第138話 経験値パラダイス
「茶々さんの行こうとしてるその道、さっきも通ったよ! この分かれ道で通ってないのは左だけ!」
「そうなんですか……。全く覚えてませんでした」
「似たような道だからねーー」
私は自作のマップを見ながら、指示を出す。マップがないと、迷うこと必須だ。早いうちからマップを作り始めて良かったよ。
それにしても、このマップ、けっこう高値で売れるのでは! 経験値の宝箱がいた場所も全部メモしてあるんだけど!
次に来る人はこのマップがあれば、迷うことなく楽々と経験値を手に入れられるんだけど、いりませんかね?
そんな現金なことを考えながら、左の道へ1歩踏み出した。
左の道を進むと、また分かれ道に遭遇する。どんだけ分かれ道が多いんだ。この経験値の迷宮だけで日が暮れそうだ。
「地図が思ったより大きくなりそうだなーー」
大きめの紙を選んだんだけど、足りるかな?
「紙足りないなら、継ぎ接ぎする?」
「いや、何とかこれで頑張る」
継ぎ接ぎはあんまりしたくないんだよね。1枚の紙で収めたいというかなんというか。
「そっか」
分かれ道を何度も私達は選び取る。同じ道にきたら、違う道に……、また同じ道に来たら、違う道に……。そんな気の遠くなるような作業をしながら、経験値の宝箱を倒していく。
もちろん時間がかかるので、とっくに外は日が暮れている時間になっていた。地下迷宮に日が暮れるという概念はないけど。
「まだ続けますか?」
茶々さんは私とマロンちゃんを気遣ってくれたのだろう。茶々さんは私とマロンちゃんの方を見ていた。
「ここで休憩は無理そうだし、続けようよ」
いつも真っ先に休憩を所望する私の言葉が意外だったのか、ルージュちゃんが驚いていた。目をくるりと丸くする。
「アナちゃん、大丈夫なの?」
「いや、とっとと経験値集めたいなって思って。休むならちゃんとしたところで休みたいし」
「確かに」
「それにマッピングもそろそろ終わりそうなんだよね。通った道が多くなったし」
そう。いくつかの分かれ道のほとんどを私達は通過していた。だからもう残された道は少ないと思う。
「ラストスパートは急ぎ目で行きましょう」
元々急ぎ目ではあったのだが、さらに私達はスピードアップする。どんどん経験値の迷宮を進む。
「迷宮を進む〜〜よ〜〜♪ どーこまでも〜〜♪」
ルージュちゃんが急に、鼻歌を歌い始めた。リズミカルでとても陽気な様子である。
「どしたの、急に」
私が尋ねると、ルージュちゃんはリズムに乗りながら、答える。
「テンションを〜〜♪ あげようと〜〜思ったの〜〜♪」
「ルージュちゃん、めちゃくちゃ疲れてない?」
ミュージカル化するルージュちゃんというハプニングには見舞われたものの、その後の私達は最後のプレゼントと言わんばかりに、大きな経験値の宝箱と出くわした。その宝箱は今までの宝箱よりたくさんの経験値が入っていた。
そのお陰で私のレベルは272にまで上がった。
そして、その宝箱以降は経験値の宝箱と出会うことはなかった。マッピングを終え、私達は地図を見ながら、経験値の迷宮を脱出した。
「アナちゃんがマッピングしてくれたお陰でスムーズだったね」
「中々にいい地図出来たし、これ売ったらお金にならないかな」
「桜子さんとか買い取ってくれそうですよね!」
経験値の迷宮を脱出した私達は、手頃な穴場を見つけ、テントを広げる。私は寝袋の中で、毛布を体に巻き付けて、丸くなっていた。
そして、その寝袋の中でステータス画面を弄り始める。
経験値をいっぱいゲットしたので、ステータスポイントを割り振るのだ。
スキルポイントはまだ保留。たくさんポイントを貯めてからの方が、強いスキルと交換できるし。弱いスキルの数を揃えるより、少なくても強いスキルか欲しい。
229から272まで、この短期間でよく上がったものだよね。ステータスポイントはけっこう増えた。
とりあえずMPは8万超えたし、次はHPかな。気分に任せ、軽くステータスを割り振る。
私は少し考えて、全てHPに割り振った。
「そーいえばさ、皆はステータスとか何に趣を置いて降ってるの?」
「私はHPとMPと器用と物理攻撃力にバランスよく降ってるよーー。私は生産職だから皆とはちょっと勝手が違うけどね」
ルージュちゃんはスマホから顔を上げて、答える。ルージュちゃんは生産職だし、バランス良くって感じなんだろう。私も生産職のことはよく分かってないし、なんとも言いがたいものがある。
「なるほど! 2人は?」
「私は物理攻撃力がメインで、後HP、MP、魔法攻撃力に少しって感じかしら。防御は捨ててるわね」
魔法銃を扱うマロンちゃんはステータス画面を眺め、考える仕草をする。
「拙者は物理攻撃力とHPがメインで、物理防御力や魔法防御力、MPに少しって感じですね」
茶々さんはステータス画面を私に見せながら、教えてくれた。
「そっかそっか」
皆何だかんだバランス良くステータスを割り振っていた。
まあ大体のプレイヤーが戦闘スタイルにあうように、バランス良くステータスを割り振っているんだけど。
私はMPがメインで、HP、魔法攻撃力、魔法防御力がサブになるのかな。
たまに、極振りで最強になっているプレイヤーもいるが、極振りすると、極端な戦いになるからね……。
魔法攻撃をとったら、打たれ弱くなったりとか、HPをとったら、攻撃手段がなくなったりね?
まあ魔法攻撃力に極振りしたウィザード最強とか言われてる人はAmaterastにいた気がするけど、その人はめちゃくちゃ頭が良くてMPや魔法攻撃力の初期値が桁違いだったらしいし。
とあるHP極振りのタンクは、攻撃を受けるのが大好きなドマゾ変態らしい。
そーいう天才とか変態しかいないんだよ、極振りは。
極振りは憧れるけど、バランスを大事にしないとね。
私はそんなことを考えながら、そっとステータス画面を閉じた。
アナスタシア Lv272
HP 20820
MP 80150
物理攻撃力 77
物理防御力 906
魔法攻撃力 14165
魔法防御力 12310
魅力 1023
器用 532
運 2160
ステータスポイント 0
カルマ値 2012
ギフト
女神の祝福 鑑定眼 MP消費20%カット アイテムボックス
アクティブスキル
『ダークアラウンド』『防御力デバフのプレゼント』
『リヴァインキュア』『大地の舞』『アーチタクト』
『闇精霊の導き』『呪い精霊召喚』『呪い精霊王召喚』『精霊契約』
コモンスキル
SCR【反転(呪)】LE【暗黒魔法】 UR【破滅の旋律】UR【呪浄化】UR【ピッキング】UR【カルタフィルスの呪い】UR【キュアアヴラ】SSR【アラウンドヒール】SSR【黒魔法】 SSR【シャボンブレイク】 SSR【スリ】 SSR【リジェネエリア】 SR【呪い】SR【忍び足】SSR【古代文字解読】LE【水の都の魔法陣】
称号
LE【人魚姫の舞】LE【海の住人】UR【ベルゼブブの加護者】UR【呪い姫】 UR【幸運を受けしもの】SSR【古の呪術師】SSR【夜の使徒に抗うもの】SSR【御伽の迷い人】 HR【秩序者】R【水泳好き】NR【見習いマジシャン】NR【花屋の娘】