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第120話 覚醒スキル

 ついに覚醒スキルを! 私はさっそく覚醒スキルを確認する。


 覚醒スキルはユニークスキルを進化させたようなスキルと言われているが、実際はどうなのだろう。


 覚えた覚醒スキルは[カース召喚ex]。カースちゃんを召喚するっていうのは変わらないみたいだけど、何が違うんだろう。


 私のユニークスキルの性能はこうだ。


ユニークスキル[カース召喚]

巨大な藁人形であるカースを召喚出来る。カースに触れている間、敵は10秒毎に、残りHPの10%のダメージを受け、味方は10秒毎に、最大HPの10%を回復する。カースに触れても、自分のHPは回復出来ない。カースは自分の呼びたい時に、いつでも呼べる。ただし、カースを召喚している間、1分毎に、残りHPの10%のダメージを受ける。


 そして、覚醒スキルの性能はユニークスキルより大幅に高くなっていた。


覚醒スキル[カース召喚ex]

巨大な藁人形であるカースを召喚出来る。このカースは分裂したり、姿形を変えたりすることが出来る。カースに触れている間、敵は10秒毎に、残りHPの10%のダメージを受け、味方は10秒毎に、最大HPの10%を回復する。カースに触れても、自分のHPは回復出来ない。カースは自分の呼びたい時に、いつでも呼べる。ただし、カースを召喚している間、1分毎に、残りHPの10%のダメージを受ける。




 こっちのカースちゃんはどうやら分裂出来るらしい。いくつもの数に分裂出来るらしいから、分裂させて、カースちゃんを仲間に1人1体持たせたら、永遠にHPを回復出来るよね。使い方によっては、最強のヒーラーにもなりうる。


 魔物の群れと戦う時も、分裂したら、同時に何体もの魔物を呪える。今までより、戦略の幅がかなり広がりそうだ。


 私はかなり強い覚醒スキルに大満足だった。早速試したい。魔物の群れ、来ないかな?


「どうだったの? アナちゃん」


「見てのお楽しみ!」


「分かった!」


 私は覚醒スキルを使いたくてうずうずしていた。厨二病なキャラがいう「俺の右腕が疼くぜ」っていう感覚だ。


 私達は重苦しい扉を見つけたので開ける。大体こういう扉の部屋には何かあるのがこのゲームの法則だ。


 中に入ると、お祈りをする祭壇のようなものが置かれていた。ますます臭いますな。絶対何かある。


 そう思って、私達が足を踏み入れると、地面から魔法陣が現れ、たくさんの魔物が現れた。


無き祈り人の亡霊Lv210

スキル 怨念 シャドウブレイク


 たくさんの亡霊達が私達を取り囲む。正直いってかなりホラーで怖い。ホラゲーみたくなってる。おかしいな、このゲームmmorpgのはずなのに。


 隣を見ると、ルージュちゃんは「ひいっ」と顔を引き攣らせていた。


 マロンちゃんは楽しそうに笑みを浮かべ、残りの3人は涼し気な顔をしていた。反応は色々である。


「【反転(呪)】[カース召喚ex]」


 自分に反転を使った後、私はさっそくカースちゃんexを召喚する。すると、私の体から怪しげな紫の光が出現する。そしてそれが私の頭上で魔法陣となって、魔法陣の中から藁人形ことカースちゃんが現れた。


 カースちゃんexの見た目は特にカースちゃんと変わらない。一応カースちゃんとの見分けをつけるために、カースちゃんexのことをカースさんと呼ぶことにする。


 なんでさんづけかと言うと、覚醒スキルの方が強そうだから。



「カースさん、50体くらいに分裂できる?」


 私はカースさんにそう指示する。50体はいきなりすぎたかな? と思いつつも、カースさんの同行を見守る。


 カースさんはこくりと首を振って、頷く。そして、本当に50体くらいに分裂した。分裂した分だけ、サイズは小さくなっていたけど。


 カースさん可愛いな。小さくなって、お人形さんみたい。



「すごい! 藁人形がいっぱい! ミニサイズで可愛いーー」


 ルージュちゃんは爆弾を投げながらも、視線はカースさんを追っていた。


「でしょでしょ」


「カースさんを1人1体持ってって、回復してくれるよ!」


 私はそう言った後、分裂したカースさん6体に、回復をお願いした。


 カースさんはそれぞれについていき、減ったHPを回復していった。


 そして、残ったカースさんには魔物に触れるように指示を出す。


「カースさん、魔物を呪って!」


 大量のカースさんはそれぞれ違う魔物に近付き、呪っていく。たくさん魔物がいたが、カースさん一体につき、一体の魔物を呪えるので、すごい速さで魔物のHPが減っていく。


「もっと、分裂できる?」


 私がそう訪ねると、カースさんが2倍の数になった。またもや、カースさん一体につき、1人の魔物を呪う。


 そうしていくと、あっという間に魔物を倒しきることが出来た。今まで、魔物の群れにあんなに時間を割いていたのが嘘みたいだ。



 大量の魔物を倒したので、レベルが202に上がった。そして、ドロップ品もそれなりに美味しかった。


「瞬殺だったわね……」


 マロンちゃんは唖然として魔物がいた場所を見つめていた。皆はその言葉に肯定とばかりに、頷く。



「いいなあ、アナちゃんの覚醒スキル! 私も早く覚醒スキルほしいーー」


 唖然とした空気をぶち壊したのはルージュちゃんだ。屈託のない笑顔で私に飛びついてくる。


 ルージュちゃんがすごい勢いできたので、私はバランスを少し崩す。


「もう少しで手に入りますよ!」


「だといいなあ、茶々さんとマロンちゃんももうちょいだよね?」


 ルージュちゃんは私から手を離して、2人を指さす。


「そうね」


「……この祭壇なにかあると思うか?」


 祭壇の前にいたシグレに言われ、覚醒スキルで盛りあがっていた私達は真剣な顔に戻り、祭壇の方へ視線を移す。


 祭壇には特におかしな点はなさそうだけど……。そう思いつつも、祭壇に近付く。


 そして、祭壇の目の前に来たところで、私はある違和感に気付いた。


「祭壇が浮いてる……?」


 祭壇が数センチくらい、地面から浮いていた。なんで今まで気づかなかったかったんだろう。


 そう思いかけて、はっとする。そっか、魔物がいっぱいいて、祭壇が隠れていたからだ。


 それに、少しくらい浮いていたところで、注意してみないと気付かない。



 けど、どうして浮いてるの? 浮いているからには、何かあるはず。


 そう思って、私は祭壇の前でかがみ込んで、下を覗いてみる。けれど、特に何もない。ただの床が広がっていただけだった。


「何なんだろうね、この祭壇」


 ルージュちゃんはお手上げとばかりに手を上げる。


 マロンちゃんは祭壇に触れたり、叩いたりしていたが、やがて諦めたように祭壇から離れる。


「何もなさそうだね」


 私達の様子を静かに見守っていたゼノンは次の部屋へいこうと、扉の方を見る。


 皆は祭壇の調査を諦めたようだ。


 うーん、けど何かあると思うんだよな。本当にただ浮いているだけなのかな……?


 第六感のようなものが、この祭壇には何かあると告げていた。だから、私は祭壇から離れることはしなかった。


 私は祭壇のあちこちを触れ、見つめる。うーん、私はふと、祭壇の下と床の間に手を入れてみる。ここはホコリだらけだろうけど……。


 勇気をだして手を入れたものの何も無かった。私が手をひっこめようとした時だった。私の手が何かに掴まれた。


「きゃあ!」


 私は抵抗しようとしたが、強い力に引っ張られ、私の体は祭壇の下へと吸い込まれていく。


 咄嗟のことに目を閉じる。


すると、腕を引く強い力が弱まると同時に、どすんと落ちる感覚がした。その後、体が地面にぶつかるような鈍い感覚がした。


「痛たたた……」


「あ、あの……、だ、大丈夫で……すか?」


 私が打ちつけた体を抑えていると、頭上から声がかかる。その自信なさげの声の持ち主はリズムちゃんだった。



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