか、モンスターを倒そうとか色々あって、全部クリアするとSR以上確定ランダムガチャチケットが貰えるらしい。
あ、SR以上確定ガチャチケットって言えば、さっきチュートリアル終わった時になんか貰ったよね。ガチャの存在を思い出した私は、さっそく回す。ガチャを回すの好きなのよね。ガチャチケットとか貰うとすぐに回したくなる。
SR以上確定ランダムガチャは、SR以上のものが出るが、スキル、称号、アイテム、武器、防具ランダムで何が出るか分からないらしい。
スキルか武器欲しいなーー、てかエンチャンターの私でも使えそうなの来ますように! こい! そう思いながらガチャをまわすと、
UR【破滅の旋律】
周囲にいるHP50%以上の敵に呪いをかける。呪いを掛けられた敵は10秒毎に、残りHPの10%のダメージを受ける。この呪いは敵のHPが最大HPの50%になるまで受け続ける。
MPはけっこう消費するけど、けっこう強いスキルなのでは!? やった! さっそく破滅の旋律をセットする。このスキル名けっこうかっこいいし、厨二心がくすぐられる。このスキルには魔法防御力100のステータス補正があり、セットすると魔法防御力のステータスが上がった。
ついでに、チュートリアル完了で貰ったアイテムガチャチケットを使い、アイテムガチャを回す。
これは魔除スプレー(少)×1という何とも言えない結果だった。
とりあえず、私は初心者ミッションを進めようと思い、初心者ミッションの内容をよく眺める。やっぱり買い物系が今すぐ出来そうかな? ちなみにショップにはNPCショップとプレイヤーショップがあって、それぞれで品揃えとかも違うらしい。
ショップで買い物のミッションはNPCショップでもプレイヤーショップでもとにかく買い物をすればクリアになる。
お腹も空いたし、NPCのやってる食堂に入ろうかな。プレイヤーのやってる食堂もあるけど、数が少ないのか混んでそうだし。
そう言えば、ここはゲームの世界なのにお腹が空くなんて、不思議な感じだね。体の感覚がリアルとあんまり変わらない。物を触った感覚とかね。
そんなことを考えながら近くにあったこじんまりとした食堂に入る。
プレイヤー食堂もまた今度でいいから行きたいなあと思いながら。にしてももう店出してるなんて早いなあ。生産系の職業には店とか作れる機能もあるっぽいから、その機能を使っているのだろうけど。
私の入った店、マリー食堂は、マリーちゃんっていう獣人の女の子が看板娘をしている店で、そんなに人はいなくて、落ち着いた雰囲気の店だ。私はけっこう好きだな。
店内ではマリーちゃんや他のNPCのお姉さんがオーダーを取りながら走りまわっていた。お姉さんに声をかけて、メニューはパスタやピザなどの洋食がほとんどだったので、ミートソースパスタを頼んだ。
注文した料理を待つ間、私は周囲を観察していた。周囲は1人で料理を食べている人がほとんどだが、中には友達同士なのか、ついさっき知り合っていたものなのか分からないが話している人もいる。一緒にパーティを組もうと話しかけたりしている人もいる。
パーティねぇ。確かに攻略とかするのにはパーティを組むと便利なんだろうけど。このゲームにもパーティという機能は存在して、パーティメンバーとはチャットしたり、一緒にクエストに行ったり色々出来るらしい。
このゲームの世界私が思っている以上に色んなことが出来るっぽい。
周囲の観察にも飽きた私は、重要そうなヘルプをマルを使って解放して、読み漁っていた。ゲームの情報をしっかりと知っていくことは大切だと思うし。
そんなことをして暇を潰していると、注文したミートソースパスタが来た。見た目も色鮮やかで、美味しそうだ。
いただきまーす。さっそくフォークでパスタを取って口に入れる。うん、美味しい。普通に美味しい。あっという間に食べきってしまった。
パスタだけじゃなく、追加で注文したデザートのティラミスも美味しかった。完食すると、NPCにマルを支払って、店を出る。初心者ミッションの店で料理を食べるはクリアした。
腹ごしらえもしたし、次は冒険かな。冒険って言ったら冒険者ギルドだよね。依頼を受けると報酬も貰えるし、冒険者登録すると色々いいことがあるっぽい。
次にいく場所を冒険者ギルドに決めた私は、地図を見ながら、冒険者ギルドに向かう。ここから冒険者ギルドはけっこう近い。少し通りを歩くと、すぐに冒険者ギルドの建物が見えてきた。けっこう大きな建物で、見るものを圧倒するような建物だ。
まさにゲームとかで出てきそうな冒険者ギルドって感じの雰囲気を醸し出している。意気揚々と冒険者ギルドに足を踏み入れたその時、中で悲鳴が起こった。
「きゃああ!!! 」
何?
悲鳴が上がった方を見ると、悪魔のような見た目をしたプレイヤー? がギルドの職員達を殺しまくっていた。
殺されたギルド職員がドロップアイテムを落として、消滅していく。ここのフロアにいたギルド職員は1人として残っていなかった。
このゲームはNPCを殺すことは出来るし、NPCを殺せば経験値や珍しいアイテムなんかも手に入るらしい。その変わり犯罪者以外のNPCを殺せば賞金首になるし、NPCは一応人間みたいな見た目をしているから普通は殺すのに躊躇すると思うんだけど。
それにあのプレイヤー、種族に悪魔を選ぶなんて。悪魔はあらゆるステータス(器用、魅力、運を除く)が5倍になる代わりに、経験値が2分の1になるし、あらゆる国で悪魔は討伐対象なので命を狙われることになるという種族だ。
騒ぎを聞きつけたのかギルドマスターが奥の部屋からやってきたが、易々と悪魔にやられていた。私達プレイヤーは呆然とその光景を見ていた。
ギルドマスターを倒すとその悪魔は、もうここにようはない、とでも言うふうに私を横切って、ギルドの外へ出ていった。その時悪魔の表情が見えた。その悪魔はとても楽しそうに嗤っていた。
騒ぎはどんどん大きくなっていた。騒ぎを聞きつけた街の騎士達が悪魔を追いかけにきたようで、騎士達の集団が何か言っているのが聞こえる。
少し野次馬しようかな、と思った私は外に出て、遠くから見る。あんまり関わりたくはないので、あくまで遠目からだが。
追いかける騎士、悪魔に怯えるNPC、野次馬するプレイヤー、外はすごい騒ぎだった。
「追え! 悪魔を逃すな! 我がペガサス騎士団の名にかけて!」
騎士団長? と思われしイケメン金髪男が声を張り上げる。けっこうかっこいいし、人気がでそうなキャラだ。物凄い速さで、剣を奮う。悪魔も鎌でそれに対抗する。騎士団長は悪魔に善戦していたが、悪魔は数的に不利だと判断したのか、猛スピードで逃げていった。騎士達はそれを追っていく。
さすがにそれを追いかけてまで見ようとは思わないので、またギルドに戻った。依頼を達成するという初心者ミッションをクリアするために。ギルド職員皆殺されちゃったけど、依頼を受けられるのだろうか……。
そもそも冒険者登録出来なくない? と思ったら、依頼を受けるのも冒険者登録も普通に無理みたいだった。ギルド職員にまず声をかけないと行けないらしい。せっかくここまで来たのに。
これ救済処置みたいなのあるよね? さすがに。ないと初心者ミッションクリア出来ないんですが。それに街的にも冒険者ギルドないと困るだろうし。うん、救済処置がある。私はそう信じている。
まあ常設依頼なら、冒険者登録してなくても、魔物を討伐した時のドロップアイテムや薬草何かを買い取ってくれるらしいので、とりあえず魔物を倒してなんか常設依頼で必要としてるものがあれば出そう。薬草も積極的に拾おうかな。それもギルド職員がいなければ買い取って貰えないんだけど……。