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第118話 地下迷宮の深海

 十六夜との戦闘が終わった次の日。私達は深海エリアに来ていた。ここから先は、海底なので、泳いで移動することになる。


 泳ぐスキルや水中で呼吸をするスキルがなければ厳しいと言われているエリアだ。私達はこれらの両方のスキルを持っているので問題ないが、持っていないプレイヤーにとってはかなり辛いだろう。というか辛いどころじゃないだろう。


 深海エリアの存在が、地下迷宮にあまりプレイヤーがいない原因なんだろうな。


 そんなことを考えながら、私は深海を眺める。


 さっきまで土の床と壁で出来ていた地下が行き止まりになっていた。その代わりと言ってはなんだが、地面に海へと続く穴がある。


 そうここが深海エリアへの入り口だ。


 穴の底を覗き込んでみると、どこまでも深い海と輝くサンゴ礁が見える。


 海は透き通っていて綺麗なので、かなり底の方まで見えた。


 これはかなり深そうだね。


 あまり深くまでは行かないようにしないと……。迷子になったら終わりだ。


 深海には、洞窟の中のように蝋燭がない。サンゴ礁が光っているので、灯代わりにはなりそうだが、蝋燭程の明るさはなかった。


 私達は顔を見合わせると、意を決して、順番に海へと足を踏み入れた。


 海に入った瞬間、ひんやりとした水の感覚が私の体を襲う。冷たい……。早朝だから冷たいってのもあるだろう。


 まだ耐えられるくらいの冷たさなので、気にしないことにする。


 私はひんやりとした感触を噛み締め、海の景色へと意識を向ける。


 海は美しかった。透き通った水色の水に、光り輝くサンゴ礁。そこには現代のゴミのような不純物が全くない。


 私達は海の景色に見とれながら、静かに泳ぐ。海は特に魔物もおらず、静まり返っていた。


 茶々さんは地図を見ながら、私達を先導する。ちなみにだが、地図は魔法で防水加工されているので、水の中でも問題はない。



 私達が目指すのは十六夜の手紙にあったあれのある場所。あれのある場所は、神聖アシュタリカ帝国に行く道への途中なので、ついでといえばついでか。



 私達がしばらく泳いでいると、思った通りというかやっぱりというか、魔物と遭遇した。


 その魔物はタコのような気持ち悪いうねうねした魔物。けれど、そんなに強くはなさそうだ。



タコパス Lv200

スキル イカ墨 波寄 タコ足連打


 レベルは高いけど、大したスキルは持っていない。


「イカ墨のスキルと、波で攻撃するスキル、タコ足で攻撃してくるスキルしかないよー、レベルは200!」


 皆にタコパスの情報を伝える。


 皆は頷き、それぞれ攻撃を始める。


「【破滅の旋律】【暗黒魔法】」


 私はさっそく新しくゲットした暗黒魔法を試す。私がこのスキルを使うと、暗黒の、闇の塊が現れた。私はその塊がタコパスを包み込むように念じた。


 すると暗黒の闇はタコパスの方に向かい、タコパスを包み込み、完全な闇に引きづりこもうとした。


 タコパスは必死に抵抗するが、暗黒の闇はタコパスを締め付け、ダメージを与える。


 暗黒魔法は中々に大ダメージを与えられるし、エフェクトもかっこいいし、気に入った!


 呪いに暗黒魔法に、闇魔法と私のキャラが定着してきた気がする。この調子で呪いマスター目指します。呪いマスターってなんだよって話ではあるけど……。



 タコパスは暗黒魔法から抜け出すために、暴れる。そして、私達にイカ墨をうってきた。


 うげっ最悪。私達の体は墨だらけになった。私は手だけだが、何人かは顔にくらい、視界を奪われていた。




「【シャボンブレイク】」


 気持ち悪いので、泡のスキルで洗浄する。もちろん私だけじゃなく、全員をね。


「気持ち悪かった。あ、アナちゃんのそのスキルそんな使い方も出来るんだ」


 私も今思い付いた使い方だよ。戦う以外にもこうして使えるのです。


「泡で生き返りました……」



「あのイカ墨は二度と喰らいたくないな」



 それぞれがイカ墨への恨みを心に持つ。そして、その怒りが原動力となり、私達は大技を次々と繰り出す。


「【飛竜雷電】」


「【花鳥風月】」


「【風林火山】」


 あっという間にタコパスを倒した。


 私のレベルは196に上がった。もう少しで200だ。200になったら、覚醒スキルを覚えられるんだよね。



 私はレベルが上がったことにより、テンションも上がった。


 というか他のみんなも元々テンションは高めである。今までにない深海の冒険というのが、新鮮な気持ちなのかもしれない。



 私達は現れるタコパスを次々と倒しながら、深海を進む。同じ魔物が現れれば、倒し方のコツが自然と身につく。


 タコパスはさくさくと倒せるようになっていた。




 そして、私達が深海を泳いでいた時、大きな物体が手に入った。


「なにあれ……?」


 私は思わずそう漏らした。そう言葉にするくらい、その物体はここにあるのがアンバランスなものだった。


 私はその物体が何だろうとしばらく注視して、1つの考えに至る。


 あれは、神殿? 古代エジプトとかにありそうな感じではあるけど……。


 この深海の景色には合わないし、何だか不釣り合い。私は少しの違和感を感じながらも、神殿と思われる建物に近付く。


「位置的にも、あれが十六夜の手紙にあったあれで間違いなさそうですね」


 地図と神殿を交互に見比べて、茶々さんはそう言う。


 あの神殿は深海にあるくらいだし、十六夜が報告するくらいだから、ただの神殿ではないだろう。


「探索一択だよね!」


 私の言葉に、皆はすぐに頷く。


「そう言うと思いました! 拙者もあの神殿は気になります」



 私達は辺りを警戒しながら、ゆっくりと神殿に近付く。白を基調とした古代エジプトなんかにありそうな神殿で、ところどころ崩れかけていた。


「かなり老朽化してますね……」


「深海にあって、手入れとかされてなさそうだもんね」


 今ある世界遺産とかが綺麗なまま残っているのは、きちんと手入れされているからで、昔からのものがボロボロなのは当たり前だろう。



 私達は神殿に辿り着くと、神殿の入り口に回り込む。そして、神殿へと足を踏み入れた。もちろん海底なので、神殿の中も泳いで移動することになる。


 この神殿には、一体何があるんだろう。地下迷宮の秘密の神殿! 私の心は踊るばかりだった。


 私達は神殿の中を進む。神殿の中はというと、壁や天井によく分からない象形文字もどき? が刻まれていた。


 何が書かれているのか全く分からないけどね。


 神殿の中はサンゴ礁の光が届かず、薄暗かった。それが気味の悪さを煽る。時々、ギィィ……とかいう得体の知れない音も聞こえるし。


「なんか気味悪いね……」


 ルージュちゃんがそうポツリと呟いた時、甲高い悲鳴が上がる。


「きゃぁ!」


 私は悲鳴に驚き、ビクリとなる。悲鳴を上げたのは私達の誰でもない。ということは……。


「幽霊……?」


 マロンちゃんが私の心を読んだかのように私の耳元で囁く。それは心臓に悪いよ、マロンちゃん……。



「何かいるのか?」


「こればっかりは進んでみないと分かりませんね。魔物なのか、NPCなのかプレイヤーなのか……」



 なんだか少し怖いね。悲鳴が上がったってことは何かあったってことでしょ?


 とはいえ、私に止まるという選択肢はないので、少しの恐怖を抱きつつ、進む。


 神殿の中には、魚と怨霊が混ざりあったような気味の悪い魔物がいた。


 魔法系の遠距離攻撃をしてくるので、厄介だったが、私達6人で倒していく。



 見た目気持ち悪いのが残念だ。でも神殿には怨霊的な魔物が付き物か。


 アンデッド系ぽい見た目をしているのに、アンデッド系の魔物じゃなかったから呪浄化は使えなかった。無念。


 そう思いつつも、私は魔物へと向き合い、さくっと倒す。


 そうして、私達がしばらく進むと、大きな扉が見えた。なんの躊躇もなく、1番先頭にいたゼノンが扉を勢いよく開いた。


「きゃっ!」


「「「きゃあああ」」」


 中から悲鳴が聞こえ、それに驚いて私達も悲鳴を上げる。悲鳴の連鎖が起こった。

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