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第125話 脱出

「リズムちゃん! 石! 貸してもらえない?」


 私が急に大声を出したのに驚いたのか、リズムちゃんは体をびくっとさせる。


「石……ですか?」


 一瞬動きが止まったリズムちゃんだったが、私の顔を見て、慌てて石を探し始める。


 しばらく、アイテムボックスを漁ったいたリズムちゃんだったが、ある時顔を上げた。目当ての石を見つけたらしい。


「あ、その、これですよね……?」


 リズムちゃんが探し出した石を手早く受け取ると、私はお礼をいいつつ、はにわに直行する。


 早く戻りたい一心だった。


「ありがと! えっと、これをこうして……」


 私は大きなはにわの手の上に、石を乗っける。こうかな……?


 私が石を乗せると、はにわはかくかくと動き出し、手を上に掲げた。


 他のはにわにも石を乗っけていく。


 私は3体全てのはにわに石を乗っけた。


  6体のはにわ全てに石やら鍵やらをセット出来たことになる。


 すると、はにわ全員が光出す。そして、辺りは眩い光で包まれた。


 余りの眩しさに目が眩む。少しの間、白い光が辺りを包み、光が収束すると、はにわ6体に囲まれた中央の床がきらきらと淡く輝いていた。


 あそこに行って、私はボス部屋もどきに飛ばされた。今度もあそこに乗れば、元いた場所に飛ばされる可能性は高いだろう。


「リズムちゃん、もしかしたら、あそこから帰れるかも!」


 私の言葉に、眩さのためか、手で目を押えていたリズムちゃんが目を開き、顔を上げる。


「あ、あれは……。アナスタシアさんがいなくなった時もあんな感じでした……」


「そうだったの? 何にしても入ってみよ」


 私がはにわの中央に駆け出すと、慌てたようにリズムちゃんも私に続く。


 私達2人がはにわの中央に立つと、私達はまた光に包まれる。眩しいので、目を閉じてしまう。


 この演出、わかりやすいけど、目がちかちかするんだよね……。


 そして、私たちが次に目を開いた時、私達はこの帰らずの地へ来る前にいた祭壇のところに戻っていた。


 良かった、戻れた……。あのままあそこから出られなかったらどうしようと思ったよ。



「やった! 戻れたよリズムちゃん」


「よ、良かったです……」



 リズムちゃんはほっとしたように息を吐いた。私達は元の場所に戻れた喜びを噛み締める。


「アナちゃん!? それにリズムちゃんも!」


 聞きなれた声が私の耳に響く。その声を聞いて、私は一気に不安から開放された。


 ルージュちゃん達が驚きと安堵の表情を浮かべながら、駆け寄ってきた。


「良かったです! アナさんがいなくなって、拙者達もそちらに行こうとしたのですが、出現した魔物たちに阻まれて……。本当に無事で安心しました」


「アナなら大丈夫だと思っていたわ」


「良く言うよ! マロンちゃんすっごい不安そうな顔してたのにーー」


 皆は次々に口を開く。ルージュちゃんの言葉に、マロンちゃんは恥ずかしそうにしていた。


「何とか帰ってきたよ! リズムちゃんのお陰でもあるんだけどね」


 そう言いつつ、振り返ると、リズムちゃんはいつの間にかいなくなっていた。


「リズムって子なら、さっき猛スピードでこの部屋を出ていったよ」


 ゼノンは肩を竦めながら、扉を指さす。


「いつの間に!? せっかくだから、友達登録してもらおうと思ったのに」


 リズムちゃん、すごい速さだ。ちゃんとお礼もいいたかったなあ。


 私はかなりがっかりした。


「リズムちゃんと一緒だったんだね。てゆーか、何があったの?」



 ルージュちゃんの言葉に、その場にいた全員がうんうんと頷く。


 誰もが何が起こったのか気になっているのだろう。私は皆の疑問に答えるため、順番に説明する。


 手が引っ張られ、帰らずの地へ飛ばされたこと、怨念を倒したこと、魔法陣を手に入れたこと、古代文字を読むスキルを手に入れたこと、古代文字の内容などなど……。


 皆は真剣な顔つきで私の話に耳を傾けた。私達はよく話していて話が脱線するが、今回に関しては、長々と話したのに珍しくそれが起こらなかった。



「なるほど! つまり、色々あったんだね」


「それはまとめすぎですよ、ルージュさん」


 その2人のやりとりを残りのメンバーは微笑ましい目で見ていた。


「まとめすぎちゃった! その魔法陣、ストーリーでまた関わってきそうだねーー。大事にしなきゃじゃん」


「大事にもなにも、外せないんだけど。呪いみたいでなんかやだ」


「え、外せないの? スキル枠……」


 ルージュちゃんだけでなく、他の皆も驚いた顔をする。


「そうなんだよーー。スキル枠がひとつ無駄になる。今んとこは過剰になってるだけだからいいけど」


「あー、ね」


「まあステータスが優秀なら1つくらいいいじゃないですか。LEなんでしょう?」


「うん……」


 そうだよね、LEだもんね。ゲーム攻略に役立つスキルのはずだし、素直に喜んでおこう。


「とりあえず、またこの神殿を散策してみるか? まだ古代王国にまつわる何かがあるかもしれないからな」


「そうだねーー。私も古代文字読めるようになったし!」


 私達はこの水の都の跡地の探索を続行することにした。


 といっても、もうほとんどの部屋は見尽くしたんだけどね。


 私達はこの祭壇の部屋を出て、先の部屋へ進む。先の部屋というか、地下って行った方がいいかな。


 階段を下り、神殿の地下部分に私達は足を踏み入れる。大体後暗いことをしているのは地下だって相場が決まってるし、地下に何かあってもおかしくないよね。



 地下はいくつかの牢屋があった。ここに罪人なんかを閉じ込めていたのだろうか。


 たくさんの怨霊達がいた。ここの怨念達は、アンデッド系の魔物なので、呪浄化で瞬殺させてもらう。


「【破滅の旋律】【呪浄化】」



 この2つのスキルコンボで、数百体いた怨霊達を蹴散らしていく。


「安らかに眠れーー。来世は幸せに!」


 そんな心にもないことを口ずさみながら、怨念達を全て浄化した。


「お坊さんみたい」


「お坊さんはもっと威厳がありますよ!」


「私に威厳がないみたいな言い方だね?」


「そんなことはないですよ!」


 私は緊張感から解放され、リラックスして、冗談を言い合えるくらいになっていた。


「ここが地下牢の最奥かな。僕達はけっこう歩いてきたからね」


「え、もう終わり? ボス魔物は?」


 私がそう言うと、皆は呆れた顔をした。


「さっきアナちゃんが倒した大っきいやつがボス魔物だったんじゃないの?」


「え、あれ? 弱かったし、ボス魔物って最後の部屋にいるもんじゃないの」


「強いも弱いも、呪浄化で1発でしたからね。それにボス魔物が最後の部屋とは限りませんよ」


「そっかあ。もっと浄化したかった……」


 少し残念だ。浄化楽しいんだよね。レベルがさくさく上がるし、じゅわあって魔物が瞬殺出来るし。


 私のレベルは魔物を狩りまくったことがあって、221にまで上がっていた。地下迷宮にきてからレベルがガンガン上がっている。


 来て正解だったよ、地下迷宮。教えてくれた桜子ちゃんには色々情報を渡さないとね。


「もう地下には何もなさそうだな。引き返すか?」


「そうだね。でももう夜だし、今日はこの神殿で休んで、明日から海を進むってことでいいんじゃないかい?」


「ゼノンのそれが良さそう! でも休むにしても地下牢は嫌だな……」


 牢屋ってなんか嫌だよね。居心地もそうだし、響きもそうだけど。自分が罪人になったみたいだ。


「なら1階に戻りましょう。それなりに綺麗な部屋がたりましたから、そこで休みましょうよ」


 私達は茶々さんの案を採用することにした。シグレやゼノン、マロンちゃんは地下牢で休んでもいいっていう感じだったが、私とルージュちゃんが全力で拒否した結果である。


  1階に戻り、綺麗な部屋に行く。


 リズムちゃんはこの神殿をもう出ていったのかな。


 そう言えば、他のプレイヤーも全然見ないや。


 そんなことを考えながら、眠りにつく。


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