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第14話 野良パーティは地雷なのです。

 そして次の日、私は集合時間の15分前くらいに、集合場所であるギルドの雑談場所へ来ていた。私が来たのは3番目だ。ホストの茶々さんと重装備の男性はもう来ていた。


 雑談をしながら、他のメンバーが来るのを待っていると、私の後に3人やってきた。この3人は知り合い同士らしい。親しげに話していた。


  9時になった時点で、6人のメンバーが集まった。なので、このメンバーで、呪いの遺跡に挑もうという話になった。


 まず初めに自己紹介をする。


「拙者は茶々と申します。職業はくのいちです。クエストチケットをたまたまドロップしたので、パーティメンバーを募集しました」


 茶々さんは黒髪のロングヘアをさらさらとなびかせて言った。服も和服で、くのいちって雰囲気が伝わってくる。くのいちは女性限定の職業で、PVPが強いって言われている職業だ。


「俺はライアン。職業はパラディンだ。よろしく頼む」


 次に自己紹介したすごい重装備な人の職業はパラディン(守護者)らしい。タンク役職ならその重装備も納得だ。タンクは盾役なので、防具がどうしても重装備になる。


 来た順に自己紹介している感じなので、次は私の番か。私はぺこりと会釈して、自己紹介をする。


「アナスタシアです。職業はエンチャンターです。呪いの装備やアイテム集めてます。よろしくお願いしますね」


「私はリナよ。職業はプリースト(聖術士)。強い武器をドロップしたらいいなあと思って参加したの。よろしく」


 私の次に自己紹介したのは緑の髪の気の強そうな女性だ。


「俺は拓斗。職業はファイターな。よろしく」


 金髪の派手そうな見た目の人はファイター(格闘家)らしい。リアルでも格闘ゲーとかやってそうという感想を勝手に抱く。


「僕は雄司です。よろしくお願いしますね」


 最後に自己紹介したのはシーフ(泥棒)の青年。眼鏡を掛けた気弱そうな青年だ。


 職業バランスは割といい気がする。前衛も後衛もいるし、職業被りもない。


「ならこのメンバーで行きましょうか」


 私達はパーティ登録をした後、一斉に呪いの遺跡のクエストチケットを使って、呪い遺跡に飛ぶ。呪いの遺跡は私達だけのオリジナルエリアなので、他のプレイヤーが乱入することはない。


 呪いの遺跡に着いた。今の時間帯は朝なのに、周囲は真夜中のように暗い。私達の目の前には灰色の遺跡が広がっていた。呪いの遺跡というだけあって、とても気味が悪い。時々、悲鳴のような変な声も聞こえるし。


 私達はパラディンのライアンさんとファイターの拓斗さんを先頭にして、2列で進む。最後尾は私とウィザードのリナさんだ。まあセオリー道理の隊形である。


 私達は呪いの遺跡へと続く道へ歩く。下は石で敷かれた道で出来ている。所々に血痕の染みが出来ていて、それがさらに不気味さを煽る。


 私達は周囲を警戒しながら歩く。最後尾の私は後ろを時々振り返りながら、背後を警戒する。そんな時、前から人魂のような妖怪が3体現れた。私はすぐに鑑定する。


呪われた魂 Lv10

スキル 呪い 闇弾


 私の持ってるSRの呪いスキルと同じスキルだ。このスキルのことをパーティメンバーに伝える。


「私は敵のスキルが分かるスキルを持っているのですが、この魔物は呪いと闇弾を持っています。1度でも敵のダメージを食らうと、3分間呪い状態になります」


「情報提供感謝します」


「了解した」


 くのいちの茶々さんとガーディアンのライアンさんはお礼を言う。


 でも敵のダメージを食らわないって難しいよね。近距離系の役職にとっては。


「俺が壁役になるから、皆は攻撃を受けないように、倒してくれ」


 ガーディアンのライアンさんは盾役を申し出てくれた。敵のヘイトを受けてくれるのは助かる。そうやって倒そうと思った時、ファイターの拓斗さんは1人で勝手に走り出した。そして1番右の呪われた魂を拳で殴る。しかしその隙に他の2体に、闇弾と呪いでかなりのダメージを受ける。


 私達は慌てて、援護に回る。


 私はとっさに通常魔法攻撃を連打した。プリーストのリナさんも通常魔法攻撃を連打する。そして最後の1体は茶々さんが刀で切った。


「ちょっと、大丈夫? 拓斗」


 拓斗さんと知り合いらしいリナさんが駆け寄って、回復魔法をかけた。


「何やってんだよ、パラディンはヘイト集めろよ」


 拓斗さんは怒り出した。自分が人の話も聞かずに、勝手に走り出した癖に何を言ってるんだか……。これは地雷かな、と1人で心の中思った。この人は面倒くさそうなやつだ、絶対。


 多分自分の思い通りに敵が倒せなかったから、八つ当たりしてるんだろうな。いるよね、こういう何でも人のせいにして切れるやつって。


「本当よね、あんたがしっかりしないから、拓斗がすっごいダメージ受けたじゃない」


 パラディンのライアンさんを攻めるリナさん。ライアンさんに全く非はないのに言ってることがむちゃくちゃだ。


「そうですよ、パラディンなのにヘイト集めもしないんですか? それにエンチャンターのあなたもくのいちのあなたも使えないですね」


 悪口を言われたので、睨んでやった。そしたらシーフの雄司さんは目を逸らした。この3人衆は地雷だなあ。心の中で溜め息を吐いた。というか使えないって何なのか。使えないのが来るのが嫌なら3人で挑めばいいのに。


「お前が勝手に走りだしたんだろ」


 正論を言うライアンさん。


「うるさい! 黙れ」


 怒鳴る拓斗さん。正論に言い返せなくなって、怒鳴るって典型的な馬鹿のする行動だよね。呆れた。


「過ぎたことですから、仲間割れは辞めましょう。それから無理な単独行動は辞めてください」


 これにはさすがにホストの茶々さんが止めに入った。ついでに拓斗さんにも釘を刺していた。


 私はこの地雷3人衆リタイアしてくれないかな、なんて思っていた。こんなやつらといると精神衛生上疲れそうだ。


 私達は最悪な空気のまま、遺跡へと向かった。このパーティメンバーなら、レベルを上げてから、ソロで行った方が良かったかもしれない。ついてない。最初にこの3人がこんな性格だって分かってたら絶対来なかったのに。心の中で愚痴を零す。



 またしても魔物が現ると、拓斗さんが特攻しにいく。それをリナさんと雄司さんが援護していた。けど3人だけじゃ危なそうだ。仕方がないので、私達3人も攻撃に加わる。


 ライアンさんが最後の1体を倒すと、武器進化石を10個落とした。武器進化石は武器を進化させるのに必要で、けっこう貴重なアイテムだ。1つの武器を進化させるのに複数の進化石が必要だし、レアリティが上がれば上がるほど、進化石の必要数は増える。最大レアリティまで進化させるのにはかなりの進化石が必要だろう。


 基本的に敵が落としたものは、パーティで話し合って、誰が貰うか決めるんだけど……。


「俺が1番最初に敵に攻めていったんだ。俺が貰う」


「そうよ。これは拓斗のものよ」


「その通りですね」


 拓斗さんと拓斗さんの金魚の糞同然のリナさんと雄司さんがそう主張する。


「これは全員で分け合うべきです。止めを刺したのはライアンさんですし」


 茶々さんの主張を無視し、拓斗さんは無理やり武器進化石を奪い取った。こいつらまじで、何で茶々さんのパーティに参加したの?


 そして、遺跡の入り口に、地雷3人衆は我先にと駆け出して行った。残された私達3人は、はあと溜め息を吐きながら、渋々着いていく。


 遺跡の入り口には5体のゴーレムがいた。そのうちの2体はキュアゴーレムじゃないかな。誘いのスライムの隠れ家で見た回復するゴーレムと見た目が同じだ。一応鑑定する。


ゴーレムLv10

粉砕パンチ 鉄壁


  3体のゴーレムは全部この2つのスキルを持っていた。


キュアゴーレムLv10

キュアヒール 鉄壁


 少し他の3体とは見た目が違うこの2体のゴーレムは、やっぱりキュアゴーレムだった。


 このゴーレムは私の【反転(呪)】スキルを使えば、イチコロだろう。しかし私は何もせず黙って見ていた。どうせ私が倒してもこの3人が横取りするだろうし。


 私はこの3人がリタイアするのを待つことにした。ゴーレムは攻守ともに優れている。ファイターは火力があるけど、シーフとプリーストはほとんどない。絶対に鉄壁と回復持ちのゴーレムのHPを削りきれないだろう。


 それにゴーレムのパンチはかなりの威力だ。ヒーラーであるリナさんのMPが尽きたら、あの3人は終わりだ。リタイアするしかなくなる。


 私は援護に行こうとする茶々さんとライアンさんを引き止めた。


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